190.復興
後日、ガブリエル大統領に頼まれてマイアミの復興作業をする為に現地にテレポートする。前までは視界の中にしかテレポート出来なかったのに、ルシファーになってからは地球の裏側だろうが、惑星マザーやアールヴヘイムにだってテレポート出来る。便利だ。
現地ではガブリエル大統領にそそのかされたマスコミ達が水害を受けていない場所からカメラを向けて待機していた。復興作業の内容は伝えず、『協力者』が一日で何とかすると言ったらしい。
その『協力者』がオートマタだと勘違いしたマスコミがその姿をカメラで捉え、あわよくば質問出来ればと考えているのだろう。だが、今回の主役はオートマタではなくてオレ。というよりルシファー。
オレがルシファーだとバラすのはもっと先にしたい様なので、とりあえずは変身した状態、更に翼を出した状態で姿を現す。
晴れた空。太陽とは別に光を発する存在に気付いた連中がカメラを向ける。そこに映るのは黄金の輝きを放ち、黄金の翼と漆黒の翼を併せ持つ天使の姿が映っている事だろう。
「天使・・・?」
数キロメートルは離れているが、集中したらカメラマンの呟く声が聞こえた。ホントに便利な体だ。手でも振ってあげたいところだが、今回はサービスはなし。
水浸しになっている地区の上空を飛び回り、全ての水を回収していく。建物に付着した泥や瓦礫、木片等もなるべく一緒に取り除いていき、ワタツミにやられる前の状況になるべく近づける。
ゴミは燃やして宇宙にポイ捨て、水は海に戻していく作業をひたすらに繰り返す事2時間。人の姿はないが、元の姿に戻すのに成功。無事に復興作業が終了した。
一度上空から地上を眺めて取りこぼしがないか確認するが、大丈夫そうだ。未だに離れた位置からカメラを向けられているので、終始撮影されていたはず。これでガブリエル大統領の株も上がるだろう。
逆に秘密が多いと炎上する可能性も考えられるが、まあその時は上手く対処するはずだ。連合を結成した時だって相当荒れたのだから。今回も何とかだろう。
役目を終えたオレは上昇し、雲を超えてからテレポートして帰還する。何も知らない地上にいる人達からしてみれば、天界にでも還ったと勘違いしてしまうかもしれない。まあ、それが狙いなんだけど。
とりあえず今はルシファーを神格化する為に、ミステリアスな感じをなるべく出しておきたい。謎に包まれた天使。それを『協力者』と呼ぶガブリエル大統領。
――うーん・・・。秘密結社みたいでカッコ良い・・・。そういう設定、嫌いじゃない。
今の自分の立場に満足しながら母艦に帰還すると、先程の作業内容がすぐさま動画サイトにアップロードされており、ソファの上でミカエラのスマホをみんなが見ていた。
「おかえり。ほら、見て」
「ただいま。どれどれ~」
画面を覗いてみると、あまりにも早い動きのせいでカメラで追い切れていないのか、オレがあまり映っていない。かといってズームアウトすると光の塊にしか見えないので、ズームせざるを得ない。
「もう少しゆっくり動いてあげれば良かったかな?」
でもその速さで動いても2時間も掛かってるし。悩みどころだ・・・。とはいえ完全にオレが映っていない訳ではないので、ミステリアス感を出すという点においては、ある意味成功だとも言えるだろう。
今後もこうやって復興作業やオメガとの戦闘でルシファーを表に出していく。そうする事で認知度を上げていく予定だ。神の遣い、天使、救世主、様々な憶測が出てくる事だろう。それも狙いの一つ。
まあ、つまりルシファーはガブリエル大統領の政治活動の支援だけではなく、民衆の希望をもたらす存在にし、英雄として祀り上げさせるのが目的だ。
もし戦争が終わったその時、適合者である兵士達が危険視されない様にオレが全てを受け止める存在になる。
例え悪魔や化け物と呼ばれる事になろうと――
それに、例え何十億人に悪魔だと罵られようとも、オレにはここにいる10人がいれば、他には何も必要ない。
「ぎゅ~」
ミカエラの携帯を後ろから覗くような体勢だったので、そのまま後ろから抱き締める。
「ふふ。復興作業でお疲れなのかな?」
払い除ける真似なんてせず、ミカエラはオレの髪を撫でる。それを見たクララが真似をするが、可愛い。
「よしよし」
小さい子供をあやす感じがしたが、可愛いから良しとする。
それとルシファー形態のままなのを思い出し、翼をしまって解除しようとしたが、アニーに止められた。
「ふふん。今日も羽で包んで~」
この前ので大分気に入ったみたいだ。アニーに催促され、翼で彼女の体を持ち上げながら抱き締めると、気持ち良さそうに目を閉じる。数秒も経たずに寝息が聞こえてくるではないか。
ハンモックで寝るのに近いとは思うが、こうもすぐに眠れるのは彼女だからだろう。放っておいたら1日20時間は寝る彼女。もはや才能の域だ。オレだったら空腹で目が覚める。この体になってから空腹は感じないけど。
「ふわぁ~・・・」
昼寝してしまったアニーを見て、クララも欠伸をする。一人が寝たらみんな眠くなるなんて、まるで保育園のお昼寝タイムみたいだが、まあ数日は休息日にするって決めていたし、別にいいだろう。
反対側の翼でクララを抱き寄せ、アニーと同じ様に包むとすぐに寝落ちしてしまった。2人をベッドまで運び、ゆっくりと降ろすが、翼を掴んで離そうとしない。
ミカエラがその光景を見てクスクスと笑っている。助けて欲しいと視線を送るが、微笑みが返ってくるだけ。逆にイザベラがこちらに来たので、助けてくれるかと思ったが、そのままベッドに押し倒される。
「ちょっと。助けてよ」
「ああ。だからガキ共が起きるまでアタシが相手してやんよ」
そう言って服を脱ぐイザベラ。助け方が根本的に違う。暇をさせない様に助けてくれとは言っていないが、他のみんなもそれは良い考えだと言わんばかりに群がってくる。ルカが気を利かせて退室しているのが見えた。いつもゴメンな・・・。
これは明日の朝まで続くコースだなぁと観念して受け入れて数分後、起こさない様に頑張っていたが、みんなの声でクララが目を覚ましてしまった。
「・・・寝れない」
だが、アニーは気にする事なく眠りについていた。彼女はいつも序盤で寝ているから、みんなの嬌声はもはや子守歌ぐらいにしか感じていないのだろう。
そうしてクララも交えてオレ達は日が昇るまでベッドの上でプロレスする事になった。
――結局全然休めてなくない?




