186.神の体
翌朝。オレはミカエラと共にコマンダーのところへ行き、検査を受けていた。この体を調べたくて仕方がない様だ。ミカエラは1人にしておけないないので同伴している。
『ふむ・・・。オリハルコンがここまで安定した状態になるとは・・・』
手術室の寝台に寝かされたままスキャンされていると、コマンダーが興味深そうに呟く。昨日は掴みかかってきたくせに、今はで好奇心の方が上回っている。
「まあ、確かにオリハルコンって気体液体固体、全部の状態が同時に存在していたからな・・・」
思えばよく吸収できたなと感心する。正直二度とやりたくないけど。体を分子レベルに分解されるのはもうコリゴリだ。
『オリハルコンが固体の状態でアダマンタイトの壁を突き破って飛び出してくる事がある。そうして初めて固体の状態で安定したものが手に入るのだ。ガーディアンや刀がその例だな。』
だが――とコマンダーが続けて言う。
『君の場合は固体ではなく、そのままの状態で非常に安定している。いきなり爆発して太陽系が吹き飛ぶなんて事はないだろう』
「物騒な事言うなよ・・・」
離れて聞いていたミカエラがまた取り乱したらどうするんだ・・・。視界の端でチラッと見てみると、ちょっとだけソワソワしていた。招き寄せてから手を握ってあげるとすぐに落ち着いたが。
『更に新たな世界樹までその身に宿すとは・・・。君の体は我々の技術でも調べ上げる事は出来ない』
「おいおい、諦めないで頑張ってくれよ」
『無理だ。ユグドラシルですら観測できないというのに、新たな世界樹まで出てきたらお手上げだ。君の体は神の域に達していると言っても過言ではない』
「神、ねぇ・・・」
ユグドラシルにも神になれと言われたが、正直なったから何だと言うのだ。強大な力を手に入れたところで、出来る事は増えただけで特に変わった事なんてない。
――ただ、事象を観測するだけで理解し、識る事が出来る。
多分、ものの見方が変わっただけだろう。気にする程の事ではない。
「ケイジのあの姿、天使みたいで素敵だったわよ」
「ホント?」
ミカエラの笑顔が見たくて内に宿る力を解放すると、体から黄金の光が放たれる。その輝きは一瞬だったが、終わると同時にオレはルシファー形態へとなる。服装もユグドラシルがくれたものに勝手に変わってしまう。おそらく世界樹セフィロトとオリハルコンが反応しているのだろう。そして髪が黄金に輝き、力が漲ってくる。
「瞳も綺麗」
「目も違う色になってるの?」
「ええ。こっちも太陽みたいに金色になってるわ」
この姿で鏡を見ていないから知らなかった。他にも変わっているところがあるかもしれない。千里眼を使って自分の姿を見てみるが、髪と瞳以外に変わったとこは無い様だ。昨日気が付いた全身の毛がない事ぐらいか。
『全く、味方だから君みたいなビックリ人間がいてもいいが、オメガからしたらたまったものではないだろうな』
「何だよビックリ人間って・・・」
『人でありながら世界樹の加護を授かり、全てのオメガ因子に適性があり、心臓を貫かれても死なず、オメガになったと思えばオリハルコンとアダマンタイトを吸収して最も神に近い存在になった君をただの人間と言うのか?』
「・・・」
自分で聞いていても色々と属性がてんこ盛りになっている事に気付く。一つだけ確かな事は、オレが心臓を貫かれても死ななかったのは、生命を司る世界樹『セフィロト』を体内に宿していたからだ。あれのおかげでオレは命を繋ぎ止める事が出来た。そう考えるとほとんどはユグドラシルが原因だとも言えなくはない。
「何があっても私達はケイジと一緒よ」
「ありがとう、ミカエラ」
ホントミカエラは天使だ。オレには勿体ないぐらい――そのままキスしようとしたら、コマンダーが咳ばらいをされた。
『おっぱじめるつもりなら部屋でやりたまえ』
「おっぱじめるって・・・お前どんどん人間っぽい喋り方になってきたよな。昔は肯定否定ばっかり言ってたのに」
頭を左右に振ってやれやれとでも言いたげなコマンダーを無視して、オレ達は自室に戻った。結局今回の検査結果で分かった事といえば、オートマタの技術でも測定不可能だという事が判明しただけ。つまり収穫はない。
それに昨日は昨日で早く休もうと思っていたのに、意外と盛り上がって遅い時間まで起きていたから朝っぱらからおっぱじめるつもりはない。
部屋に戻ると、みんな検査結果を待っていたみたいだけど、内容を伝えたら仕方がないと納得していた。オリハルコンが安定していて安全だと分かっただけでも良しとしよう。
「それにしてもまたその状態になったのかい?」
イザベラに言われてルシファー形態のままだった事を思い出す。
「忘れてた。・・・あ、そうだ。この状態の事ルシファー形態って呼ぼうと思うんだけどどうかな?」
六枚の翼を出してアピールすると、イザベラがバカにした様にこめかみを押さえる。
「なんで男ってそういうの好きなんだか・・・」
呆れたのか、そう言われて魔剣ラグナロクを思い出す。今やハウスしているその名だが、ルシファー形態もいずれハウスしてしまうだろうか?
――・・・いや、しない。だってカッコいいから!
とは言えこの状態で居続けるのも眩しいだろうから元の姿に戻ろうとしたが、アニーに止められた。
「ケイちゃ~ん、今日こそその翼に包まって寝たいんだけどぉ」
どうやら昨日寝落ちしてしまい、その野望を叶えられなかった彼女。まだ諦めていない様だ。
「なら後で昼寝でもする?」
「する~!」
過去一大きな声を出したアニーにちょっと驚きつつ、今日はみんなでお昼寝する事に。昨日は激戦だったんだ。数日は安息日にしたって誰にも怒られないだろう。
そう心の中で決めていたら、後ろでクーナさんが首を傾げていた。
「ルシファーってなんだ?」




