235.ヒゲモジャ
重婚が認められた時、ふとある事に疑問を抱いた。それは今のオレの階級についてだ。漆葉啓司としての階級とルシファーとしての階級。そのどちらも今は不明瞭のなっている。
「で、今のオレの階級が気になったって訳」
『なるほど。データベースに登録されている情報だと、君の階級は大元帥になっている』
「大元帥?」
聞いた事ある様な無い様な・・・。ラボでクイーンとサタンの検体を調べていたコマンダーが、その手を止める事なく答えてくれたが、高い階級なのは分かるけど、それがどれ程のものなのか見当もつかない。
『軍の中で言うと最も高い階級だ。普通、前線に出る者がこの階級を与えられる事はないのだがな』
「ふーん・・・」
元々騎士の称号も階級で言ったら最高級だと聞いていたから、名前だけが変わったのだろう。
『驚かないのだな。いや、無知だから驚きもしないだけか』
「おい」
『分かっていない様だから言っておく。元帥は存在する階級だが大元帥なんてものはない。ガブリエルが君の為に設けたのだろう。彼らしく好き放題やっている様だ』
「へぇ」
『全く・・・』
呆れるコマンダーは無視。ガブリエル大統領が好き放題しているらしいが、オレもさせてもらっている。正直訓練も自由だし、普段は母艦にいるから軍事基地にいる一般兵の面倒すら見ていないし。現場でも指揮に関しても一任されている。
過去には司令部なんてものもあったが、あまりに死者が多いせいで指示を出す者がみんなPTSDになってしまい、気が付いたら無くなっていた。昔の死者数はエグかったから仕方がない。責任感が強い者なら尚更だ。
「それにしても大元帥、ねぇ」
オレみたいな若造がなってもいい階級なのだろうか? 功績だけで考えれば分からなくもないが、年齢以外にも勲章とか必要だと思うけど・・・。そこで再び疑問が浮上。
――勲章授与された事ない・・・?
これだけ世界を救っているのに勲章の一つもくれないなんてどういう事か。・・・別にいらないか。
漆葉啓司として目立つのはあまりよろしくない。オレが姿を消したタイミングとルシファーが登場したタイミングが同じだと勘ぐるヤツが出てくるかもしれない。だから漆葉啓司という存在はこのまま静かにフェードアウトさせなければ。
それにしても大元帥って階級に対して、オレが若すぎて威厳がない様に感じてしまう。もっとヒゲモジャでコートにいっぱい勲章を付けている人のイメージがある。後よく分からない杖を持っている感じ。
「コマンダー、鏡」
『ほら』
何故かコマンダーが持っている三面鏡を借り、変身の能力で20年後のオレの顔を再現してみる。ただ老けただけなので、ヒゲを生やしてみると、中々良さげなイケオジの完成だ。それとアダマンタイトでオフィサーコートとその上に何故か袖を通さないで肩に乗せるだけのロングコートを造る。
ついでに杖も形成して手に持ってみると、漫画とかで良く出てくる階級が高いオジサンの完成だ。
「これなら大元帥っぽいか?」
『声が若い』
「う”、う”んっ。これでいいか?」
変身で声帯を変えて少し声を低くしてみる。もう少しガラガラな声がいいかと思ったが、それだと二日酔いになった時の父さんみたいになってしまう。
『仕草は若造だが、悪くない』
「一言余計なんだよ」
全く、コイツは・・・。それにしても中々悪くない仕上がりだ。早速みんなに見せに行こう。
「どんな反応するかなぁ」
――リアクションが楽しみの一方で、嫌がられたらどうしよう?
「まあ、その時はその時だ」
低い声でこの口調はちょっと違和感があるから、少しだけカッコつけて喋ろう。部屋の前に付き、襟を正してからゆっくりと部屋に入る。
「失礼するよ」
ちょっとカッコつけ過ぎたかもしれないが、恥ずかしがるのは後にしよう。絶対黒歴史になるのは目に見えているけど。
「・・・ケイジ?」
いち早く気が付いたのはミカエラ。そして目を丸くしてオレを注視する他のメンバーも、数秒遅れて気が付いた。
「あーッ! 本当であります!」
「おじケイちゃんッス」
略すな。おじケイってそんなに語呂が悪くないのがムカつく。
「どうだろうか?」
杖に両手を乗せるポーズを取ってお披露目していると、イザベラが目の前まで近付いてきて、オレのヒゲを無言で掴む。そして勢い良く引っ張った。
「いてっ」
「なんだい、付けヒゲじゃないのかい?」
「自前だよ・・・」
それにしても無言で引っ張るなんて酷すぎる。悪びれた様子を見せない彼女は興味が失せたのか、そのままベッドの上でくつろぎ始めた。
イザベラは興味あると思ったんだけどな・・・。やっぱ根っからの年下好きみたいだ。
アンジェとケイシー、そしてクーナの3人は興味があるのか、ヒゲを触ったりしているがそれ以外は思っていたより反応が薄い。
「みんな、あんまり興味ない感じ?」
「うーん・・・ケイジはキュートなのが素敵なのに・・・」
まさかのミカエラから辛辣な言葉が飛んできた。つまり今のオレには何の魅力もないという事だ。
「もうこの姿は封印するよ・・・」
元の姿に戻ろうとしたその時、クララと目が合った。何かを言おうとしているらしく、その言葉を待ってみると――
「ヒゲモジャ嫌い」
「うぐっ」
――もう二度とこの姿になるものか!
クララに初めて嫌いと言われたのがあまりにもショックで、オレは元の姿に戻るどころか、昔の入隊したばかりの頃の姿にまで後退してしまった。弱く、情けないこの姿はオレとしては嫌いなのだけれど、みんなは違う様だ。
「やっぱケイジはこの姿じゃないと!」
先程とは打って変わって目を輝かせるミカエラ。そうなっているのはミカエラだけじゃない。クーナもイザベラもアンジェも――って全員やないかい!
女の子って背が高くてカッコいい人が好きなんじゃないの・・・? こんな弱っちいオレでも好いてくれるのはありがたいけどさ・・・。
「解せぬ」




