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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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037.漆黒の剣士

 オートマタの言う進化が、種としての進化ではなく、オレの体内での小さなものだった。骨と筋肉がアダマンタイトになってはいるものの、脳や神経、内臓はそのままだ。最初に受けた改造手術のおかげで、常に火事場の馬鹿力状態だが。


 それとは別に、オレの反射神経や動体視力、判断能力といった反応速度があまりに早いらしい。おそらくだが、世界樹の種の影響だと考えられる。その影響は前々から受けていたはずだ。でなければ、初めての近接戦闘でバエルに勝利するのなんて不可能だからだ。


 改造手術と加護、その相乗効果でオレの強さはコマンダーの予想を上回る事が出来たのだろう。


『体に異常は見られない。一応、人間のままだろう』


 一応かよ。まあ、正直そんな気にする事でもないだろう。こういう時、自分の性格が楽観的で良かったと思える。


『今後は世界樹の加護と干渉しない手術をする必要があるな』


 コマンダーの中で、今後の方針が決まったらしい。オレはもう必要なくなった様なので、大人しく自室に戻る事にした。


 外は既に日が落ち、夕食の時間になっている事に気が付く。空腹感を覚えたオレは、急遽食堂に向かう事にした。今日の食事は何かと期待していると、なんと週に1回のカレーの日だったのだ。危ない、もう少し遅くなっていたら食べ損なっていただろう。


 オレはカレーを受け取って一人席に着く。するとそばでカレーを食べていた新兵の話し声が聞こえた。


「さっき惑星マザーで黒ずくめの奴がトウテツの群れを一人で倒しちまったんだ!」


「あのなぁ、そんなの信じられる訳ないだろ」


「ホントなんだって!」


 どうやらオレの話をしている様だ。一人は惑星マザーに出撃していたが、もう一人は待機していたのだろう。目の当たりにしていなかった兵士は、全く話を信じようとしない。


「それも剣で全部倒したんだぞ!? あれはオートマタが秘密裏に作った最終兵器に違いない」


 違います。


「はいはい。ビビり過ぎて幻でも見たんだろ」


 ひでぇ言い様だな。


「だったら俺以外の奴に聞いてみろよ。出撃した連中は全員見てんだから」


「気が向いたらな」


「ったく、嫌な野郎だ。それにしてもあの剣士・・・。マジで凄かったな・・・」


 たった一人で数千の敵軍を殲滅する正体不明の漆黒の剣士。実はその正体は、15歳の少年だった。カッコ良すぎる・・・。


 ラノベなら正体を隠したまま学園生活を送るっていう展開になりそうだけど、残念ながら実際はオメガとの戦争が続く間はずっと軍人のまま。


 しかも終わりなんて見えない。既にオートマタは20年以上戦っている。そして学園生活を送る未来なんてものもない。極めつけには最終学歴は中卒。もし終戦したらニート確定だ。


 鬱になりそう・・・。誰だよ、さっき楽観的な性格で良かったとか考えた奴。オレだよ。


「カレーうまっ」


 一口カレーを口にした瞬間、そんな不安は消し飛んだ。魔法の食べ物だよ、これは。


 美味しいものを食べたら不安がなくなるなんて、単純な奴。誰だよ、さっき鬱になりそうとか考えた奴。オレだわ。


 カレーを堪能したオレは部屋に戻る事にした。結局訓練を除外されたというのに、朝から晩まで色々と忙しい日だった。


 朝からアールヴに連れ去られるクーナさんを見送り、大統領と握手し、ミカエラとお茶をして、トウテツを剣でバラバラに解体したりと。そう考えると中々に濃密な一日だった。


 部屋のドアを開けると、ベッドの上に頬を膨らませて、怒っていますというアピールをしているクーナさんがいた。


「随分と遅かったな」


 どうやら、朝の件でご立腹の様だ。仕事をサボっていたクーナさんが悪いので、また同じ事が起きても見捨てるだろう。


「えっと、ごめんなさい。惑星マザーでトウテツの群れと戦ってて・・・」


「何!? 怪我はしていないだろうな!? また輸送船に潰されたりしていないか!?」


 先程までの不満そうな顔から一変、彼女の顔にはオレの身に何かあったのではないかという心配している様子しか見えない。


「大丈夫ですよ。さすがに一人でトウテツ5千体を相手にするのは疲れましたけど」


「・・・一人で?」


 オレはシャワーを浴びる為に、軍服を脱いでハンガーに掛ける。クーナさんは怪訝そうな顔をする。


「そうですよ。新しい武器の試験運用で一人で戦ったんです」


「コマンダーの指示か?」


「え? まあ、そうですけど」


 オレは返事をして、下着姿のまま着替えを用意する。


「あのブリキの塊め! 文句を言いに行ってくる!」


「行ってらっしゃーい」


 クーナさんが慌てて部屋を飛び出す。頑張れコマンダー、たまには利用される苦しみを味わえ。それはそうと、今の内にシャワーを浴びよう。彼女のいない隙に済ませないと、一緒に入ろうとするし。


 ジャージを着てバスルームから出ると、案の定彼女は戻ってきており、ネグリジェを着てベッドの上で待っていた。それもかなりスケスケの奴だ。それに下着を身に着けただけの、かなり薄着の状態。・・・エッチだ。


 どうやらネグリジェがアールヴの間で流行っているらしい。最近のクーナさんは寝る時にずっとそれを着ている。


「全く、コマンダーには困ったものだな。まさか剣でトウテツと戦わせるとは思わなかったぞ」


 どうやら魔剣ラグナロクの事を聞いたらしい。


「それにしてもケイジ、剣で戦って勝つなんて凄いじゃないか」


 それに戦闘記録、要は戦闘の映像も見た様だ。彼女はベッドに腰掛けたオレの頭を撫でる。この子供扱いも大分板についてきたオレは、彼女にされるがまま抵抗なんてしない。


「ありがとうございます。クーナさんの方はどうでした? 無事に復興は終わりましたか?」


「ああ、ようやく今日で終わった。クトゥルフのせいで、大地の深くまで血液が浸透していたせいで時間が掛かってしまった」


 ユグドラシルに何かあってからでは遅い為、少しでも早く大地を浄化した方がいい。もし加護が消えたら、アールヴにとっては致命的だし、オレにも影響があるかもしれない。


 まあ仮にも世界樹と呼ばれる木が、そんな簡単に病気になったりしないとは思うが。念には念を入れた方が良い。クーナさんにとっても長い一日だったらしく、強くオレを抱きしめたまますぐに眠りについてしまった。


 おやすみなさい――


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