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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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189.悪戯

 記者会見が終わったオレは、コマンダーと共にマキナの元へと向かった。完全に彼の事を忘れていたのをコマンダーに呆れられたが、生きていると聞いて安心した。機械兵の事を生きている、というのもおかしな話だが。


 コマンダーが『ラボ』と呼んでいる、主に兵器を製作している部屋に着くとマキナの姿があった。ヒーリングポッドと全く同じ機械兵用のリペアポッドの中で眠っている。正直死んでいる様にしか見えない。


「ホントに生きてんのか? コレ・・・」


『脳の活動は停止していないが、脳波がかなり弱くなっている。一時的に意識を取り戻してはいたが、一度眠りについてからは目覚める気配がない』


「・・・」


 ――まさか、お前が死ぬとはな・・・。


 一番死なないと思っていたしぶとそうな奴が最初に死ぬとは思ってもみなかった。元々脳以外は機械になっていたとはいえ、無理が祟ったのだろう。それに機械の体が脳にどれ程負荷が掛かっているのかも分からない。コマンダーが言うには問題ないらしいが、真実かどうかは定かではない。


 脳だけが生身のマキナ。一番重要なその器官が唯一の弱点でもある為、こうなってしまうのも頷ける。もし脳も機械、アダマンタイトであれば――


「なあコマンダー。人ひとりの記憶を全てアダマンタイトに移植するとしてら、どれくらいの量が必要になる?」


『妙な事を聞くな? おそらくだが、野球ボールよりも一回りか二回り程の大きさがあれば問題ないはずだ』


 ――意外と小さくて済むんだな。いや、それ程アダマンタイトが優秀なだけか。


 脳にダメージを負ってしまったのが原因であるなら、脳そのものを交換してしまえば良いのではないだろうかと考えたのだ。ただ、脳をアダマンタイトにしてしまった場合、果たしてそれはマキナ本人と呼べるのかという疑問もある。


 人の定義。過去にコマンダーと話した事があるが、オメガ因子を結合させたオレ達や機械の体のマキナ達は人呼べるのか。はたまた別の何かと呼ぶべきなのか。


 そこの線引きは難しく、人それぞれだ。オレは特に気にしないが、他の人達はどうだろうか?


 もし戦争が終結した時、オレ達は元の生活の戻れるのだろうか? 化け物と罵られる可能性だってある。その為にルシファーを神格化させる必要があるのだけれど。


 まあ、とにかく一つ確かな事は、マキナもオレと同じでそういうの気にしないタイプだって事だ。つまり脳みそがアダマンタイトになったところでゴチャゴチャ言わないだろう。


 オレの中に大量にあるアダマンタイトを一部取り出す。サイズは先程コマンダーが言っていた硬式の野球ボールおよそ1.5倍。圧縮した状態なのでそこそこ重たい。


「これをマキナの脳と交換してくれ」


『本人の許可は・・・取れそうにないな』


「文句を言ったらオレが介錯するから気にすんな」


 まあ、マキナの事なら真実を伝えても「マジかよ・・・。まあでも特に変わったところもなさそうだし、別にいいか」って言いそう。とにかく、アイツの事なら問題ないはずだ。もし問題が発生したら、オレが止めを刺す。


 冗談はさておき、アダマンタイトを受け取ったコマンダーはマキナの記憶を抽出しつつ、頭部を含めた新しいボディを製作する必要があると言う。


「新しいボディ・・・。あっ」


 と、そこでオレはある事を思いついた。正直自分でもバカだと思う。もうすぐで20歳になろうとしていたとしても、オレも男なのだ。悪戯が大好きで仕方がない。


「なあコマンダー。コイツの新しい体を――――――」


『・・・本気で言っているのか?』


「おう。面白そうだろ?」


『・・・確かに』


 珍しく悪ノリに便乗するコマンダーと共に、オレ達は新しいマキナの体を設計した。そうして出来上がった新しい体。それを見て腹の底から笑いが込み上げてくる。


 だが、その楽しみをオレとコマンダーとで独占するのはいかがなものだろうか。優しいオレは、マキナの親友とも呼べる存在、ルカを呼び出して楽しみを分かち合う事にした。


「どうしたんですかお兄さん? ラボに集合だなんて」


「おう! 来たかルカ!」


 部屋に着いたルカの肩を掴んで、リペアポッドの中に眠るマキナを見せる。


「・・・誰ですか?」


 だが、これがマキナだとはルカは認識していない。いや、出来るはずがない。


「ルカも知っているヤツさ」


 ネタバレをせず、オレはコマンダーに指示してリペアポッドを開け、マキナの体をテーブルの上に置き、近くにあった白い布をかける。リペアポッドから出た事で、再起動が実施されたのか、程無くしてマキナが目を覚ました。


