表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/124

058.騎士の帰還

 胸が締め付けられる苦しみに襲われる。その事は後で考えよう。今は目の前の敵に集中しないと。集中、しないと・・・。


 一度クーナさんと別れ、他のアンラ・マンユのいる場所に向かう。オレは撃破に、クーナさんは無理のない範囲で時間稼ぎをしてもらう事になった。


『脳波に乱れが見える。強いストレスを感じているな』


「・・・分かってる」


『感動の再会のはずだろう? 何故ストレスを感じているのだ?』


「分かってるって! ・・・悪い、集中したいから静かにしてくれ」


 道中、オレを心配してくれたコマンダーに八つ当たりしてしまった。こんな精神状態では戦いなんてまともに出来るはずがない。考えるな、考えるなと思う程、その事が脳裏から離れなくなってしまう。


「クソッ」


 弱い自分の心が憎い。そんなオレを汲んでくれたのか、コマンダーが気を遣って音楽を流してきた。それもどこかで聞いた事のあるクラシックの曲だ。心を落ち着かせる為の曲ではなく、それは城や宮殿で流れていそうな気品のある曲。


『バッハのブランデンブルク協奏曲第5番だ』


「ブランデンブルク・・・?」


 ブランデンブルク。その言葉はどこかで聞いた事があった。


『ベルリンの防衛作戦の時に防衛網を築いた門。あれがブランデンブルク門だ』


「ああ、あのなんちゃら門の名前か」


 あの時行ったベルリンが、綺麗な街だったと思い出す。まあ、あそこでオレ死んじゃったんだけど。


『落ち着いたか?』


「・・・ああ。ありがとな」


 クラシックを聴くだけで、あれだけモヤモヤしていた心が落ち着くなんて、オレって本当に単純だな。


 気を取り直して、残りのアンラ・マンユの元に走る。数百メートル離れた位置に、10人の歩兵部隊が1体のアンラ・マンユに苦戦しているのが見えた。銃弾を躱され、接近を許す。だが、パルスグレネードで自爆する事でアンラ・マンユを後退させ、距離を稼いでいた。それを繰り返していた様だが、最後の1個を使い切ってしまった様だ。恐怖に感情と体を支配されているのが見えた。


「間に合えっ!」


 全力で走り、歩兵部隊の一人に襲い掛かるアンラ・マンユの剣を受け止める。剣と剣がぶつかり、火花が散る。その様子に驚いた他の隊員達が、一瞬遅れてオレが止めているアンラ・マンユに向けて発砲する。


 弾丸を避けようと、迫り合いをしていた剣を押し出して後方に下がる。その着地の瞬間に、オレは誤射に気を付けながらアンラ・マンユの両足を切断し、着地し損ねて滑稽な姿を晒している内に頭部も両断。


 そのまま次のアンラ・マンユの元へ行こうとしたが、隊員の一人が駆け寄ってきた。


「騎士団長殿! やはり生きていらっしゃったのですね・・・」


 それはベルリン防衛線の時、死に際に子供たちを託したあの女性兵士だった。彼女は目元に涙を浮かべながら敬礼する。オレはマスクを外し、素顔を晒してから敬礼を返す。


「あの時は助かった。子供たちはどうなった?」


「警察に保護してもらいました。ただ孤児だった様で、その後どうなったかは分かりません」


「そうか・・・」


 孤児・・・。いや、無事ならばそれでいい。それに強い子達だ。あの子達であれば、兄妹で生きていけるだろう。


「改めて感謝する」


「こちらこそであります。騎士団長殿がいなければ、今頃花の肥料になっていたところでした」


 笑えないジョークに対して苦笑いし、オレは他の部隊の救出に向かうのだった。


 その後、アンラ・マンユを追加で3体討伐したところで、作戦終了となった。残りの2体をクーナさんが仕留めてくれたのだ。一対一ならば遅れを取る相手ではないらしい。さすがクーナさん。前にオレは一対一で引き分けて相討ちしたけどね。


 少なくない死傷者を出してしまったが、ユグドラシルは無事に防衛する事ができた。オレは一息ついて、コマンダーが近くに着陸させた輸送船に向かった。


 その途中、クーナさんに「また後で」という言葉を掛けられた。今晩もオレの部屋に来るつもりらしい。今はアンラ・マンユと人間の血の掃除をする必要があるらしく、留まる様だ。少量とは言え、ユグドラシルが根付いているこの地に不浄なものが存在しているのが許せないのだろう。


 オレが一人で輸送船に乗ろうとしたところ、帰還準備をしていたと思わしき他の隊員達が駆け寄って整列する。そして先程の女性隊員が一歩前に出てきた。


「騎士団長殿に敬礼!」


「「「はっ」」」


 号令によって全員が同時に敬礼する。キレのある動きで敬礼するその様は圧巻の一言だった。一瞬遅れて、オレも敬礼する。死地を乗り切った勇敢な兵士達に向けて。


 その後、輸送船に乗ったオレは座席に腰を下ろして瞳を閉じた。


『お疲れ様。ケイジ』


 通信機からミカエラの労いの言葉が届く。そういえば作戦中は一度も声を掛けてこなかったな。おそらく彼女なりに気を遣ってくれたのだろう。


「ありがとう。すぐ戻るよ」


 返事をした直後、コマンダーが輸送船を操作して母艦に帰還する事となった。


 今日は色々な事で頭がいっぱいになってしまったからか、久々に家族に会いたくなってしまった。そして家族が今、どんな生活を送っているのか気になった。


 軍に所属してから既に半年以上が経過している。


 父さんと母さん、沙希はオレの帰りを待って元気に過ごしているだろうか――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