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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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205.巣

 ルカの女体化を見てから、ヤルダバオトの変身の能力に可能性を見出したオレは、実験と検証ひたすら繰り返していた。その理由はクラーケンを欺く為だ。


 オメガのアジトを探すにはどうしてもアイツを追跡する必要がある。だが、草食動物みたいに臆病なせいで、隠れて追いかけてもすぐにバレてしまう。コマンダーも過去に何度か試したが、上手くいった事はない。


 だが、今のオレならクラーケンを完全に騙せるかもしれない。次の襲撃までに練習しようとしていたが、生憎とジリリリと鳴り響く警報。


 とりあえず出撃して試すだけ試してみよう。失敗したのなら、改善すればいい。地球とアールヴヘイムが襲撃される度、チャンスはあるのだから。


 そういう訳で今回の襲撃先はアールヴヘイム。特に新型もいない様なので、いつもの様に地上はみんなに任せる。オレはアールヴヘイムの宇宙、ではなく境界線まで飛翔する。アールヴヘイムは地球と違い、宇宙の中に存在しているのではなく、ユグドラシルを中心とした丸い容器の中にある。


 容器には境界線があり、世界を隔てる壁が存在しているのだ。宇宙が存在しない世界、それがアールヴヘイム。太陽がある訳ではないが、ユグドラシルの光がアールヴヘイムを照らしているのだ。ユグドラシルの調和の力を利用して完璧な循環をしているおかげで、限られた資源をやりくりしていると聞いた時は全く理解できなかったが、今では十二分に理解できる。完璧な生態系を保った世界と言えば分かりやすいだろう。


 今はそんな事よりも変身による擬態をし、カメレオンの様に周囲に溶け込みつつクラーケンに接近する。雲の上、境界線に限りなく近い位置。地上からでは目視出来ない程遠いが、優雅に空を泳いでいるその姿を眺める。


 ある程度近付いても動きを見せないのを見るに、どうやら成功している様だ。実はバレていて、アジトに帰るつもりはないのかもしれないと疑問を抱きつつも、そのまま待つ事数十分。ようやくクラーケンに動きがあった。境界線に向かって移動し、ぶつかる直前にポータルを開いたのだ。


 ポータルが開いたのであれば、もう用済みだ。セフィロトを胸から抜き、生命魔法を刀身に宿して薙ぎ払うと白く光る斬撃がクラーケンを真っ二つにする。オレにも、死んだ事にも気が付くなく、死を迎える。


 このまま死骸が地上に落ちてしまえば、アールヴが大地を浄化する作業をする羽目になってしまうので、死骸を光の粒子にして消滅させる。この粒子はそのままアールヴヘイムのリソースとなり、世界を豊かにしてくれる為無害だ。


 そして黒い闇のゲートみたいな見た目のポータルに接近する。


「・・・っし。行くか」


 一息つき、それに身を投じる。真っ暗な視界が数秒続いたかと思えば、宇宙空間へと抜け出す。初めて訪れる位相の宇宙。地球がある宇宙とは違い、アールヴヘイムの世界みたいにかなり狭い宇宙だというのが感じ取れた。


 まるで、オメガのアジトの為だけに生み出された宇宙空間だ。もしかしたらオメガの親玉は空間を生み出す事が出来るのかもしれない。


 そう思った理由は、今オレの目の前には茶色の大きな惑星があるが、その地表に何百万のオメガの気配を感じるからだ。つまり、オメガはここで量産されている。


「見つけた・・・」


 ――ここが巣。全ての元凶の場所・・・。ここを潰せば戦争が終わる・・・。


 セフィロトを惑星に向けるが、踏みとどまる。失敗は許されない状況の中、コマンダーの協力もなしに単独で攻めるのはあまりにも愚かだ。位相は把握したのだから、一度撤退するべきだろう。機会ならある。そう自分に言い聞かせて一度アールヴヘイムに戻る。


 こちらの戦闘も終わっていた様で、銃声の一つも聞こえない。地上に戻ると、オメガの群れの死骸がそこら中にあった。今回の襲撃は規模で言ったら並みぐらいだったし、特に苦戦する程のものではなかっただろう。


 アールヴの浄化作業も大変だろうから、後で手伝ってあげよう。みんなも無事に見えるし、大勝利と言える結果だ。


「おかえり。大丈夫だった?」


「ただいま。大丈夫だよ。それよりみんなに報告があるんだ」


 出迎えてくれたミカエラを抱き締めつつ、みんなが集まるのを待つ。コマンダーにも通信を繋げ、全員が集まったところであの件について話す。


「改まってどうしたのでありますか?」


「まさかアールヴの娘に手を出したんじゃないだろうね?」


「む? 私以外のアールヴといつの間に?」


「さ、さすがはケイジ様・・・」


「ケイちゃん・・・これ以上増やすのぉ・・・?」


「一緒にいられる時間が減るのは嫌ッス・・・」


「天使様はいずれ生きる全ての女性を孕ませる」


 ・・・みんなして好き放題言い過ぎじゃない? いや、これに関してはオレが悪い面もあるから強くは言えないんだけどさ・・・。ただ――


「メアリ―は後でお仕置きな」


「な、何故!?」


 何故じゃない。オレを一体何だと思っているんだ、全く・・・。


 気を取り直して、再びあの件について話す事にした。


『それで、一体何を言うつもりなんだ?』


「・・・さっきクラーケンがポータルを開いたから追ってみたんだ」


『まさか・・・見付けたのか・・・? 我々が30年近く見付けられなかったアレを・・・?』


「何の話をしてんだい? もったいぶってないで、早く言いな。何を見付けって言うんだい?」


「ごめんごめん。巣だ。オメガの巣を見付けたんだ」


 戦争の終結は、そう遠くない。誰もがそう確信した。


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