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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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182.人型オメガ ルシファー

 みんなと悪魔オメガを挟む様にオレは地に舞い降りた。力を扱い切れていないという事に自分の体が自分の物ではない様な違和感を抱いていたが、その調整はまた後でしよう。


 オレの気配を感じ取ったのか、悪魔オメガがこちらに振り返る。そして遅れてみんなもこちらを向く。その顔には驚愕と安堵の表情、そして全員が涙を流していた。


『貴様は――貴様は一体何度殺せば死ぬのだ!?』


 ――うわっ。喋った。


 喋らないと思っていたものが言葉を発して驚かされるのはコマンダー以来だ。牙を剥き出しにして威嚇する悪魔オメガ。まあ、唇がないから元々牙は剥き出しだけど。


 それに先程まで戦っていた最中は一言も話さなかったのに。まあ、オメガが話せる様になろうがどうでもいいか。命乞いなんてされたら少しだけ罪悪感が芽生えるかもしれないが、それぐらいしか弊害はないはず。


「ケイジ・・・なの・・・? でも髪が・・・」


 ミカエラがオレの名前を呼び、こちらに歩みを始めようとしたところでコマンダーの腕によって制止される。コマンダーが守護者の体じゃなくていつもの体で戦場にいるのは初めて見た。今日は驚きの連発だな。


 あと髪ってどういう事かと思い、視線で前髪を確認すると、毛先が見える。ハゲている訳ではない様だが、問題はその毛先の色。黒から白へとなったオレの髪の毛が、今回は金色になっていた。金髪、というより黄金というか太陽の様な色合い。それに少し輝いている気がする。


『待て。アレはケイジではない』


「どういう事・・・?」


 ――どういう事?


 ミカエラと同じ聞き返し方とついしてしまいそうになる。アイツの目は節穴か? 髪の色が変わったぐらいで他人と見間違うだろうか?


『アレが内包しているエネルギー量はオリハルコンをも上回っている。あんな状態のまま自我を保っているとは考えられない』


「そんな・・・」


『銀河系をも消し去るだけの力を有したその存在を、我々の言葉では言い表せない。君達人間の言葉で言うと、アレは――神だ――』


 神・・・。かつてユグドラシルに言われた事を思い出す。汝、神となりて世界を救う光とならんという言葉。確かに銀河系を吹き飛ばす程の力を持っているとしたら、それは間違いなく破壊の神とも呼べる存在だろう。


『見た目もそれらしい様に着飾っているが、所詮はケイジの紛い物だ』


「ひでぇ言い草だな!?」


 ついツッコんでしまった。最初にかける言葉はもっと感動的なものになると思っていたのに。だが、そのおかげでみんなオレだと認識してくれたのか、喜びの表情を浮かべる。


 ――うん・・・なんか複雑。


「本当にケイジなの・・・?」


「・・・そうだよ」


 未だに警戒を解かない悪魔オメガを無視し、ミカエラの目の前にテレポートする。そして彼女の頬に触れる。


「大丈夫。ちゃんとオレだから」


 その言葉を聞いた彼女は安心したのか、力が抜けてその場で座り込んでしまった。オレは片膝をついて彼女の頭を撫でる。


 オレがオメガになってしまった時の姿を見てしまったミカエラからしたら、オレがこうして人間の姿に戻れた事に人一倍安心してしまうのも無理はない。


「待ってて。すぐに戻ってくるから」


「あ・・・ダメ・・・行かないで・・・」


「大丈夫」


 止めようとするミカエラの頭をポンポンと撫でてから、悪魔オメガに視線を向ける。背後から感じていたが、オレが再登場した事に危機感を覚え、不意打ちせずに左腕の再生に集中していたみたいだ。


「ケイジ・・・勝てそうか?」


「無理そうなら手伝ってやるさ」


 クーナさんとイザベラがそう言ってくれるが、今となってはあの悪魔オメガに負けるヴィジョンが浮かばない。


「余裕余裕。死の淵から蘇ったヤツは金髪に変身して強くなってインフレ起こすのって定番だから」


 多分、2人には通用しないネタだろう。ミカエラも分かってなさそう。アンジェとケイシーだけは頷いているけど。


「さてと、待たせたな」


『首を折り、その身をバラバラに引き裂いても尚生き返るとは・・・化け物め』


 ――コイツもコイツでひでぇ言い草だな!?


