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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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162.特殊型オメガ アダム

 彼を模したオメガ。そんなものが存在するということ自体が許せない。今すぐにでも消し去ろうと、サイコキネシスで捻り潰そうとするも、一瞬で姿が消える。どこに行ったのかと視線を横に向けた瞬間、それは目の前にいた。


「ッ!?」


 あまりに一瞬の出来事で反応が遅れてしまい、眼前に迫る白い剣のせいで死を間近に感じてしまう。


 ガキンッ――


 だが、横から生えてきた黒い剣によってそれは阻まれた。


「大丈夫ですかミカエラ!?」


「大丈夫よ。助かったわ」


 遅れてメイシャが助けてくれた事に気付く。そしてこのオメガはその戦闘力も彼を模しているのだという事にも理解した。故に接近戦では私はそれに勝てないだろう。それどころか自分が殺された事にも気が付けないかもしれない。


 メイシャが抑え様とするも、すぐに押し返されてしまう。その隙に、上空に避難する。剣の間合いの外に行かなければ、足を引っ張ってしまう。


 ゾクッ――


 だが、嫌な予感がして咄嗟に降下する。すると頭上を何かが通り過ぎた様に風が吹く。


 ――それも使えるのっ!?


 彼が得意とするサイコキネシスの使い方。私みたいに物を掴んで投げたり、クララちゃんみたいに空間を捻じ曲げるのとは全くの別物。それすらも模倣しているのだ。という事は、他のオメガ因子の能力も使えると考えられる。


 サイコキネシスの他に怪力等の肉体を強化する系の能力、再生、変身、アダマンタイトの操作、そしてテレポート。


 剣の間合いじゃなくてサイコキネシスの間合いの外に出なくては。それにテレポートによる急接近も警戒しなければならない。


 ――考えただけでも理不尽の塊みたいな力ばかりだ。


 味方なら心強いが、敵となったらこれほど厄介な存在だとは。敵として戦う事なんて一度も想定しなかった。するはずがなかった。


「このオメガはケイジを模倣しているわ。能力も全部あると思うから、最初から全力で戦って!」


『お兄さんの!?』


『オメガ風情がケイジ様を模倣するなど・・・万死に値します!』


『団長さんのパチもんかよ。こりゃ腕が鳴るな』


 本当に油断ならない相手だが、警戒して慎重になったのはルカ君だけの様だ。メイシャは殺意をむき出しにしているし、あのバカはやる気満々になっている。


『坊やの紛い物かい。オメガも天敵を真似するなんて、なりふり構ってられなくなった感じじゃないかい?』


「・・・そうね」


 天敵・・・。ガゼルが角をはやしたところでライオンに勝てる訳ではない。だから牙と爪を手に入れたと考えれば納得がいく。どれだけ新型オメガを生み出そうと、結果的に言えば全て目的を達成できずに討伐されているのだから。


 オリハルコンを手に入れる事もユグドラシルを穢す事も出来ず、地球を奪う事も未だに成し遂げられていないオメガが取った行動がケイジを模倣するという事であれば、イザベラの言う通りなりふり構っていられなくなったのだろう。


 だけど、今この瞬間に限っては最適解とも言えるだろう。ケイジがいない今、あのオメガを止める術は存在しないかもしれない。それ程に厄介な相手だ。


「3人は接近戦を仕掛けて。絶対に無理しないで」


 あれが本当に彼と同じ強さなら、苦戦を強いられるはず。3人だけでは抑えられない可能性もあるが、他に良い作戦は思いつかない。


 私の言葉と同時に3人がモドキオメガに斬りかかる。3方向からの同時攻撃。防ぐのは容易ではないはず。そのはずなのに、たったの一度の横薙ぎで対処されてしまう。メイシャはその場に伏せて躱すが、ルカ君とマキナがその一撃を防いだせいで後方に吹き飛ばされる。