「ッ・・・。ここは・・・?」


「よう。お目覚めか」


 寝ぼけているのか、辺りを見回すマキナに声を掛ける。アダマンタイトの脳は定着しており、違和感はないと思うが、意識はやや朦朧としている様だ。


「団長さんか・・・。俺は・・・ッ!? そうだ! あの悪魔野郎は!?」


「勝ったよ。だから安心しろ」


 マキナの中の一番新しい記憶はサタンに殺されそうになったのが最後なのだろう。だから慌てるのも無理はない。オレの言葉で勝利を知り、安堵したところで、マキナはある事に気が付いた。


「そうか・・・。ん? なんか・・・俺の声変じゃねぇか?」


「ぷっ。いや、変じゃないぞ、マキナ」


「え!? マキナなんですか!?」


 初めて名前を呼んだ事で、ルカが初めてそれがマキナだと理解した。そう言われるまで全く気が付かない程、マキナは変わってしまったのだ。


「いやいやいや! なんで声が女みたいになってんだよ!?」


 可愛らしい声で喚くマキナに、コマンダーがどこから持ってきたのか大きな鏡を差し出す。それを見た瞬間、マキナは口をあんぐりと開けて固まってしまった。


 その光景を目の当たりにし、オレの中のダムが決壊した。


「ダハハハハッ! やっと気付いたか! 今日からお前はマキナ『ちゃん』だ!」


 笑いが込み上げて止まらない中、マキナはワナワナと震えていた。怒り9割、恥ずかしさ1割といったところだろう。何故なら――


「おま、団長さんよぉ! なんで俺がこんな美少女になってんだよ!?」


 そう、今のマキナは身長140センチメートルの黒髪ロングの美少女になっているのだ。まだ幼さが残るあどけない顔立ち。美少女と美幼女の中間ぐらい。ちなみにの膨らみは付けなかった。自分で揉んだりしたらキモいし。


「か、可愛くていいじゃないか・・・。ぐふぅ」


 笑いを我慢しようとしたが、我慢出来なかった。そんなオレに対して掴み掛かってくるマキナ。ルカが止めるかとも思ったが、唖然としていて全く動かない。


「ふざ、ふざけんじゃねぇぞ! こんな体になるぐらいなら死んだ方がマシだ!」


「ちなみにアソコは付いてるぞ」


 そう言うと布の隙間から股間を確認するマキナ。それを失ったら可哀そうだというオレの気遣いに対して、更に怒りが増したらしい。近くにあった棒状の金属を振り回して襲い掛かってくる。


「誰がフタナリ美少女にしろって言ったんだよ!」


 当たっても痛くはないだろうが、一応すべて躱していると、コマンダーがポツリと呟いた。


『私は止めたんだが、彼が言う事を聞かなくてな』


「嘘つけ! お前だって楽しんでただろ! ふざけて女の体にしようって言ったのはオレだけど、幼女っぽくしようって言ったのはお前だからな!」


 そう、美少女になったのはコマンダーの発言のせいでもある。オレは同じ身長にしようと思っていたけど、コマンダーの発案によって路線変更したのだ。


「お前ら・・・ブッ殺すッ!」


 ここまで怒るマキナを今まで見た事があっただろうか。ルカと喧嘩している時もこんなに我を忘れる程暴れてはいなかった。正直悪かったとは思っている。同じ事をされたらオレだってキレる。けど後悔はしていない。


 怒り狂うマキナの視界の端で、ルカがフッと鼻で笑う。


「・・・今笑ったな?」


「いえ、笑っていません」


「・・・本当か?」


「えぇ。本当でプフッ」


 我慢出来なかったルカが吹き出してしまった。


「お前ぇええええええッ!」


 それからマキナが止まるまで3時間は掛かった。というより、コマンダーがイザベラを呼んでくれたおかげだが。彼女を見たマキナが子犬の様に怯えたのだ。さすがイザベラ。


「そうだ。伝え忘れてたけど脳みそダメになってたからアダマンタイトと交換したから」


「んなこたぁどうでもいんだよッ!」


 顔も体も美少女に、それもアソコ付きになってしまった事に比べれば、脳がアダマンタイトになってしまった事なんて些細な問題だろう。


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