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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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174.惨敗

 みんなと一緒なら負ける気がしない。例え守護者に勝つ様な相手であろうと。


「行こう。アイツを倒して家に帰るんだ!」


「「「了解ッ!」」」


 この悪魔オメガが他のオメガを生み出している親玉、元凶ではないが、最終決戦に臨む覚悟を誰もが持っていた。


 一番槍はオレ。アダマントソードを手に、大穴の淵に立って対峙していた悪魔オメガに斬りかかる。


 ドガッ――


 刹那、オレの体が後方に吹き飛ぶ。遅れて腹を殴られたと気付くが、一撃で内臓が破裂し、吐血しながら宙を舞う。いつの間にか剣はどこかへ落としてしまい、地面を何度もバウンドして減速したところで体勢を立て直す。


「ぐふっ」


 喉の奥から溢れ出る血を全て吐き出してから、視線を戦場に戻すと、続けざまに悪魔オメガに殴られたルカとマキナが視界に映る。マキナは一撃で胸部から下が吹き飛ばされ、ルカが拳を刀で辛うじて防ぐも、刀身が折れてそのまま胸部を殴られて宙を舞う。


「ルカッ!」


 気を失ったのか、受け身すらも取ろうとしない彼の落下地点に走り、その体を受け止める。浅いが、呼吸をしている事から即死は免れた様だ。マキナも頭部を破壊されなければ死なないはずだから生きているはず。


「ここで休んでてくれ」


 ルカをその場に寝かせ、即座に戦線に復帰したところで、次はメイシャが悪魔オメガの背後から奇襲を仕掛ける。同時にイザベラが側面から射撃を試みる。2方向からの同時攻撃。


 それに動じる事なく、イザベラのバトルライフルから放たれた弾丸を一歩下がって避け、背後からの奇襲も体を半回転させて裏拳を放つ。メイシャよりも遅れて動いたはずなのに、彼女よりも一瞬早く繰り出された攻撃。何とかメイシャもそれに反応して剣で防ぐが、先程のルカと同様アダマンタイトの刀身を軽々と真っ二つに折ってしまう。拳は止まらず、メイシャの左肩に直撃して骨をも粉砕してその細い体を吹き飛ばす。


「ぐっ!?」


「メイシャ!」


 そのまま彼女は数十メートル宙を舞った後地面を転がる。何とか起き上がろうとするが、複数の骨が折れたのか、まともに動けずにいた。相当苦しいとは思うが、命に別状はない様に見える。


 助けに行きたい気持ちを堪え、次の標的になったイザベラの元へ駆けつける。射撃による牽制をしているが、先程は避けたのに今度は避ける素振りすら見せず、体で弾丸を受け止めていた。


「チッ。これでも食らいな!」


 通常弾では効果がないと判断したのか、イザベラが弾丸を切り替えて氷結弾を発射する。絶対零度に近い液体が内包された弾丸が悪魔オメガに着弾し、その中身が振りかかる。体表は凍結はしたものの、こちらも特に気にも留めていない。凍結された体を動かして氷を砕いていく姿を見て、再びイザベラが舌打ちをする。


 一切止まらずにイザベラに接近し、彼女を蹴り飛ばそうとする悪魔オメガとの間に割り込む。ジャガーノートの分のアダマンタイトで造りだした盾でその一撃を防ぐが、案の定砕かれてそのまま腹部を蹴り上げられる。ボールの様に打ち上げられると同時に、背後にいたイザベラを巻き込んで重力に逆らって宙を舞う。


「ぐっ!」


「坊や!」


 あまりの衝撃に胃が破裂し、一時的に心臓が止まり、体の力が抜ける。喉の奥から込み上げてくる血液が気道を塞ぐ。すぐさまメジェドの因子の力、『環境適応』で息苦しさを解消するが、相変わらず体に力が入らない。


 そのままイザベラと共に落下し、地面に激突する。鈍い衝撃が全身を襲うが、思っていたよりも体へのダメージが少ない。


「っ・・・大丈夫、かい・・・坊や・・・?」


 どうやらイザベラがクッションになってくれたおかげでそうなったのだろうが、肝心の彼女が大怪我を追っていた。すぐに彼女から降り、その容態を確認する。空中でオレを抱き締め、そのまま自分の背から落ちたらしく、両肩が外れたのか骨折したのか、腕を全く動かせないでいる。


「大丈夫・・・。ゴメン、イザベラ・・・」


「謝るんじゃないよ・・・」


 それ以外にも落下の衝撃による内傷もあるらしく、悲痛の表情を浮かべている。彼女もヒーリングポッドにすぐ入れるべきだろうが、制止される。


「アタシはいいから・・・他の連中を助けてやんな・・・」


 その言葉を最後に、彼女は意識を手放す。ベヒーモスの因子を結合している彼女は、他の適合者や騎士団員よりも頑丈な体をしているというのに、こうもあっさりと気絶してしまうとは。それほど悪魔オメガの攻撃力が圧倒的という事だろう。


 この身をもってそれを体感しているが、ベリアルの比じゃない。オレも気を抜けばあっという間に気を失いそうだ。


 イザベラを寝かせて再度戦場に戻ろうとするも、再生の速度が落ちてきたのか、腹部の痛みが収まらない。それどころか体の力が抜けてその場に倒れ込みそうになる。


 ――まだ戦い始めて5分も経っていないんだぞ・・・?


 あっという間に限界が訪れた事に驚きを隠せない。いくら重症の怪我を再生したとはいえ、この程度でガス欠になるなんておかしい。


 そこでオレはコマンダーの、守護者の体から青い輝きが失われ、白くなっていた事を思い出した。死にかけていたからそうなったのではない。エネルギーを奪われたからそうなったのだ。


「アイツの能力は・・・相手の力を奪う力・・・」


 エナジードレインとでも言うべきその力で、守護者からオリハルコンの力を奪ったのだろう。だから倒されるまでに時間が掛かったのかもしれない。無傷で守護者を倒せる程強ければ、瞬殺していても不思議ではない。だが、守護者は弱ってはいるものの、死んではいなかった。殺す価値すらないと判断したのかもしれない。


 ヤツの能力がホントにそれだった場合、残ったオリハルコンを吸収されるのと同じくらい、クーナさんの魔力を奪われるのも非常にマズいはず。正規の手順ではないとはいえ、ユグドラシルの加護を得てしまったら今よりもヒドい状況になってしまう。


「それだけは何としてでも阻止しなければ」


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