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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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043.白い卵

 時は遡り、ブランデンブルク門での防衛作戦任務が始まった頃。


 騎士がオメガの群れに向かって走る姿を見て兵士の一人、バロウは驚愕していた。地平線がトウテツで埋め尽くされているというのに、そんな場所に剣を片手に突撃するのなんて正気の沙汰じゃない。


 すぐに死ぬと思ったが、結果は予想と違った。トウテツの群れは騎士の手によってみじん切りにされ、血飛沫が舞う。次々と築かれる死体の山に、バロウの視線は釘付けだった。


「お、おいパーカー! あいつ本当に人間か!?」


「ははっ。だから言っただろう? 度肝を抜かれるって」


 度肝を抜かれたとかそんなレベルではない。あっという間に戦車型をも仕留める姿を見た時は、スーパーヒーローが映画から飛び出してきたのかと疑ってしまった程だ。


 バロウが思っていた通りのリアクションした事で、パーカーは満足したらしい。呆けるバロウのヘルメットを叩き、目の前に迫るトウテツと空飛ぶバジリスクを狙撃する。


「ほら、撃たないと帰れないぞ」


「ったく、分かってるっつうの」


 バロウも射撃を開始するも、その脳裏には、ずっと騎士の事しか浮かんでいなかった。


 残った戦車型は門前に設置された自動照準タレットが仕留めた。ソルジャーは既に騎士に随行していなくなってしまったからだ。


 余りにも呆気なく作戦が終了したのは、間違いなくソルジャーが進行する経路を、騎士が確保したからだろう。そうでなければブランデンブルク門の目の前で、全てのオメガを迎撃する羽目になっていたはずだ。


 残党狩りに勤しんでいる最中も、バロウは騎士の事をずっと思い浮かんでいた。自分もいつか、改造手術を受けてあんな風に戦える様になるのだろうかと、期待に胸を膨らませながら。


「ん? あれはなんだ?」


 不意に隣にいたパーカーが、木々の間にある何かを見付ける。


「金目になるものでもあったか?」


 それともオメガを見付けたのだろうかと、バロウもパーカーが見付けたものに視線を向ける。


 視界に映ったのものは、白い卵だった。卵型ポッドは虫の卵に似た形をしているが、そこにあるものは鳥の卵に近い形をしていた。それに小さい。すぐに輸送型オメガ クラーケンが放つ卵型ポッドではない事は分かった。


 だが、その大きさは人が一人入れる程のサイズがある。卵は横に寝ておらず、縦に立っている。それは白い粘膜の様なもので固定されていた為だ。


 明らかに地球上の生物の卵ではないそれが、オメガの置き土産だと判断するのに時間は要さなかった。


「こちらパーカー。隊長、オメガの卵と思わしき物体を発見。サイズはおよそ2メートル。破壊を試みてもいいいですか?」


 パーカーがすぐに歩兵部隊の隊長に指示を乞う。


『許可する。早急に破壊せよ』


 するとすぐに許可が下りた。それを聞いた瞬間、バロウは躊躇する事なく、銃を構えた。遅れて続くパーカー。


「早くぶっ壊して帰ろうぜ」


「そうだな」


 2人がそう言って、卵に向かって数発発砲する。が、卵に全ての弾丸を跳ね返される。跳弾した弾が近くの木に当たるのを確認して、すぐに発砲をやめる。


「危ねぇっ! 弾が跳ね返ったぞ」


「ああ、予想以上に硬い・・・」


 パーカーはすぐに隊長に連絡を入れようとするも、卵の異変に気付いた。


 ピシッ――


 突然ヒビが入ったのだ。銃弾を当てたせいかは分からないが、瞬時にパーカーは危険な状態だと判断した。


「引こう。嫌な予感がする」


「ビビんなよ。ただの卵じゃねぇか」


「ただの卵じゃない! オメガの卵だ!」


 2人の行動は相反した。咄嗟に距離をとるパーカーとその場で銃を構えたままのバロウ。パーカーが急いでバロウの元へ駆け寄り、その肩を掴んで引っ張る。


「バカ! 早く逃げるぞ!」


「ビビりすぎなんだよパーカー。もし卵が孵ったって、出てくるのはヒヨコだろうが」


「いいから早く来い! コイツは新型だ!」


 犠牲が出なかった初陣で危機感が薄れているのか、バロウは全く聞く耳を持たなかった。新型のオメガだろうが自分で倒せばいい、と調子に乗っていたのだ。緊迫感の薄い戦場が、死という災いを呼ぶ事になるとは思いもせず。


 ピシピシッ――


 再び卵が音を立てる。音と共に走ったヒビが、卵を一周する。


 パリッ――


 そしてとうとう、その殻が割れた。中から白い何かが飛び出す。それは近くに着地すると、バロウ達を見つめる。


「ぶっ殺してやるっ!」


 すぐさまバロウがその白い何かに発砲する。だがしかし、弾丸は一発も当たる事はなく、全てがはるか彼方へと飛んでいく。


「避けやがった!?」


 バロウが弾丸を外した訳ではなかった。白い何かが弾丸を避けたのだ。あまりにも信じられない状況にバロウが驚きを隠せずにいると、それはバロウに向かって急接近する。


「く、来るな!」


 カチッ――


 バロウが慌てて発砲しようとするも、マガジンが空になったせいで弾が出てこない。その時、バロウの前にパーカーが身を乗り出した。


「うぉおおおおおっ!」


 雄たけびをあげながら、銃を乱射する。だが、白い何かはスルリと川を流れる木ノ葉の様に身を翻し、それらは全て躱す。


「逃げろバロウ!」


 パーカーが叫ぶ。しかし彼を見捨てる事が出来なかったバロウは、すぐさまリロードして共に射撃を始めた。


「コイツは俺がぶっ殺すっ!」


 彼もまた、同僚と同じ様に雄たけびを上げながら発砲するも、無駄に終わってしまう。


「当たらねぇ! なんだコイツ!?」


 悪態をつき、マガジンを取り出してリロードをする為に一瞬視線を銃に向ける。刹那、バロウの胸元から白い突起物が飛び出す。それは赤く染まっており、同時に先端には丸い肉の塊が刺さっていた。


「ぐぶっ! ぞれ、おでの、じんぞぉ・・・」


 吐血しながら、それに刺さっている自身の心臓を取り返そうと腕を伸ばすが、その突起物は容赦なくバロウの体から引き抜かれる。心臓を失い、力なく倒れるバロウ。


「バロウ!?」


 パーカーが発砲をやめ、慌ててバロウの止血をしようと胸元を押さえる。


 が一瞬の後、パーカーの首が体から離れ地面を転がる。首のない体は、そのまま心臓のない体に覆い被さる。


「ごぶっ。・・・ごんぶぁ、ぼわでぃがだ・・・ぎあば・・・。ごべん・・・ぶぁあくぁ・・・」


 気道も貫かれ、口からは血がとめどなく溢れてくる。そんな中、バロウは最後に何か呟いた。それは誰かの耳に届く事もなければ、きっと聞こえていたとしても相手には伝わらなかっただろう。











『こんな終わり方嫌だ。ごめんパーカー』





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