「くっ!」

「重てぇな!」


 その膂力から放たれた一撃はやはり凄まじい威力を誇るが、避けられてしまっては意味がない。それどころか隙を晒してしまえば、暗殺者として育成されたメイシャが見逃すはずがない。


「はぁッ!」


 屈んだ状態から、懐に踏み込んで腹部を剣で突き刺す。流れる様に放ったメイシャの一撃が急所を捉えた。そう思ったが、彼女はすぐに剣を引き抜いて後退してしまった。モドキオメガの腹部から黒い血が流れるが、それはすぐに止まり、傷口が塞がってしまう。


「再生・・・」


 例え致命傷でも、一撃で命を刈り取らなければ無駄に終わる。ただ、それだけ大がかりの一撃を放つとなれば、当てたとしても相討ち、外したら確実に死が待っているだろう。あまりの理不尽さに無敵かと疑いたくなる。


 ルカ君とマキナが体勢を立て直し、背後から奇襲する。同時に挟撃しようとメイシャも正面から距離を詰めるのを見た私は、バスケットボールサイズの岩を2つサイコキネシスで持ち上げてモドキオメガの頭上から降らせる。


 先程同時攻撃を防がれたばかりだが、個別に攻撃したところで結果は見えている。かと言って同時に仕掛けても効果があるか分からないけれど。


 まずはメイシャの攻撃。モドキオメガの突きを横に躱し、腕を斬り付けるが怯みすらしない。ルカ君が刀で右の太ももを突き刺し、マキナが背中に向かってハルバードを振り下ろすが、一瞬で反転してそれを弾き返される。


 私もサイコキネシスで持ち上げている2つの岩を削り、円錐状のトゲに変形させて両肩目掛けて落下。回転させ、貫通力を上げたそれがモドキオメガの両肩に突き刺さる。体内に残る様に調整したおかげで、すぐには再生されないはず。


 声帯も口も無い為、叫び声をあげていないが、苦しんでいるのは確かだ。傷口から刺さった岩を排出しようと、再生した肉でゆっくりと押し出し、抜こうとしているのを見るに再生するまで数秒の猶予はありそうだ。


 私は肩に刺さっている岩をサイコキネシスで押し戻し、ルカ君とマキナが両腕を切断、メイシャが心臓があるであろう胸部を貫く。


「やった!?」


 流石にこれはただでは済まないだろうと思った矢先、モドキオメガが真正面にいるメイシャに頭突きをしようとする。瞬時に反応し、メイシャがそれを避けるが、その反撃からまだ瀕死ではない事が伺える。


 この好機を逃す訳にはいかないが、これ以上の追撃は危険かもしれないと躊躇してしまったその瞬間――


『油断するんじゃないよ』


 鈍い発砲音、そして爆発。煙が晴れると、モドキオメガの首から上が跡形もなく消し飛んでいた。後方にいた彼女がここまで移動し、正確に頭を撃ち抜いてくれたのだ。


「ナイス、イザベラ」


 彼女がいなければ、長期戦に持ち込まれていたかもしれない。ナイスタイミングだ。


 両腕と頭部を失い、胸を貫かれた状態では、先程の様な反撃は出来ないだろう。このまま絶命してくれればいいのだけれど・・・。


 あまりにも簡単に勝つ事が出来た、そう思ったけど簡単に事が進むはずがない。オメガはこの決戦に全力で挑んでいるのだから。


 人であれば確実に絶命しているであろう怪我を負ったモドキオメガの体が内側から膨れ上がり、段々と大きくなっていく。高さおよそ5メートル程のサイズ。切断したはずの傷口から頭部と腕が生え、巨人と化す。


 その姿は、つい先日大洪水を起こしたオメガ『ワタツミ』を倒そうとケイジが使っていたアダマンタイトの巨人になる力。あの時、ケイジが呟いていたその名前は――


「『ジャガーノート』・・・」


 白い巨人が今、私達の目の前に立ちはだかった。


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