061.初めての夜
オレが真面目な顔をして聞いた為、今度はちゃんと答えてくれる様だ。3人共一度ベッドの上で正座をしながら向かい合う。
「えっとね、私達二人でこれからケイジを支えてあげようと思って」
「二人で・・・?」
「そうだ。私達二人で、だ」
そう言って二人が手を取り合う。ホント、いつの間にそんなに仲良しになったのだろう。オレが死んでいる間に何があったのだろうか。いや、オレが死んでしまった事が原因かもしれない。
「私には戦う力がないから、ケイジと一緒に戦えない。だからケイジを大切に想っているクーナに支えて欲しくて」
「私は異性との接し方や地球の文化を知らないから、ケイジを幸せに出来ない。だからケイジを好きなミカエラと一緒に幸せにしたいんだ」
何も聞いていないのに、オレの疑問に答えてくれた。二人は、ただオレの事を想って手を取り合って協力していたのだ。
「・・・っ」
不甲斐ないからゴメンと言うべきなのか、それともそこまでオレを想ってくれてありがとうと言うべきなのか、分からず言葉に詰まる。
ただ、二人が一緒にオレのそばにいてくれると言った事が嬉しくて、涙が溢れてきた。
「オレ・・・最低かもしれないけど・・・二人が好きだ・・・」
だから、嫌われたとしても、二人にオレの心の内を晒す事にした。
「何度も助けてくれたクーナさんを守れる様に強くなりたくて、何度も死にそうになったけど・・・これまで戦ってきた。クーナさんがいたから、オレは今まで戦ってこれた」
今まで、何度も死にそうになった。そしてバエルに心臓を貫かれた時もアンラ・マンユに殺された直前も、オレの頭の中にはクーナさんに恩返しが出来ずに最期を迎えてしまう事を悔んだ。
でも、彼女のおかげで今も生きていられる。
彼女のおかげで言葉を紡いで、想いを伝えられる。
「クーナさんの隣にこれからもいたい。これからも隣にいて欲しい。クーナさん・・・好きです」
これまでも、これからもずっと、一緒にいたい。
「ケイジ・・・。ケイジ!」
オレの言葉を聞いたクーナさんが抱き着いてくる。今まではずっと一方的に抱き締められる側だったが、今回は初めてお互いに抱き合った。初めて抱き締めた彼女の体は、思っていたよりも細かった。
頼りがいのある彼女の背中は大きく見えていたが、本当はオレの腕に収まるぐらい小さなものだったのだ。
「私もケイジが好きだ。異性がいないアールヴの私でも、これが好きだという感情なのは分かる」
今まで何度も彼女の心音を聞いてきたし、感じた事もあった。だがこの時、初めて彼女の心音がうるさいぐらいに鼓動を打っているのを感じた。今までとは違い、穏やかなものではなかったが、それも心地よかった。
その鼓動をずっと感じていたかったが、一度彼女の肩を掴んで顔を合わせる。
「これからも、ずっと一緒にいてくれますか?」
「っ! ああ・・・ああっ! 当たり前だ! 私達はずっと一緒だ」
彼女の目にも涙が浮かんでいた。お互いに目を閉じ、再び唇を重ねる。
この時のキスは、涙のせいで少しばかり塩辛かった。
「愛している・・・ケイジ・・・」
「オレも愛しています。クーナさん」
唇を離し、お互いに愛を確かめた。そのまま何度も愛をぶつけたかったが、まだ彼女がいる。クーナさんもそれを分かっているからか、一度離れてオレの枕を抱き締めては顔を埋めて叫んでいた。オレとミカエラは二人で、その様子を見て微笑む。
そうして、次はミカエラを見つめると、彼女も応える様に見つめ返してくる。
「ミカエラ・・・」
「ケイジ」
彼女の名前を呼ぶと、オレの名前を呼び返す。照れくさくて、でもそれが心地良い。
「オレは面倒くさがりな性格で、嫌な事はとことんやらないタイプだ。でも、君の為なら慣れない事も頑張ってみようと思えた。君の前ではカッコいい男でありたかったから」
「知ってる。ケイジが情熱的な人なのは、私が誰よりも知ってる」
「ミカエラ・・・。君にはいつも手玉に取られていたから、情けない男にしか見えていないか心配だった」
「そんな事ないわ。あなたは誰よりもクールよ。そんなあなただから、私は好きになったの」
彼女がオレの頬に触れる。その手は、少しヒンヤリしていたけど、とても暖かかった。
「オレもミカエラが好きだ。君にとって最高の男であり続けたいと思ってる」
頬に触れる彼女の手を握ると、オレの手の中でくるりと回り、互いの手のひらを合わせる形になる。そのまま指を開いて、絡めあう。
「私もあなたにとって、最高の女でいられる様に努力するわ」
そう言ってお互いに顔を寄せる。
「好きだミカエラ」
「私も好き・・・」
静寂の中、二人で唇を重ねる。今度のキスは塩辛くなかった。
それと視界の端でオレ達のキスを眺めているクーナさんがそわそわしているのが見える。多分、自分もキスしたくて終わるのを待っているのだろう。
オレ達の顔が離れると同時に、彼女は飛び掛かってオレとミカエラを抱き締めた。
「これで3人ずっと一緒だな」
オレ達を腕の中に収めて微笑む彼女を見て、オレ達の頬も緩む。
ミカエラかクーナさん、どちらかを選ばなければならないと思っていた。だけど二人は、オレ達三人で歩む道を選んだ。いや、選んでくれた。これからは、彼女達に甘える事なく、彼女達の為に最高の男であり続ける努力をしなければ。愛想を尽かされて捨てられない様に。
それからオレ達は、肌を重ねてお互いに愛を確かめ合った。
長い長い、三人だけの夜が明けていく――




