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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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054.火種

 重力がない。真っ暗な空間。上も下も左右も分からない――


 感覚がない。自分自身が誰なのかも、自身の体すらそこにあるのかないのかも分からない――


 時の流れがない。永劫の時の中を過ごしているのか、数秒しか経っていないのかも分からない――


 何も感じられない空間で、自分が誰なのかも分からず、ただひたすらに漂う。


 不意に何かが聞こえた。今まで何も聞こえなかったというのに。耳もないはずなのに、声がする。


「お願いだから・・・」


 どこかで聞いた事のある声。声の主が泣いている。行かないと――


 あるはずのない耳を頼りに声を辿る。


「起きて・・・ケイジ・・・」


 ケイジ・・・。そうだ、オレの名前だ――


 光が見えた。目がないはずなのに。オレはその光を追う。


 近付いてから、それが白い炎だと気が付いた。


 腕もないのに、それを手にする。


 刹那、その炎が体のないオレの胸に宿る。


『一つ目の火種がくべられた』


 またしても声がした。その声の方に目を向けると、白い少女がいた。彼女はオレの胸に宿る炎を指差す。


「ユグドラシル・・・」


 喉がないのに、声が出た。その少女はかつて、ユグドラシル内部で出会った、その意思だった。


 彼女はオレに向けていた指を横に向ける。


『暁の子よ。更なる火種を求めよ。そして光をもたらすのだ』


 その指の先には、白い扉があった。そこから外に出る事ができるのだろう。


「お願いだから起きて・・・」


 その扉の向こうから声が聞こえる。ミカエラの声だ。


 だけどオレはその扉に入る前に、彼女に聞きたい事があった。


「待ってくれユグドラシル!」


 呼び止める為、彼女に視線を戻すも、そこには誰もいなかった。


 仕方なく、オレはその扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。





 ユグドラシル、君はオレに一体何をさせるつもりなんだ――





 扉の中から光があふれ出す。あまりの眩しさに目を閉じると、全身の感覚が戻ってきた。


 再び目を開けると、そこはオートマタの母艦内にある手術室だった。そして涙を流しながらこちらを見ているミカエラと、相変わらずふわふわと浮いている黒い球体が目に入った。


「ミカエラ・・・」


「ケイジ!」


 彼女の名前を呼ぶと、オレの名前を呼び返したミカエラが抱き着いてくる。首に腕を回して、強く抱きしめる。その後、彼女の嗚咽が耳元から聞こえる。


 オレはどうして手術室にいるのだろうか? 記憶を辿ってみると、白いオメガに腕を切り落とされ、左目も抉られた事を思い出す。失われたはずの左腕はしっかりとそこにあり、失われた左目もはっきりと見えていた。どうやら、オレは生き残ったみたいだ。


 泣いているミカエラを宥める為に、その頭を撫でながらコマンダーに問う。


「あれからどうなったんだ?」


『君の最後の記憶は?』


「白いオメガを倒した所までははっきりと覚えてる」


『そうか。あれから既に1カ月が経過している。それまで君は死亡していた』


「え? オレ死んでたの?」


 衝撃の事実。オレ死んでいたみたい。だからミカエラがこんなに泣いているのか。視界の上端に映る伸びた前髪が、それが真実だと物語っていた。その時に気になったのは、前髪が白い事。


 オレってこんなに白髪多かったっけ? いや、心臓刺されたり腕切られたり目を抉られていれば、誰だってストレスで白髪が増えるだろう。だとしても毛の根本から白くなるんじゃないか?


 疑問を抱いていると、コマンダーがどこからか用意した鏡を無言で見せてきた。そこには全ての髪が真っ白になったオレの姿がある。


「な、なんじゃこりゃ!?」


 若白髪が多いとかではなく、全て白髪だ。『しらが』ではなくて『はくはつ』というべきだろうか。とにかく真っ白だった。


『おそらくアンラ・マンユの因子による影響だろう』


「アンラ・マンユ?」


 海外のお菓子の名前だろうか? あんまん的な。・・・久々に肉まん食べたいな。


『アンラ・マンユは君を殺したオメガの名だ』


「・・・どういう事?」


 何が何だか分からないオレに、コマンダーは遺伝子組み換えでアンラ・マンユとオレを融合させた事を教えてくれた。簡単に言うと、オレはオメガ人間になってしまったらしい。散々改造手術されていたせいで、特に何も思わなかったが、ミカエラとコマンダーは気にしているようだった。


「ふーん。そうなんだ。髪以外に影響は?」


『あまり驚かないのだな。・・・おそらくだが、アンラ・マンユの特性の一つである「再生」の力が君に宿っている』


「ミュータントやん」


 拳から爪が飛び出てくる事はないけど。それならそのアンラマンユとやら以外の因子も取り込めば、更に強くなれるのではないだろうかと疑問を抱く。となると一番欲しい能力は――


「クトゥルフの因子を取り込んだら超能力を使えるのかな?」


 そう、クトゥルフが使う超能力『サイコキネシス』だ。男なら誰だって憧れるものだろう。そんなオレに対して、コマンダーがはっきりとため息をつく。


『はあ、君に気遣いをした私がバカみたいだ』


「はあ? お前は他人を心配する様なヤツじゃないだろ」


『理解しているのか? 君は人間から遠ざかったのだぞ。私は君の許可も得ずに、勝手にその手術をした。生命の冒涜とも言える許されざる行為だ』


 コマンダーが珍しく、興奮気味に言う。だが、オレはその内容が理解できなかった。


「・・・どういう事?」


 首を傾げて聞き返してしまう。オレを助ける為にした事に対して、何故オレが怒らなければならないのだろうか。頭と思わしき部位を押さえ、コマンダーが体ごと頭を左右に振る。なんかムカつく。


「えっとミスターコマンダーはケイジの許可なしに手術した事を気にしているのよ」


 ミカエラが言い直してくれるが、やっぱり意味が分からない。


「こいつがオレの許可なしに手術するのなんていつもの事だよ? それを何で今更気にしているんだ?」


『君を純粋な人間でなくなってしまったからだ。今の君は人間とオメガ、アダマンタイトで出来た改造人間かオメガ人間と呼ぶべき存在だ』


 元々改造手術を受けていたから改造人間だったんじゃないのだろうか。オメガ人間っていうのはダサいけど。けど、別に気にする程のものではない。おそらくそのアンラ・マンユの因子が、ユグドラシルが言っていた『火種』なのだろう。


 つまりこの様な形ではなくても、遠からず手に入れていただろう。だから気にする程の事ではない。オレ自身も、別に体に異常がある訳ではないので気にしていない。


「人間の定義の話をまたしたいのか? この話はもういいよ。オレ気にしてないし。それよりクーナさんは?」


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