038.ボッチ騎士団
3か月後。それまでの間オメガからの襲撃が何度かあり、その全てにオレは出撃はした。しかし、新型のオメガと遭遇する事は一度もなかった。
また、クトゥルフ、ベルゼバブ、バエルに対しては対策方法が確立し、大きな損害を出す事なく倒せる様にもなった。人類は、着実に力を身に着けていると言っても過言ではない。
クトゥルフに対してはレーザーライフルを改良し、小型化されたレーザーガンが開発された。2秒のチャージが必要なくり、即座に発砲出来るようになった。その代わり威力は下がったが、汎用性は上がっている。そもそも以前のライフル型は、クトゥルフ相手には威力が超過していたと判断された結果だ。
ベルゼバブとバエルに関しては、新たに地上で使用できるソナーパルス発生装置が開発された。その装置を使う事で、ベルゼバブが発する催眠音を相殺、または操られた者の洗脳を解除する事が出来る。効果範囲は狭いが、それでも操られた者を救える様になったのは大きい。
また、バエルはその姿を可視化させてしまうと狂暴化するという性質があるのを、オレが初めて戦った時に判明した。その為透明化を維持したまま撃破する方針に切り替わった。結果、居場所を捉えられるソナーが有効だと判断された。
反響したソナーを視覚情報に変換、ヘルメットやバイザーに映像として映し出す事で疑似的に目で捉える。あれを目視出来るゴーグルを作るよりも、ベルゼバブと同時に対策できる装置にした方がコストが下がるという理由もある。
ちなみにベルゼバブの洗脳を解除する効果範囲は半径20メートル、バエルを観測できる範囲は半径200メートル。障害物があれば、更に範囲は狭くなるが。
とは言え、あの3種は既に脅威ではなくなった。あんなに苦戦した身としては、嬉しい反面、切ない気持ちにもなる。まあ、多大な犠牲の上に成り立った安全だと感謝しよう。
それからオレの階級がまた上がった。本来はこのスピード昇任はあり得ないのだろうが、それなりの理由があった。オレだけが所属する新たな部隊が作られたのだ。厳密には、軍が認めた人間のみが所属する事が出来る特殊部隊。
兵士達に漆黒の剣士として認知されたオレは、『騎士』と呼ばれる様になった。何で漆黒の剣士じゃないんだ。
まあ、そう呼ばれる様になった原因は全てガブリエル大統領のせいだ。あの人がオレの為に新しく用意した部隊名を悪ふざけで決めたからだ。自身と娘の名前の由来が天使だからと、ヨハネの黙示録の四騎士から取って『黙示録の騎士団』と名付けようとしていた。・・・正直カッコいいのは認める。
が、絶対に後になって恥ずかしい思いをするからやめてくれと懇願した。その結果、新たな部隊名は『騎士団』になった。そりゃ騎士って呼ばれるわ。
今では魔剣ラグナロクもハウスさせ、アダマントソードと呼んでいる。逆にコマンダーは今も尚ラグナロクって呼んでくる。マジでやめてほしい。
ちなみに階級もオレ専用のものとなり、それの名称は『騎士団長』だ。一人しかいないのに団。更にその団長だ。つまり今のオレの役職はボッチ騎士団の騎士団長だ。嬉しくて泣けてくる。クーナさんがオレの団に立候補していたが、却下されてコマンダーに殴り掛かったのは記憶に新しい。
そんなボッチが何をしているのかというと、部屋でミカエラとお茶をしていた。彼女は必ずクーナさんがいないタイミングで部屋に訪れてくる。多分、コマンダーとガブリエル大統領が仕組んでいるのだろう。
それと部屋が更にアップグレードされた。より広い部屋に、より大きなベッド。バスルームにはシャワーだけではなく、大きなバスタブもある。来客用にソファーも用意されているのを見ると、ガブリエル大統領がミカエラの為に用意した様に思える。職権乱用のオンパレードだ。
「今日はもう訓練終わったの?」
「ああ、今日はもう終わり。午後に新兵と模擬戦をしていたんだ。夕方までやる予定だったんだけど、あまりに弱くて全員気絶させちゃった・・・。だから今日は終わり」
ちなみにオレが透明化を解除した時の狂暴化バエル役。新兵達にバエルの恐ろしさを教えるつもりが、やり過ぎてしまった。
「あんまり虐めたらかわいそうよ」
同情するのかと思いきや、クスクスと笑う彼女。いや、オレも虐めている訳ではない。ただバエルにビビってパルスグレネードを使ったらどんな目に遭うのかを教えてあげただけで・・・。まあ、いいか。
「次からは気を付けるよ。子供を相手にしてあげるみたいにね」
「そうしてあげて」
そう言って彼女は紅茶を口にする。実は彼女の為に茶葉とティーポッドを用意して、紅茶の入れ方も勉強した。前よりは紅茶の味は美味しいはずだ。ちなみに彼女が好きな茶葉は、ガブリエル大統領に教えてもらった。彼もまた、月に一度程度だが会う機会が増えた。
「あら? この茶葉・・・。ありがとうケイジ。すごく美味しいわ」
「それなら良かった。正直自信はなかったけど」
オレ自身、紅茶の味なんて分からないから。違う種類を飲んでも気付けない自信がある。
「ふふっ。私の為に用意してくれたんでしょ?」
彼女が微笑みながら見つめてくる。自分の為に用意してくれたのが嬉しいみたいだ。オレも美味しいと言ってもらえる様に準備も練習もしたんだけどさ。
真っすぐ見つめてくる眼差しが照れくさくて、先に視線を外してしまった。相変わらず可愛い。




