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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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192.アビス

 なんか打ち切りした漫画の最終回みたいな事言ってしまった気がする。気を取り直して、セフィロトを胸から抜く。体の中に手を入れる行為も、その中から何かを抜き取るという行為も未だに慣れない。


 それとこの剣の名前を決めるのも忘れていた。神々しい光を放つ白い剣。元は世界樹と考えると、変な名前を付ける訳にはいかない。


 候補としては『神剣セフィロト』。他には『世界樹の剣』・・・は安直過ぎるか。もしくは『セフィロトの剣』か。・・・略したらゾラゴンクエストに出てくる剣になりそうだしやっぱりやめとこう。となると――


「神剣セフィロトだな」


 それか普通にセフィロトって呼ぶか。宇宙にもう一つの太陽が生まれたかの様な光が放つそれを、漂っているクラーケンに向けて振るう。


 生命魔法を使い、命を刈り取る白い光の斬撃を放つ。それは高速で飛翔し、クラーケンに着弾するが小さな切り傷を作るだけで終わってしまう。小さなとはいっても、高層ビルすら両断出来る程のサイズだが。


「手加減し過ぎたか・・・」


 力の練習がしたかったとはいえ、絞り過ぎては意味がない。最適な力を無駄なく使える様にしなければ。しばらくはクラーケンにサンドバックになってもらおう。


 向こうもこちらを敵として認識したらしく、吸盤はないがイカに似た触手をウネウネと動かし、収縮させる。ヘビが相手に噛みつく前に、峠道の様に首を畳んでから伸ばす事で高速で動ける。それを彷彿とさせる動きで触手を射出するが、そんなものに当たる程鈍くはない。


 初めてオケアノスと遭遇した時もこうやって攻撃したよなぁと、昔を思い出していると、左腕に付けておいた通信機が起動する。


『お兄さん、すみません。今大丈夫ですか?』


「ああ。どうしんたんだ?」


 現場で指揮を任せているルカからだった。その声色から多少の焦りが見える。


『民間人の避難が全くうまくいかなくて・・・。お兄さんの力が必要になりそうです』


「さっきのイベントの参加者か・・・。ルカ」


 民間人の救助。それは間違いなく最優先事項だ。だが、今回に限ってはその限りではない。愚か者に割く


「優先事項を伝える。今回の第一優先事項はオメガの殲滅だ」


『はい』


「次の優先事項は兵士全員の安全を維持する事。避難していない民間人を無理に救助する必要はない。自分の身を守る事を優先しろ。例え、逃げ遅れた民間人が殺されそうだとしても」


『ッ!? ・・・分かり、ました』


「冷酷に聞こえるかもしれないが、バカな連中のせいで兵士が傷つくのなんて許さない。それに、オレはお前達が無事ならそれでいい」


『了解です。みんなの安全を優先します』


「ごめんな。辛い役割を任せて」


『いえ。必ずやり遂げてみせます』


 迷いが消えたのか、焦った声色はもう見られない。民間人を見捨てろとは言ったが、実際に目の当たりにしたら自責してしまうだろう。なるべくルカの負担を軽くする為にも、早く戻るべきなのかもしれない。


 一方で、成長を促す為に一人歩きさせるべきかとも考えてしまう。どちらが正解かは分からないが、任せると言ったのだ。なるべく彼の選択に任せてみよう。


 それにオレはオレでこの力の練習をしなければ、いざという時みんなを巻き込んでしまうかもしれない。あまりにも強大とはいえ、この力に振り回されるのは言語道断だ。今やオレの体の一部なんだから。


「さてと、続きを始めようか」


 とは言っても、クラーケンの触手による猛攻は止まっていないが。紙一重で避けた触手を切断する為に斬撃を放つ。生命魔法によって増幅された斬撃が数百メートルの太さがある触手を綺麗に両断した。


 不思議な事に血は流れていないが、痛みは感じている様だ。バタバタと触手を振り回して苦しんでいる。


「残りの、えぇと・・・5本の触手も斬ってやるからな」


 イカでもタコでもない6本の触手。残りは5本。それを使って卵型ポッドを射出しているのだろう。が、練習台にもってこいだ。


 ――弄ぶ様で悪いが、地球を襲った報いだと思って我慢してくれ。


 20分程掛けて残りの触手も切断し、足を失ったクラーケンの眉間と思われる場所に剣を突き刺して締める。もっとクラーケンがいれば練習出来たが、まあそれでも成果がない訳ではない。


「よし。そろそろ地球に戻るか――ん?」


 地球に戻ろうとしたその時、火星で不意に何かの気配を感じた。気のせいだと思いたいが、宇宙空間に人間がいるはずがない。だとしたらオメガのはず。


 ――もしかしてオメガのアジトって火星だった?


 そんな訳ないか。前に千里眼でも確認しているし。だとしたら一体何がいるというのだろうか?


 千里眼を発動し、火星を調査すると、見た事も黒いオメガがいた。


「いや、コレ・・・オメガか・・・?」


 黒いイソギンチャクというかタコというか、奇怪な見た目。体のほとんどが無数の細い触手で出来ており、頭部と思わしき場所には青色に輝く物体がある。目なのか脳なのかは分からないが、核だと思う。そこから直接触手が生えている。


 元がなんの生物か検討もつかず、オメガか疑ってしまう。今は優雅に宙を泳いでいるが、どうやら偵察している様だ。


『アレを逃がすな』


 不意に隣から声が聞こえた。聞き覚えのある声。


「ユグドラシル? アレを知っているのか?」


『説明は後だ。アレを絶対に逃がすな。必ず殺すんだ』


 珍しく緊張感のある声色で言うユグドラシルに疑問を抱きつつ、言う通りにする事にした。火星まで飛んでいくと、赤い大地が目に入る。その中で優雅に漂っている『アレ』がこちらに気付くよりも早く、核と思わしき部分に剣を突き刺す。すると体の組織がボロボロに崩れて息絶えてしまった。


「・・・思ったより弱いな」


 接近してから分かったが、大きさは乗用車1台分程度。死んだ時に体の組織が崩壊して死ぬなんて、やはりオメガとは違う。


「結局なんなんだコイツ?」


『アビスだ』


「アビス?」


『オメガとは異なる存在だ。詳しい事は時が来たら話す』


「また秘密かよ・・・」


 秘密主義のユグドラシル。それにアビス・・・オメガに続いてまた変なのが現れたな・・・。


 知りたい事はまだまだあるが、答えもしないユグドラシルを問い詰めたところで時間の無駄だ。それにもう姿が見えないし。


 なら、今は地球の救援を優先しよう。みんなが心配だし、あまり犠牲者が多いとガブリエル大統領が大変な目に遭うから。


「にしても、アビスか・・・」


 ホント、オレ達の戦いはまだまだ終わりそうにないな。


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