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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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244.改良型オメガ ゼウス

 僕とクララは久しぶりに故郷であるドイツの地に訪れる事となった。これが帰省や観光であれば心が躍ったが、大規模なオメガの襲撃が理由となると嬉しいはずがない。それに今回の戦地は首都ベルリン。かつてお兄さんが戦死したブランデンブルク門の近くにあるベルリン大聖堂、その目の前にあるルストガルテンと呼ばれる公園で戦闘を行う。


「兄と初めて会ったの思い出した」


「そうだね・・・。あの時は何も出来ない子供だったけど、今回は違う」


 あの時受けた恩は、この命をもって返すつもりだ。色んな大人達から蔑ろにされた僕達を命懸けで救ってくれたあの人に。


「来た」


 クララが落下するポッドを眺めて呟く。落ちてくるポッドの数は5。1つにオメガが数千から1万程度いると考えると、多くて5万の軍勢。今回は新型ソルジャーが手伝ってくれるから、僕達が相手をするの改良型だ。もしいたらだけど。


 気合を入れて構えていると、クララがポッドに向けて手を伸ばす。そして宙で握り潰すと、飛来してきたポッドの1つが歪んだ空間に取り込まれ、空中で圧縮されて潰れた。


「なっ!?」


 ポッドは大気圏を突破出来る様に非常に頑丈に出来ている。目的地に着いてから脆くなり、中からオメガが出てくる仕組みになっているのだ。飛んでいる最中の硬度はアダマンタイトに匹敵するらしく、破壊は断念していたというのに。


「出来た」


「出来た、じゃないよ・・・」


 あまりに呆気なく、今まで試みを諦めていた事を成し遂げる妹。クララに出来るのであれば、今のお兄さんも可能ではないのだろうか? 簡単にポッドそのものを破壊できる気がする。多分、皆ポッドは破壊出来ないという偏見に囚われて試そうとも思っていなかったのだろう。


 とにかく、このおかげで戦況はかなり好転するはず。クララが破壊したポッドに改良型が乗っていたらいいけれど、おそらく全てポッドに複数の種類のオメガが配置されている。そんな都合よくはいかないだろう。けど数を減らせた結果は必ず良い方向に転ぶはずだ。


「さすがにもう1個破壊してって言うのは難しいかな?」


「無理」


 だと思った。あの規模の攻撃をするとなると、30分程のクールタイムが必要になるはず。それまでは後方で待機しておいてもらおう。クララも同じ考えだったらしく、バステトのシロちゃんに乗って既に退避している。


 なら、僕はソルジャーと協力してオメガの群れを対処しよう。強そうなのと大きいのはクララに任せるとして、僕はひたすら前線を維持する事に集中する。


「・・・頑張りますか」


 お兄さんがいなくても、僕達だけでも作戦を成功させられるところを見せないと。アダマンタイト製の刀を鞘から抜き、胸の前で構えて深呼吸する。


 ――いつまでも憧れていては絶対に届かない。いつか、いつかきっと隣に立てると信じて・・・。


「騎士団長ルカ・ヒンメル。参ります」


 覚悟を決め、走り出す。同時に落下予測地点で公園、ルストガルテンにポッドが着弾する。


『なにカッコつけてるの?』


 なんてクララから冷やかされるが、気合を入れる為のルーティンだ。だから別に格好を付けている訳ではない。決して格好を付けている訳ではない。


 刀を強く握り、ポッドから出てきたバステトの群れに斬りかかろうとしたが、すぐに嫌な予感がして引き下がる。いつものバステトと見た目が変わらないと思っていたが、僕を視界に捉えた瞬間、1体のバステトのその体毛が、灰色から黄色へと変化したのだ。


「改良型・・・」


 すぐにそれが普通のバステトではなく、改良型だと悟る。色が変わっただけかと思いたかったが、僕の髪の毛が逆立つのを感じた。猫みたいに威嚇したらそうなる訳ではない。では何故そうなるかと言うと、おそらく――


 僕は大地を蹴り、すぐにその場から逃れる。刹那――


 ダァンッ――


 銃声に似た轟音が鳴り響き、閃光が走る。落雷だ。先程の毛が逆立ったのは落雷の兆候だったのだ。


「雷を操るバステト・・・?」


 体毛が黄色に変化した改良型のバステト。その長いヒゲからバチバチと電気が流れていた。対生物最強の力とも呼べる雷を操るオメガ。神の怒りとも呼べる雷を自在に操るそのオメガは、まさに神と呼べるだろう。


 ――神・・・?


 神はこの世に1人だけだ。誰しもが、それはお兄さんだと言うだろう。だから、目の前のまがい物は存在していてはいけない。理不尽かもしれないけど、ただ存在しているだけで怒りが込み上げてくる。


「お前は生きていてはいけない存在だ」


 その力はお兄さんにこそ相応しい力だ。雷を操るその力、因子を奪い取らなければ。


 使命感にかられ、改良型に肉薄しようとした時、目の前が突然黒く染まった。その黒は改良型を包み込み、その身を拳ほどの大きさにまで圧縮してしまった。


「空間歪曲・・・」


『なにカッコつけてるの?』


「・・・クララ、今から僕が倒すところだったのに」


『お前は生きていてはいけない存在だ』


 恥ずかしいからやめて・・・。とはいえ被害を出さずに改良型を仕留められたのは喜ばしい。とんでもなく恥をかいたけど。


 このまま残りの群れを倒して終わりかと思ったが、通常型だと思っていたバステトの体毛が黄色へと変わっていく。


 ――・・・どうやら戦いはまだまだ続きそうだ。


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