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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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019.ミカエラ

 ケイジとクーナが食堂で昼食口にしていた頃、コマンダーはアメリカ大統領であるガブリエルと密会していた。


「君が私を呼びつけるなんて珍しいな。コマンダー」


 ガブリエルは初めて足を踏み入れたオメガの研究室で言う。そこには今まで確認されたオメガが、ガラスの筒の中に入っていた。中にはオメガと一緒に黄色の液体が満たされている。ホルマリンかと、ガブリエルがトウテツが入っている筒をノックするが、やはり反応はなかった。


『我々でも予期せぬ事態が発生した。故に大統領、君の判断を仰ぎたい』


 コマンダーがガブリエルを部屋に誘うこと事態珍しいというのに、さらに助言を求めるとは。さすがのガブリエルも思いもしない事態に目を丸くしてコマンダーに視線を向ける。


「君がそう言うのなら、事態は深刻という事かね?」


『否定。ただ君達人類の中から我々ですら理解出来ない、不可解な存在が現れた。その存在をどう扱うべきか決めかねている』


「不可解な存在、ね。それは一体どこの誰なんだ?」


 ガブリエルが問うと、コマンダーは予めその人物の情報を詰め込んだファイルを用意していたらしく、その球体状のボディの側面から腕を生やしてそれを手渡す。ガブリエルはそれに目を通すと、「ほーう」と口ずさむ。


「人間でありながらユグドラシルの加護を受けた存在。それにあの絶望的な生存率の任務を二度に渡っても尚生きている存在か。・・・面白い」


『我々ではユグドラシルの持つ力を観測する事は不可能。彼がどの様な影響をもたらすかは予測が出来ない。つまり、我々にとって彼はただの人間から未知の存在に昇華した。故に君の判断を仰ぎたい』


 コマンダーの言葉を聞いたガブリエルの頭の中には、彼をどうアメリカに取り組むかという事しかなかった。


 そんな特別な存在を他国に奪われる訳にはいかない。それに宇宙防衛連合に属しておきながら、一度も会議に参加せず、戦争の最中だという事を忘れて悠々自適に普段通りの生活をしている日本の政治家のものにするのは愚の骨頂。


 戦争はおろか、まともな政治も知らない植民地同然の日本なんてどうにでもなる。どの様な手を使ってでも彼をアメリカのものにする。


 その為の手段もすぐに思い付いた。情報の中には、彼の年齢は15と記載されている。それならば使える手がある――


「コマンダー。彼の事は私に一任してくれ」


『承知した。それと、彼はアールヴの姫君のお気に入りだという事も伝えておく』


「クーナ嬢のお気に入り、か。まあ、そこは上手くやるとするよ」


 ガブリエルはそれ以外に話がないのを確認し、母艦を後にする。


 そしてホワイトハウスの大統領執務室に移動して誰かに電話をする。


 1時間後、電話をした相手が現れた。


「どうしたのパパ? 私を呼ぶなんて珍しいね」


 ガブリエルをパパと呼ぶ、16歳程の女の子。綺麗なブロンドヘアーに整った顔立ち。くりっとした大きな瞳が可愛らしさを助長する。さらにスタイルは細いが、出るところは出ていると欠点がない美しさを誇っていた。


「おお、マイスィートエンジェル。ハイスクールの途中に悪いね」


「気にしないで。それでどうしたの?」


「ミカエラ、これを見て欲しいんだ」


 ミカエラと呼ばれた彼女は、ガブリエルが持っていたファイルを受け取り、中身を確認する。


「あら、可愛らしい男の子ね。んー日本人かしら?」


 その中にある写真を見て、ミカエラが問う。


「そうだ。ミカエラ、君には彼と結婚して欲しいんだ。パパはどうしても彼を手に入れたい」


 結婚。気安くそう言うが、写真に映る少年は15歳で、ミカエラもまだ16歳。お互いに結婚なんて出来る年齢ではない事は確かだった。だが、ミカエラはガブリエルの発言に対して嫌がる素振りを一切見せず、ただ写真をじっと見つめる。


「んー・・・いいよ。彼の顔キュートだし。それに、私にお願いするぐらい彼が欲しいんでしょ?」


 年頃の女の子であれば、結婚にはロマンがあり、愛のない結婚なんて絶対に嫌がるだろう。それも会った事のない相手となると尚更だ。ただ、ミカエラはその提案を受け入れた。


 何故なら、彼女はただの6歳の女の子ではなく、大統領の娘だから。


「ありがとうミカエラ! 近い内に彼との顔合わせの場をセッティングするよ」


「うん、楽しみに待ってるね」


 ミカエラ自身、父がどうしても手に入れたいと言う彼に興味があった。ファイルを手に、家に帰ってベッドに横たわる。そしてうつ伏せの状態で、ファイルの中身を隅々まで読む。


 15歳で召集され、二度の戦場を経験している事。その際に、ミカエラは彼が参加した作戦の死亡率の高さに驚愕する。そして人間でありながらユグドラシルに見初められた唯一の存在だという事。


 それらの情報だけでも彼が非常に特別な存在である事は理解できた。最後に、ミカエラはその男の子の名前を確認する。


「ケイジ・ウルシハ」


 その名を口にすると、彼女は写真にキスをするのだった。


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