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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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220.愚かな選択

 後日、クイーン討伐したあの日の動画がネット上に公開された。実は戦っていた地がオメガの体表だったという内容に誰もが驚いていたが、クイーンに止めを刺すシーンが見られなかったのは少しだけ不評だった。『失楽園』でドローン諸共消滅してしまったのだ。致し方あるまい。


 それよりも惑星サイズのオメガを消し飛ばす攻撃をルシファーが出来るという事態の方が重く見られる事となった。もしあれを地球に向かって撃ったらどうなるんだって論争にまで発展しそうだったが、そもそもルシファーがいなかったらクイーンに勝てなかった訳で。その功績もあって、ルシファーは救世主だという派閥の声が大きすぎてかき消されただけだけど。


 まあ、そんな下らない事はどうだっていい。言わせたい連中には好きなだけ言わせておけばいい。オメガの脅威が去った訳ではないのだから。大量のクラーケンが逃亡したから、まだまだ襲撃を受ける可能性はある。


 誰も終戦したとか、平和が訪れたとか口にしていない。ただクイーンの討伐に成功しただけだと言うのに、またあの国がやらかしてくれた。


 日本の宇宙防衛連合脱退。それは瞬く間にニュースとなった。先進国で唯一連合の会議にも顔を出さず、挙句の果てに脱退までするとは・・・。呆れて物も言えない。


「君の国またやっちゃったね」


「日本に政治家はいないのか?」


 ヨハネス大統領と学主席にそう言われるが、オレに言うな。オレに聞くな。オレの国籍はアメリカだ。あんな国知らん。


 日本に続いて何か国か脱退するかとも思ったが、それは懸念に終わる。一度痛い目を見た人々はオメガの脅威が身に染みている。一度も襲撃されなかったせいで、日本は更に平和ボケしてしまったのだろう。


 これ程までのやらかしは類を見ない。逆を言えば、これ以上何かやらかす心配はないとも言えるけど。直近の会議でもし日本が襲撃されたら救援に向かうべきかという議題が上がったが、オレは終始無言を貫いた。


 日本がどうなろうと知った事か。地元が襲われたら家族を助ける為に戦うけど、そうじゃなかったら無視だ。ちなみにオレの地元は東京じゃない。だからもし東京が襲われたら助けるつもりはない。


 薄情だと思われるかもしれないけど、もはや擁護出来る範疇を逸脱してしまったのだ。それに連合の人間として母国だからと優遇してしまうのは示しがつかない。


 平気なふりをしていたが、正直頭を抱えて叫びたかったのを我慢したオレ偉い!


 その後、オレはコマンダーの元を訪れて新型とクイーンの因子を取り込んだ。オレが握り潰したクイーンの肉片から何とか因子を取り出すのに成功したみたいだが、髄液や脳を何故持ち帰らなかったのかと怒られてしまった。


 全力の状態での戦闘が初めてだったし、失楽園があそこまで威力があるとは思わなかったのだから仕方がないと開き直る。


「それにしても、やっぱり新型のは能力アップ系か」


 働きアリみたいなのと翼のない青いドラゴンの因子は、予想通り握力強化と持久力強化の能力だと結合した瞬間に理解した。ああいう特になんの能力もなく、膂力で戦うタイプのオメガから得られる能力はそういった系統が多いからだ。


 そしてクイーンの因子はというと――


「・・・テレパシーか」


 クイーンがオレに訴えかかている時にも、耳元でカサカサと聞こえていたが、あれもテレパシーの一種だろう。それにオメガが人間を捕食して情報を得ると予想していたが、それもこのテレパシーによるものだったのだ。タネさえ分かってしまえば何て事はない。オメガを皆殺しにしても情報が持ち帰られるのはこのせいだったのだ。


 それにしてもテレパシー・・・。地球の裏側でも電話が出来るこの時代に、そんなものが合っても大して役に立たないだろう。はっきり言って残念能力だ。かと言ってオメガを生み出す能力何て欲しくもないが。


 RPGで言うと伝説の剣が弱くてがっかりした感じだ。使い物にならない、そう思ったその時――


 キシャシャシャシャシャ――

 キシャシャシャシャシャ――


 クイーンの声と思わしきものが2つ重なって聞こえてきた。


「おいマジかよ・・・」


『どうしたんだ?』


 ラボで片付けをしていたコマンダーがオレの独り言を拾う。


「クイーンが・・・後2体いる・・・」


『・・・はあ。平和が訪れるのはまだまだ先になりそうだな』


 送られてきたテレパシー。もしかしたら、オレをクイーンとして認識しているのかもしれない。いきなり音信不通になった友人に電話を掛けるみたいに。そのせいでまだ隠れているのがバレてしまった訳だけど。


「だな」


 エージェントみたいにテレパシーを逆探知出来ないかやってみたが、すぐに切られてしまった。どうやらオレがクイーンではないと気付かれてしまった様だ。


 しばらくは、クイーンの居場所を突き止めるのに襲撃を待つ必要がありそうだ。それにまたクイーンと戦うにはエネルギーを十分に補充する必要がある。すぐに再戦という訳にはいかない。どちらにせよ早急に対応する事は難しい為、気長に待つとしよう。


 ガブリエル大統領にその件を報告すると、予想外な事に嬉しそうにしていた。


「オメガがいる以上、私が大統領の座から外れる事はない」


 ・・・それは何より。お義父さんが逞しくて頼もしくて涙が出てきそうだ。


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