203.ポニーテール
この体になってからオメガ因子の結合をサボっていたので、今はラボにてその分の因子を取り込む事にした。その数は3つ。
まずはサタンとの闘いの時に瞬殺したオレの姿を模倣していた特殊型の『アダム』。そして災害級の『ヨルムンガンド』。コイツは穴を掘っていたワーム型の巨大オメガだ。最後に、以前パリに現れた植物のオメガ、特殊型『ウロボロス』。これらの因子を取り込み、その能力を頂戴する。
アダムの能力は『模倣』。見たら大抵の事をマスターできるとこれまた便利な能力。だけど使う機会がない。
ヨルムンガンドは『地形操作』。土をいじったり、地形を変えたりできるが、使いどころがない。大地震が来たら相殺出来るって考えたら災害対策は出来そう。後は地割れを直したり。・・・使う機会がなさそう。
ウロボロスは『植物操作』。植物を操ったり、成長を促進させられると考えたら、調和魔法に近い。・・・これまた使う機会がなさそうな能力。
デカいオメガがこういった操作系の能力が多いのは、きっと気のせいではないはず。災害級のオメガ、怪獣みたいなガイアは『火炎操作』だし、マンタに似たワタツミは『水操作』だったし。
これらの能力を駆使すれば災害を起こせるが、逆に災害を止める事も可能だ。『火炎操作』戦以外は闘であまり使えなさそうなので、そういった方面でしか使い物にならなさそう。まあ、前にワタツミの被害に遭ったマイアミを復興した時の使い方が主になるだろう。
それか新たな惑星を開拓するか――
使い道はまた今度考えよう。それよりも、一つ気になる事がある。
「なあ、この体になってもみんなと、その・・・シテんじゃん? みんなの体に影響とかないのかな?」
そう、その事だ。おそらく悪影響はないと思うが、どんな影響があるのか分からないからな。
『問題ないだろう。定期的にメディカルチェックしているが、特に問題は見られない』
「そっか。なら因子の適性が増えてたりしないか? 何も影響がない、っていうのも考えにくいし」
『ふむ・・・可能性はあるな。そっちは確認していなかった』
という事でみんなの血液検査を実施する事に。それから副作用が出ない様にコマンダーが適切な処置を施してくれるはず。
その日の内に血液を採取したが、その際にコマンダーからオレの血も欲しいと言われた。
「オレの体、傷付くかな?」
別に血をあげる事ぐらい大した事ではないのだが、この体にどうすれば傷を付けられるかという問題が出てくる。アダマンタイト製の武器でも傷付かないのは実証済み。前にルカとメイシャとメアリー、あとマキナと4対1で戦っている時に、油断して斬られたが傷一つ付かなかったのだ。
『アダマンタイトで傷付かないとなると・・・。オリハルコンの武器、妖刀ムラマサで試したいところだが、サタンに吸収されてからただの石と化してしまったからな・・・』
妖刀ムラマサ言うのやめれ。
「う~ん・・・あ、セフィロトで斬ってみるか」
そういう事でセフィロトを取り出し、みんなに見守られている中、左腕を斬ってみる。ミカエラが心配そうに「あ・・・」と声を漏らしたが、それよりも驚いた事があった。
傷を付けるのには成功した。だが、その傷口から流れる血が、『赤』ではなく『黄金』だったのだ。
「え? 気持ち悪・・・」
『ふむ。黄金の血液か・・・。まさに神の血だな』
気持ち悪がるオレと、興味津々で黄金の血液を採取するコマンダー。こんな液体がオレの中を循環していると思うとゾッとする。いや、まあ、別に肌が金色になる訳ではないからいいんだけどさ・・・。
「売ったら良い金になりそうじゃないか」
「おい」
イザベラの冗談についツッコんでしまったが、これを飲んだら不老不死になるとか噂が流れたらオレどうなっちゃうんだろう? 想像しただけでも鳥肌が立つ。いや、毛穴一つない体だから鳥肌なんて立たないけどさ。
既に再生し、傷口も塞がったが、ミカエラが心配して傷口をハンカチで拭ってくれる。
「大丈夫? 痛くない?」
「大丈夫だよ。イザベラと違ってミカエラは心配してくれるんだね」
「ちょっと冗談を言っただけじゃないか・・・」
イザベラに意地悪しようとしたが、思った以上に効いてしまった様だ。拗ねる後ろから彼女抱き締める。
「ごめんって。今のは意地悪だったな」
「・・・こんなのに騙されるなんて、坊やもまだまだだね」
と、何事も無かったかのようにケロッとしている彼女。どうやら罠に掛かってしまったのはオレの様だ。その仕返しに、彼女のうなじを舌を這わせる。
「ひゃう!?」
と驚いた彼女がうら若き乙女みたいな声で鳴く。慌てて口を塞ぐも、ここにいる誰もがその声を耳にしていた。一瞬で耳まで赤くなる彼女に、誰もがニヤニヤしてしまう。
「随分良い声で鳴くじゃないか」
「坊やがいきなり舐めるからさ!」
どうやら反省が足りない様だ。ペロペロ。
「あ、ちょ、坊や! や、やめろってば・・・」
さすがに可哀そうだからやめてあげるか。続きはベッドの上でしようと思ってイザベラを離してあげる。すると肩で息をしながら、オレを睨むが、耳まで真っ赤の状態でそんな事されても可愛い以外の感情が浮かばない。
「・・・坊やの変態」
「・・・今のもう一回言って」
「っさい」
――どうしよう? うちのイザベラが可愛くて死にそう・・・。
違う意味でお互いに身悶えていると、ケイシーが後頭部の髪をかき上げ、自分のうなじを見せつける。
「ケイジさん、うなじ好きなんスか?」
「うなじが好き、っていうか・・・うーん・・・。ふとした時に見えるのとか、普段と違って髪型をポニーテールにしたりしたら、つい見ちゃうというか・・・。いや、まあ、好きです、多分、はい」
料理する時だけポニーテールにしたり、浴衣を着て髪を結わえた時に見えるうなじとか、こうグッとくるものがあるよね。・・・多分共感出来るのはマキナぐらいだろう。っていうか日本男児だけなのかな?
なんて下らない事を考えていると、みんなして「ふーん・・・」って興味無さそうに口にする。イザベラだけでなく、みんなにも変態だと思われているかもしれないけど、男なんてみんな変態だ。否定はしない。
幻滅されるかと思ったが、それから数日。みんなヘアゴムを持ち歩く様になり、事あるごとに髪を結んでポニーテールにしていた。
――うちの天使達、可愛過ぎじゃない? 幸せ過ぎて死にそうなんだけど・・・。
もしこの全宇宙で、オレを殺せる存在がいるとしたら、間違いなくみんなだろう。オレの心臓がもたないかもしれない・・・。




