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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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226.戦いの軌跡

 日本が襲撃されると聞いた時は焦ったけど、不謹慎かもしれないけど襲撃地点が東京と聞いて少しだけ安心した。サキサキ達が襲われる事はないからだ。一輝もリンリンも大丈夫なら、それでいい。


 命の価値は平等と言う人もいるけど、それは赤の他人と赤の他人を比べた時だけ。家族、恋人、友人と赤の他人なんて比べられる訳がない。誰かにとっての赤の他人は、誰かにとっての大切な人。数を数としか見ていない画面の向こう側にいる人なんて興味もない。


 後方支援部隊の私は戦場に行く事なく、出撃した隊員達の装備の清掃、基地の掃除をひたすら行っていた。もはや清掃員だけど、戦場で痛い思いをしたり命を危険に晒す事に比べれば、なんて事はない。


「三品二等兵。こっちの装備も綺麗にしてくれ」


「了解です」


 上官から強化スーツに付着したオメガの返り血を拭取る作業を命じられる。最初は気持ち悪くかったけど、もう慣れてしまった。赤くないのと、鉄臭くないおかげだけど。


「この臭いは・・・トウテツかな?」


 墨汁と嘔吐物を混ぜて自然乾燥させたみたいな臭い。軽く嗅ぐだけならちょっと臭く感じるだけだけど、ガッツリ嗅いだら嗚咽してしまいそうな臭い。


 この臭いは間違いなくトウテツの血の臭いだ。一番嗅いだ臭いだから覚えたくなくても覚えてしまう。


 ちなみに銃の整備は私達の仕事ではない。オートマタの技術で造られた武器を私達が整備出来る訳がないので、それはアンドロイドがやってくれる。


 1日掛かりでその作業を終わらせた私達は、ようやくシャワーを浴びて休む事が許される。鼻の奥まで臭いがこびり付いてしまうから、シャンプーの臭いが分からない。


 自分の体まで臭くなってしまっているのではと心配なので、コロンを掛けて誤魔化す。一輝に臭いなんて言われたら恥ずかしくて3ヵ月は帰国出来ない。


 今日はそのまま夕飯を食べてから隊の子とお喋りしたいところだけど、最近気が付いた事がある。それは資料室で今までのオメガとの戦闘の記録を見れる事だ。紙媒体だけでなく、パソコンで当時の映像も見られるらしい。


 食堂で誰かがそんな話をしていたのを耳にし、一度確認したら本当だったのだ。休憩時間、というより一日の仕事が終わった後にまでオメガを見るのは嫌だという事で、資料室に誰かがいるのを見た事は一度もない。


 調べたい事がある私は、意を決して資料室に足を運ぶ。そこで見られるのは軍内部で公開されている情報のみだが、私が見たいのは戦闘記録。オメガとの戦闘ではなく、特定の誰かの戦いを見てみたかったのだ。


 ――・・・そう、漆葉元騎士団長。サキサキのお兄さんの情報を。


 パソコンを開き、戦闘記録を確認する。全ての作戦を、記録の為にオートマタのドローンが撮影しているらしい。上空から撮られたその映像は立体化され、好きなタイミングで好きな場所の映像を確認する事が出来るハイテク仕様。


 私はお兄さんの名前を入力すると、ファーストコンタクト以降に実施されたほぼ全ての作戦に参加している事が分かる。


「何回出撃しているんだろう・・・」


 数えようと思ったけど、あまりの多さにすぐに断念する。とりあえず初めての戦闘記録を見てみたが、私はすぐに後悔した。1時間強ある映像。場所は惑星マザー。お兄さんにフォーカスを合わせると、戦闘していたのはおよそ15分程度。


 トウテツとの戦闘だけだったけど、全く歯が立たず、すぐに撤退命令が下されて逃げるが、制御を失った輸送船に潰されてしまう。その際の怪我は重傷だった。左腕と両足の骨折。肋骨のヒビに加えて頭部裂傷。そして生存者は5千人の内38人。生存率は1パーセント以下。


 2回目の出撃はアールヴヘイムで、怪我こそ負わなかったものの生存者は4千人の内7人。生存率は0.2パーセント。


 ここだけの内容でも悲惨なのにで、3回目に参加した作戦の内容はもっと悲惨、いや凄惨だった。香港で行われた防衛作戦。お兄さんの情報を詳しく見てみるとそれは見覚えがあった。かつてサキサキ達とカラオケに行った時に一輝が見付けた映像。


 ネットに公開されていたその映像には、お兄さんが虫みたいなオメガと戦っている映像が映っていた。けど、胸を貫かれ、重傷を負いつつも勝利を収めたギリギリの戦い。擦り傷、火傷、打撲、胸部を貫通。怪我だけでも凄まじいのに、生存者は2千人の内お兄さんただ1人。生存率は0.05%。


「オメガとの戦いってこんなに過酷だったの・・・?」


 最近はほぼ死者も出す事なく勝利している。今回の韓国と日本の襲撃では一人も犠牲者を出していない。だけど、それは、お兄さん達みたいな先駆者が戦ってくれていたおかげであって、本来は勝てるはずのない相手と戦っているのではないだろうか・・・。


 オメガを生み出しているクイーンとルシファーが戦う動画を見た事があるけど、地球と同じサイズのオメガとの戦いなんて勝てる訳がない。私達が勝利しているのはただの偶然が続いているだけ・・・。そう思うと恐怖を感じてきた。


 不安な気持ちに立ち向かいながら、私は残りの戦闘記録に目を通す。


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