217.クイーン戦
ルシファーとして、未だに全力を出した事がない。例え巨大なクラーケンに対しても、今となっては軽く剣を振るうだけで倒せてしまう。・・・クイーンを見た後でクラーケンを巨大というのはどうかと思うけど。
だが、地球をも飲み込むサイズのクイーンを倒せるだけの力があるかは不明だ。この体の全力がどれほどなのかオレ自身も知らないのだから。
――コイツがお前が最初から惑星マザーを丸呑みにしてたら、確実にオリハルコンを手に入れられていただだろうな。
そうしなかった、いや――そう出来なかった理由があるのだろうが、今はどうだっていい。
とりあえず全力でぶった切ってやろうかと接近しようとした瞬間、目の前が突然真っ黒に染まる。宇宙空間で暗いとはいえ、いきなり真っ黒になる訳がない。
嫌な予感がし、咄嗟に回避行動を取ってから何が起きたのか確認する。そこにあったのは歪んだ空間。
「サイコキネシス・・・やっぱ異能持ちだったか」
そんな気はしていたとはいえ、どうやらクイーンは今までの遭遇した全てのオメガの能力を持っている様だ。
――オレと同じ、って訳か。
そう考えると親近感が湧くな。ムカデみたいなその姿は受け入れがたいけど。
こちらからも攻撃しようと、セフィロトを構えてからクイーンの背後にテレポートし、その背中目掛けて剣を振るう。白い光の斬撃が高速で飛翔し、直撃するかと思われたが、一瞬で空間が歪んで斬撃が消滅した。空間歪曲で相殺されたのだが、背後に回りつつ高速で攻撃したにも関わらず防がれた事に驚く。
もはや超反応を通り越して未来視すら疑ってしまう。自動防御のパッシブスキルでもあるのか? そんなゲームみたいな能力があるかは疑問だが、それだけの事をしているのだ。
カラクリを調べる為にもう一度攻撃しようとするが、再び空間が歪むのを感知する。回避すると、その先の空間も歪んでいた。再度回避すると、また空間歪曲、という一連の流れが数十回繰り返される。
オレ自身から放たれている黄金の光が、回避した軌道に光の跡を残しているのが幻想的だと思ってしまう。
――と、下らない事を考えている場合じゃない。ここまで来たらもはや未来視だな。
オレが回避した先に攻撃を置かれている事に未来が視えている事を悟る。音速をはるかに超える速度で動いているのに正確に攻撃してくるその精度には驚かされる。圧倒的な手数にも。
『もはや神同士の戦いだな』
ルシファー対タイタンってか? コマンダーも大分地球のカルチャーに汚染されたな。オレも別に神話はそんなに詳しくはないけど。まあ、元々オメガの名前もそういった類から取る事が多かったし、意外とそういうのが好きなのかもしれない。
『ケイジ・・・お願い・・・無事に帰ってきて・・・』
祈る様に呟くミカエラの声を通信機が拾う。あまり長引かせると彼女達が心配してしまうし、なるべく早く終わらせるとしよう。
回避行動を続けながらセフィロトを振るい、同時に攻撃を仕掛けるが、相変わらず空間歪曲でガードされてしまう。
「うーん・・・火力が足りないのか? 手数を増やしてみるか・・・?」
クラーケンすら葬る威力のある一撃をこうもあっさりと防がれるのは癪だな。とはいえ単純に攻撃力が足りないのか、同時に防げない数の攻撃を仕掛けるべきなのかはやってみないと分からない。とりあえずアイン・ソフ・オウルでもお見舞いしてみるか。宇宙を縦横無尽に駆けまわりつつ、詠唱を始める。
「無限に輝く命の輝きが輝いては敵を貫く光り輝く矢となれ」
――何回輝けばいいんだ・・・。避けるのに集中し過ぎて滅茶苦茶な詠唱しちゃった。・・・まあ、いいや。
「めっちゃテキトーな『アイン・ソフ・オウル』!」
飛翔しつつ、光の矢を放つ。雑な詠唱だったせいで、数千程度しか光の矢が出なかった。みんなにも通信機でオレの雑な詠唱が聞かれたと思うと恥ずかしい。
と、そんなのは今はどうだっていい。放たれた光の矢を見ると、これも空間歪曲によって半分以上防がれるが、残りはその体に着弾するが、体表の外皮を少しだけ消滅させるだけに終わってしまう。
「うわー・・・これでも火力が足りないか・・・」
テレポートで一度数キロメートル程距離を取り、思案する。全力を出したものの、外皮を削っただけに終わってしまった。人間で言うと少しだけ皮膚を擦りむいた程度。これを何度繰り返したって死に至らしめる事は出来ないだろう。
『オリハルコンには銀河系すら消滅させる力があるはずだ。出力する量さえ増やせば勝てるかもしれない』
とコマンダーが独り言の様に呟く。
「出力を増やす・・・」
それは難しそうで実は簡単だ。今のオレには黄金と漆黒の翼が3枚ずつ、計6枚の翼がある。これは飾りではなく、オレの中の力を循環させる為の器官だ。ジェネレーターやラジエーターを組み合わせたものと言えば分かりやすいか。つまり翼の数を増やせば、単純にオレが扱える力の量が増すという意味だ。
そうと分かれば話は早い。背中に力を込め、新たな翼を生み出す。3対から4対、5対・・・そして6対へと増える翼。12枚の翼を広げると同時に、その大きさも約3倍の大きさに変化させる。
もはや翼が本体とも言える状態だが、これ以上は増やしても無駄だと感じる。この状態がオレの完全性を備えた終着地点。
この状態のオレはユグドラシルやコマンダーが言う様に、神と言えるだろう。全宇宙で起きている事象、これから起こる未来を観測できる程の感知力を備えた状態でクイーンを視ると、ちっぽけな存在だと思える。
「さてと、第二ラウンドと行こうか」