 コマンダーと気が合いそうだと皮肉を言いたくなるも、とっとと終わらせて帰りたいという気持ちが勝ってしまう。ユグドラシルに楽しめと言われたが、こんなヤツよりもみんなと楽しみたいのが正直なところだ。


『貴様が死ぬまで何度でも殺してやる。その後は貴様の後ろにいる連中を引き裂いてくれる』


「ここで死ぬのはお前の方だ。長かったこの戦いに終止符を打とう」


 ヘビのオメガから始まり、模倣オメガにワームオメガ、そしてこの悪魔オメガと新型オメガの連戦が漸く終わりを迎える。短い様で長かったこの戦いを終わらせる為、オレは有り余るこの力を振るう。


 先に動いたのはヤツだった。真っすぐにこちらに向かって飛び、再生した左腕を使って爪で顔面を狙ってくるが、その腕を掴む。オメガになる前は速すぎて見えなかったのに、今ではスロー再生しているかと疑う程遅い。そのままヤツの顔面に拳を叩き込む。


「さっきのお返しだッ!」


 一撃で百メートルは吹き飛ぶ。空中で静止するも、牙が折れ、痛々しい姿になっている。オレは十数発殴られたんだ。たった一発で済ませる気はない。


 空中にいる悪魔オメガに追撃をしようと、サイコキネシスで飛ぶが逃げられる。少しだけ向こうの方が速いらしく、追い付く事が出来ない。


「なんだ? 鬼ごっこがしたいのか?」


『黙れッ!』


 挑発に乗らない。どうやら再生するまでの時間稼ぎみたいだ。とは言え追い付けないからどうしたものか・・・。


『力を解放するのだ』


 ふと背後からユグドラシルの声が聞こえた。空で止まり、視線を動かして確認すると、すぐ隣にいた。


『君はまだごく一部の力しか使っていない』


「これでも全力じゃないのか・・・?」


『その身に宿る力を制御し、循環させるんだ』


 循環。確かに今はオリハルコンのエネルギーをアダマンタイトで押さえつけているだけの状態。それを循環させ、外部に放出させられるのなら力は一気に増すはず。ユグドラシルの助言に従い、オレの中にある荒れ狂うエネルギーを流れる様にまとめると、背中に熱を帯びるというかムズムズする。


『そのまま解放しろ』


 言われるがまま、その力を解放する。ムズムズが解消されたかと思えば、背中から翼が生えていた。右側には黄金の翼、そして左側には漆黒の翼。それも3枚ずつ。計6枚の翼がそこにはあった。こういう翼がいっぱいある天使の事を熾天使(してんし)とか大天使って言うんだっけ?


 オリハルコンとアダマンタイトの翼だというのはすぐに理解するが、触ってみるとフサフサしている。柔らかくて気持ちいい。それに神経が通っているのか触覚もある。


 この翼は空を飛ぶ為にあるのではなく、力の制御の為に存在してので羽ばたく必要はない。でも触られた感覚があるのは不思議だ。


 それとこの形態を命名するとしたら、天使の名前から取るべきだろうか? ミカエラとお揃いになるし、悪くはない考えだと思うが――三大天使から取ってラファエルはどうだろうか? 三大天使はミカエルとガブリエル、そしてラファエルの3柱からなっている。ミカエラの名前の由来だから覚えている。


 だが、ラファエルは癒しを司る天使だから合っていない気がする。それなら黄金と漆黒の翼にならって、堕天した天使のルシファーなら似合うのではないだろうか? 元々天使だったが、堕天使になるから漆黒の翼を持つ事に違和感はない。それに何よりカッコいい。


 自身の名付けに満足しつつ、未だに逃げ続けて遥か遠くにいる悪魔オメガとの鬼ごっこを再度開始すると、今度は一瞬で追いつく事が出来た。


「よう悪魔。天使様が月に代わってお仕置きに来たぜ?」


『ッ!? 貴様は本当に人間か!?』


 失礼なヤツだな。こちとら漆葉家の血統書付きだぞ。


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