201.プレイ
久々に寿司を堪能したオレは、もう思い残す事はないから帰ろうとしたが、ガブリエル大統領に止められる。余韻に浸りたいところだが、どうやらそうも言っていられない様だ。
「さて、お楽しみのところ悪いが、良い子は寝る時間だ」
悪い子は攫っちゃうぞ、ってあの顔で言われたら高校生でも泣くぞ。なんて冗談、死んでも言えない。
「最後に私から、ではなくルシファーに挨拶を頼もう」
元々打合せをしていたとはいえ、正直人前に立つのは慣れない。けど今更引き下がる訳にはいかないから行くんだけどさ。
ガブリエル大統領にホールの階段の真ん中辺りに手を向けられたので、大人しくそっちに移動し、全員の顔が見える様に立つ。話す内容は決めている。ただ、ここにいる人間に響くかは分からないけど。
「おかげで地球の料理を楽しめた。この場を設けたガブリエルに感謝を」
首を傾げる程度の角度で会釈をするガブリエル大統領。
「そして常日頃から種を守る為に戦っている戦士に敬意を」
次はルカが頭を下げる。みんなも続いてそうする中、イザベラだけは腕を組んでふんぞり返っている。そのせいで育ちに育った胸部が協調される。相変わらずデカい。
「最後に、他の人間に告げる」
一度息を吸い、力強く次の言葉を発する。
「――危機感を持て。当事者としての意識もなく、戦士を手助けする訳でもなく、偽りの安寧の日々をただ過ごすだけの愚者に救う価値はない。何度も言うが、オレはお前達全員を救うつもりはない。それを肝に銘じておけ」
人を導く程のカリスマも、全員を救いたいという正義感も、オレにはない。だから生き残りたいヤツは必死についてくればいい。
湿っぽい最後になってしまったが、パーティはそれで解散となった。ミカエラの親友であるレイチェルが彼女と話したがっていたが、気疲れしたオレを汲んで、ミカエラは帰宅を選択。まあ、翌日にでも電話で話すのだろう。
寿司も食って満足したオレももう思い残す事はないと、みんなを連れて母艦へテレポートする。
「ふぅ。疲れた」
「お疲れ様」
ルシファーのフリをするのも、パーティに参加するのも、記者会見に出るのもしばらくはコリゴリだ。不謹慎だけど毎日オメガが来てくれた方が助かる。
気分転換に服を脱いでシャワーを浴びようとしたところで、ある事を思い出した。
「あ、この格好のまま帰ってきちゃったな」
「大丈夫よ。服は明日届けさせるわ」
そう、オレはタキシードのままで、みんなはドレス姿のままだ。露出度がそこそこある扇情的なドレス。この姿を他の男に見られた事、それもあのリアムとかいう男がミカエラの手にキスした事を思い出すと怒りも湧いてきた。が、同時にある事も思い付いた。
「・・・ねぇ、このドレスって汚れても大丈夫?」
「ん? 買い取ったものだから別に大丈夫だけど・・・まさか――」
「そう。そのまさか」
ミカエラを抱き上げて、そのままベッドに押し倒す。彼女も瞬時にオレの思惑を悟ったのか、腕をあげ、スリットが入っている方の足を曲げて露出させる。
「もう・・・ケイジったら」
「あのリアムとかいうヤツに触られたところ、全部上書きしてやる」
「や~ん」
なんて、プレイで朝まで盛り上がったのは言うまでもない。ちなみにイザベラとメイシャは酔い潰れて寝てしまったので放置。寝てる方が悪い。
――翌朝。
みんなが眠っている中、イザベラとメイシャが頭を押さえながら起き上がる。
「クソ・・・飲み過ぎた・・・」
「うぅ・・・気持ち悪いです・・・頭も痛い・・・うぶっ」
ゲロゲロゲロ――
「大丈夫?」
気分が優れなさそうなメイシャの手元に、ゴミ箱をサイコキネシスで運んでやると、秒で吐いた。イザベラの分の洗面器も用意しとくか。
「ちょ、目の前で吐くんじゃないよ・・・うぶっ。もらいゲロしそう・・・うおぇっ」
ゲロゲロゲロ――
イザベラも洗面器の中にぶちまける。過去にアンジェが吐くのも見たからこれで3人の嘔吐する姿を見た事になる。いや、そんなので嫌いにはならないけどさ・・・。
2人が吐き終わってから、頭を撫でながら生命魔法をかける。これで二日酔いが治ればいいがと思い、解毒してみると、顔色がすぐ良くなった。
「ありがとうございます、ケイジ様」
「おぉ! こんな事も出来るのかい! 便利な魔法だね! これがあれば飲み放題じゃないか!」
「いや、そんなになるまで飲むなよ」
「坊やも大人になったら分かるさ。ほれ、お礼だ」
そう言ってキスしてくるイザベラ。普段なら嬉しいのだが、今は――
「ゲロ臭っ!?」
「ニシシ。これが大人の味だ。ほれほれ~」
「や、やめろぉ!」
この体になってからというもの、五感がかなり鋭くなっている。だというのにゲロの味がするキスなんてされたらたまったものじゃない。
元気になったメイシャがイザベラを羽交い絞めにして引き剥がそうとするが、酔っぱらっていなければイザベラが力負けするはずがない。
「坊やだっていつもアタシ達に苦いの飲ませてんだ。ちょっとぐらい我慢しな」
「くっ。それを言われると反論出来ない・・・」
ただ、一つだけ確かな事がある。オレは無理強いは絶対にしていない。・・・いや、これを言ったら絶対喧嘩になるからやめておこう。
そうしてオレはイザベラとレモンとは程遠い酸味のキスをする羽目になった。
――うっ。もらいゲロしそう。
キスはタバコじゃなくてゲロのフレーバーがした・・・。




