232.クイーン再び
司令室でコマンダーとクイーンを探す日々が数か月以上続き、もはやオレという天敵から逃げたのかと思っていたが、ふとオメガの気配を感じた。
「ん? この気配・・・クイーンか?」
『なに?』
それもクイーンの気配だ。地球上にいるのに感じるとは、一体どういう事なのだろうかと、気配の元を千里眼で見てみると地球の外、月の裏にポータルが開いていた。そこから月よりも巨大なクイーンの姿が。
「月の裏にいるんだけど・・・流石に月を破壊されたらマズいよな?」
『月が無くなったら地球は生物が生きる事を許されない環境になる』
「月ってそんな重要なの? マジか・・・」
地球っていうか、生物が生きられる惑星ってホントに奇跡の上で成り立っているんだな。と、感心している場合じゃなかった。
「ちょっと月守ってくるわ」
『月の軌道も変えるんじゃないぞ』
「へいへい」
失楽園を使えば月どころか地球を超えて太陽系すら消えてなくなってしまうから使えない。更に月を守りながらの戦いとなると、結構面倒な事になりそう。
というか水星とか火星への被害も考えて戦わないといけないのか・・・。思っていたよりも大変だな、これは。
『戦闘はすぐに行わないでくれ。撮影用のドローンを向かわせる』
「また撮るのか?」
『オメガとの戦闘は情報収集の為に全て録画している』
「へぇ」
知らなかった。という事は過去のオレの戦いも残っているのかもしれない。誰かに見られたら恥ずかしいな・・・。昔のオレなんてしょっちゅう死に掛けてたし。・・・ルシファーになるつい最近までそうだったか。
流石に一般公開はされる事ないし、強制徴収された一般兵が過去の戦闘記録を見る程やる気があるとも思えない。多分、誰かに見られる事はないだろう。そもそも見れる様にしているかも分からないし。
『転送完了。戦ってもいいが、あまり無差別な広範囲攻撃はしないでくれ。君は加減というものを知らないからな』
「はいはい。ったく、一言多いんだよ」
およそ30秒ほどでドローンの準備が終わったらしく、コマンダーから出撃許可を得る。そんなに準備が早く終わるのなら先に出撃しても良かったのではないかと思うが、そこは言わないでおこう。言ったらふてくされるのは目に見えている。
流石に月面で戦闘を行う訳にはいかないから、今回はオレ一人で出撃。みんなは今頃寝ているだろうし、起きる前に終わらせてしまおう。昨日も昨日で頑張り過ぎたオレのせいなんだけど。
またマキナに何言われるか分からないなと思いつつ、月の裏にテレポートする。そして次に視界に映ったのは、巨大なムカデ。視界の端から端まで覆い尽くす程巨大だ。
「相変わらずデカいな・・・」
そいつが今、月をその体で包み込もうと体を広げていたので、顔面をぶん殴って後退させる。
「そいやっ」
拳で殴っただけで、吹き飛ばすのに成功する。その距離はおよそ月2つ分といったところか。今なら十二翼も必要なさそうだ。逆に周囲に被害が出るから使えないっていうのが正しいけど、クイーン1体ならいつもの六翼で十分だ。
自分の体が吹き飛ばされる程のパンチを食らったのは初めてだったらしく、クイーンはのたうち回りながらオレを視認し、睨み付けてくる。
「さてと、どうして今更月、っていうか地球に来たんだ?」
1体やられて焦ったのか、それとも何か企んでいるのか・・・。意図は分からないが、何か企てているのは確かだろう。それを確かめるべきなのか、とっとと倒してしまうべきなのか・・・とっとと倒そう。何かを企んでいたとしても、コイツを倒してから何とかすればいい。そうと決まれば話は早い。
神剣セフィロトを抜き、体内の膨大なエネルギーを循環させる。周囲への被害を考えつつ、最小限の力で倒さなければならない。さらに言えば、戦いを長引かせる訳にもいかない。クイーンはそのあまりの巨大さ、その質量から万有引力が発生している。長居させると月の軌道が変わりかねない。
――まあ、その時はオレが押し返せばいいだけだけど。月ぐらいなら、サイコキネシスを使えば押し返せるはず。
と、無駄な事を考えていないで早く倒さないと。月がどうとかよりも、みんなが起きる前に帰らないと。
未だにオレを睨んでいるクイーンに向かって接近し、セフィロトを振るう。その刀身から光の刃が射出され、クイーンを襲う。それをサイコキネシスで相殺しようとするも、力の扱い方が慣れてきた今のオレの一撃がそんな簡単に防げるはずがない。
初めてクイーンと戦ったときよりも力の密度が上がっているその一撃は、サイコキネシスをいとも簡単に払い除け、そのままクイーンの体を真っ二つに斬り裂く。
キシャァアアアァァアアァアアアッ――
悲鳴をあげ、そのまま絶命するかと思ったが、結果は違った。切断された傷口の断面から、触手の様に肉が伸び、2つに分かれた体を接合しようとしていたのだ。
「再生の能力も持ってたんだ」
前は失楽園で消滅させたから気が付かなかったけど、アンラ・マンユの再生能力を持っていたとしても不思議ではない。だが、その巨躯を再生させるにはかなり時間を要する様だ。
つまり、隙だらけって事。再生する隙を与える事なく、オレはセフィロトを何度も振るい、惑星サイズのクイーンをミンチにしていく。
――ミンチ、は流石に誇張し過ぎか。サイコロステーキぐらいだな。
頭を潰しても再生しようとしたのは驚いたが、アンラ・マンユとは違って核が頭部に無いだけだろう。だが、ここまで細切れになったらさすがに再生は出来ないようだ。これにてクイーン討伐完了、と。
肉片をサイコキネシスで集め、オレは帰還した。コマンダーにサンプルを持ち帰れって言われるだろうし。
クイーンも、もはやデカいだけの雑魚だな。というよりこの体と世界樹が強すぎるだけか・・・。もし、クイーンを生み出したキングとも呼べる存在がいたとしても、この力の前では無力だろう。そんなのがいるのか知らないけど。




