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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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211.ブラックデストロイヤー

 時は少し遡る。みんなが新たな力に目覚める中、クララだけがオレ以外で初めてベルゼバブの適性が現れた。洗脳の力を持てば、何かと危険視されそうだったが、とりあえずクララが出来るのはオメガの洗脳だけ。


 そしてその力を使ってオメガを飼い慣らす為に、襲撃があった際は生け捕りにしたいと申告があった。それもバステト限定で。


「トウテツじゃダメなの?」


「可愛くない」


「確かに。一番まともな見た目で言ったらバステトだよな・・・」


 ただ、アイツあんまり出てこないんだよな・・・。その見た目は巨大な猫に近いが、似ているものが何かと問われればシーサーだと誰もが言う。灰色の体、虎よりも大きく、長いヒゲと大きな口が特徴のバステトは、見方によっては可愛く見えない事もない。オメガの中で一番まともな見た目だろう。


 トウテツは皮膚がなくて赤い肉が丸見えだからグロテスクだし、バジリスクは虫。メジェドに関しては魚だから生臭い。となると選択肢はない。


「じゃあ次出てきたらどの個体が良いか一緒に選ぼうか?」


「ん」


 という訳で数日後の襲撃でバステトが現れた。何と運の良い事か・・・。


 アールヴヘイムが襲撃されたが、その数は雀の涙程度。バステトが300、トウテツが2000。群れからはぐれたクラーケンでもいたのか分からないが、生け捕りにするなら今回が最高のタイミングだろう。


 クララとクーナさんと3人でアールヴヘイムに赴き、生け捕り作戦を実行する。


「ちょこっとだけアイン・ソフ・オウル」


 開幕に、オレがトウテツの群れを瞬殺。数千数万いようが、今の入れなら10秒も掛からない。あまりの出オチにクーナさんも同情しているが、残るはバステトだけ。


「じゃあクララ。好きなのを選んでいいぞ」


「ん」


「私達が守るから、安心して選ぶといい」


「ん。クーもありがと」


 ユグドラシルを囲っている森。その木々の間から大量のバステトが現れる。改めて観察してみると、以外と個体差があり、顔つきが違うのが見て取れる。これならクララのお眼鏡にかなうヤツもいるだろう。


 という訳でクララの選別が始まったが、これまたピンとくるヤツが中々見つからない。オレとクーナさんで接近するバステトを捌いていくが、納得がいかないご様子。


 そんな中、一体だけ見た目が違う個体を発見する。


「お? アイツはどうだ? 他のヤツよりも細身でヒゲが長くてカッコ良いんじゃないか?」


 テレビやネット、実物でもいいが、虎を初めて見た人は同じ感想を抱く。思っているよりもデブだと。バステトも同じで、かなり体が太い。それに比べて、今見付けた個体は半分程の太さで、体も白っぽく、かつヒゲが1メートル以上ある。


 シュッとしていてカッコ良いその外見が、明らかに他の個体よりもスピードに特化していそうだ。その上顔も細いから可愛くもある。


「・・・ッ!? 兄! あれ捕まえて!」


 どうやらクララのお眼鏡にもかなったらしく、興奮してそいつを指さす。


「よしきた! なら他の個体はとっとと仕留めるか」


 ――もう一度、ちょこっとだけアイン・ソフ・オウル。


 捕獲対象以外のバステトが光の矢に貫かれて消滅し、細身の個体だけが残る。怪我をさせる訳にもいかないので、サイコキネシスで上から押さえつけて動けない様にする。


 跪いているようにも見えないが、必死に抵抗している。そんなヤツの元にクララは近付き、その額に手を当てる。


「良い子にしないと怒るよ?」


 あっという間に洗脳が終わり、バステトは抵抗しなくなる。洗脳、というより本能というか戦闘の意欲を鎮めているのかもしれない。そのおかげで大人しくなったのだろう。


「ん。良い子」


 そのままクララに撫でられる姿は、野生を失った巨大な猫にしか見えない。


「どうやら無事に済んだみたいだな」


 クーナさんも心配していたらしく、ほっと胸を撫で下ろす。今までオメガとの死闘を繰り広げていたんだ。いきなり生け捕りにして飼おうだなんて、正気の沙汰とは思えないだろう。


 オレも念の為、捕まえたバステトの頭に触れて脳に絶対的な指令を付け加えておく。


『許可なく人間を傷付ける事は許されない。クララの言う事は絶対。クララを傷付ける者がいたら容赦しなくていい』


 洗脳を応用して、記憶や本能を改竄する事が出来る。もちろん、人間に対しても使えるが、これを使う機会なんておそらくないだろう。


 伏せの状態で、クララが上に乗っても怒らない姿を見るに、特に問題もなさそうだ。


「名前はどうするんだ?」


 ペットには名前を付けないと。名付け親はクララであるべきだが、彼女にネーミングセンスがあるかはまだ分からない。


「ブラックデストロイヤー」


「却下」


「むー」


 むーじゃありません。そもそも体は白っぽいグレーだし。黒くないし。デストロイする程力も強くないし。モンスターのクァールっぽい見た目とは言え、その名前はあまりにもひどい。


「私なら猛き灰色の獣と名付けるがな!」


「それも却下」


「何故だ!?」


 多分、誤訳だと思う。アールヴの言語で何かカッコ良い名前を付けたと思うけど、オレの中にインストールされている言語に不具合があるみたいだ。・・・そう思いたい。


「・・・ならシロにする」


「安直だけど、まあ今までの中で一番良いと思う」


 ペットの名前は分かりやすくて呼びやすいものにしないと。そういう訳でオレ達に仲間入りしたシロ。


 コイツのせいで、しばらくの間クララがオレに構ってくれなくなった時は殺したくなった。その事は墓場まで心の内に秘めておこう。


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