210.秘密の会議
ケイジが海洋調査でいないタイミング。私達は人知れず、部屋で会議をしていた。
「ケイジは夜まで帰ってこないわ。実は今回の依頼は私が仕組んだの」
「どうしてそんな事をしたんだ? ケイジがいないと寂しくなるじゃないか」
クーナの発言にみんな頷くけど、それにはちゃんと理由がある。
「最近同じ生活が続いているから、そろそろ変化を付けようと思って。マンネリ化してケイジに飽きられたら嫌でしょ?」
「す、捨てられるのは嫌であります!?」
最近は新しい力の制御の為、個々で訓練して夜にはケイジの相手をするだけの生活。・・・最近だけじゃなくてずっとだけど。
人は刺激に慣れてしまうもの。ケイジは天使になったおかげで私達は、それはもう刺激的な毎日を過ごせているけど、逆にケイジはどうなのだろうかと考えてしまう。もちろん、私達の事を愛しているのは知っているし、飽きたりしない事も分かってはいる。
けど、何かしてあげたらもっと喜ぶだろう。今回はそれについて話し合う予定。
「だから、みんなで何か考えようと思っているんだけど・・・。何か良い案がある人はいる?」
と聞いてみると、イザベラが鼻で笑った。
「そんなの、エロい格好して相手してやれば喜ぶだろ? 坊やも男なんだし」
「否定はしませんが、ありきたりですね。それにその手は何度も使っていますし、芸がないです」
メイシャの言う事も一理ある。私もこんな恥ずかしいのを自分が着るなんてと思っていたけど、ケイジが舞い上がる姿を見てからは何度か試みた事がある。
「やるにしても、コンセプトがあった方が良いと思うの。ケイジの心を刺激する様な・・・それこそ日本の浴衣を着てみたり」
「ユカタってなんだ? ケイジの故郷の服装か?」
「そうよ。綺麗な模様が入った服を、ベルトじゃなくて帯布で締めるの」
と言ってもあまりイメージ出来ないだろう。クーナも首を傾げているし。
「浴衣は日本の伝統的な衣装であります。着物よりも軽くて、基本的に夏に着るイメージが強いであります」
「あら、詳しいのね。アンジーは着た事あるの?」
「残念ながら無いであります・・・。日本旅行がしたくて前に色々と調べた事があるだけで・・・」
でも知っている人がいるだけでも助かる。それに日本旅行・・・ケイジのご両親に挨拶しないといけないし、ついでに旅行してみるのもいいかもしれない。終戦したら、計画してみよう。でもそれは後で考えるとして。
「あ、でも日本には・・・その・・・浴衣エッチなる文化があるみたいであります・・・」
・・・それは初耳。恥ずかしそうにモジモジしながら言うアンジェの非常に興味深い話に耳を傾ける。
「浴衣はだけると肌が露出してしまうであります。それが扇情的で、その・・・興奮してしまう、という展開があったりなかったり・・・」
「確かに浴衣は帯を締めていないと体を覆えない・・・裸も同然。それに前側が開くから邪魔にもならない・・・完璧だわ」
流石日本・・・。変態の国と呼ばれるのも伊達ではない。今回の案はそれで決定だ。
ネットでどんなものがあるのかみんなで調べる。現地に行って購入する暇はないので、こういう時の為に購入しておいたマンションの一室に配達する様、手配しておく。受け取りは人間に模したアンドロイドをミスターコマンダーから借りておけばいい。
「他にも日本人はケモ耳や尻尾が好きって聞いた事があるであります」
「耳はカチューシャでなんとかなるけど、尻尾はどうするの?」
「あ、その・・・お尻に・・・装着するタイプが一般的みたいであります・・・」
・・・ああ、そういう事。彼女の話を理解したが、それは次回にしよう。流石に浴衣ケモ耳娘は・・・可愛いかもしれないけど、手札は温存しておかないと。一度に手札を使い切ってしまったら、その後が大変だから。
「それにしてもアンジー。あなたそういうの詳しいのね」
「く、詳しくはないであります! ただそういうのもあるって耳にしただけであります! 断じて積極的に調べた訳ではないであります!」
「そ、そう。ごめんなさい」
アンジーが大きな声を出すのは珍しい。それにあまりの気迫にたじろいでしまった。
「なあ、こういうヤツの事、何て言うんだっけ?」
「・・・むっつりスケベ」
イザベラの問いに、メアリーがしれっと答える。その瞬間、アンジーがメアリーに飛び掛かった。
「誰がむっつりスケベでありますか!? ただ知識として知っていただけであります!」
「苦しい言い訳。普通の人はそんな事知らない。・・・この変態」
「ひぐっ!? 違うであります・・・。私は変態じゃないであります・・・」
飛び掛かるまでの勢いは凄まじかったが、あっという間に大人しくなってしまったアンジー。そんな彼女の肩を抱き寄せる。
「いいのよアンジー。恥じる事はないわ。あなたのおかげでケイジを楽しませられる計画が立てられたのだから」
「そ、そうであります! ケイジ殿の為なら、惜しみなくこの叡智を提供するであります!」
「それは叡智じゃなくてただのエッチッス」
「どうして突然裏切るでありますか!? ケイシーもひどいであります・・・」
こうして私達の会議は幕を閉じた。後は現物を手に入れるだけ。その為にケイジを遠ざけたのだから、計画がバレる事はない。私達は謎の達成感を抱いていると、クーナが一人首を傾げていた。
「尻に装着する尻尾とはどういう事なんだ?」




