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黎明を灯す光 ~神に至るまでの軌跡~  作者: Mr.Z


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155.災害級オメガ ヒュドラ

 疲弊した状態で30分以上走り、ようやく後方部隊の元へ辿り着く。


「クーナ殿ぉ! 助けてでありますぅ!」


 四つ首の黒い大蛇を背に、調和魔法で造られた外壁、その更に向こう側で精霊魔法を詠唱しているクーナ殿に助けを求める。すると外壁がうごめき、人が通れる程の穴が開いた。


「飛び込むッス!」


 ケイシーの掛け声と同時に、私達は全員その穴に飛び込んだ。直後、鈍い音が轟く。大蛇の突進を外壁が止めたのだろう。


 4人で重なる様に倒れ込んだ私達は、大蛇をせき止めた外壁に心から感謝する。


「た、助かった~・・・」


 生き延びたアニーが安堵の息を漏らす。確かに逃げていたこの30分は生きた心地がしなかった。一安心したとはいえ、まだ安全だとは言えない状況だ。


 ドゴォオオオオオオンッ――


 一度は突進を止めた外壁が、二度目の突進で破壊されてしまった。黒い大蛇がゆっくりと崩れた外壁を乗り越え、その巨躯と鋭い眼光で周囲のエサを威圧する。遅れて外壁の上で戦闘を繰り広げていたアールヴと一般兵の姿がない事に気付く。既に避難していた様だ。


「まずいッス!」


「即時撤退」


 すぐにでもその場を離れなければ。私達はが立ち上がって逃げようとしたその時、光で出来た魔法陣が宙に現れる。


 アールヴの切り札。『戦術級超位魔法』、それは圧倒的な攻撃力を誇るそれは、超常的な現象を巻き起こす。敵を穿つ光の槍、敵を斬り裂く風の刃、敵を焼き尽くす火の渦、エトセトラ。実際に目にした事はなく、情報だけでしか知らないとはいえ、あの大蛇にも有効だろう。多分・・・。


 改めてその大きさを確認すると、心配になってきた。頭のてっぺんまでの高さはおよそ30メートル。ただ、頭の先から尻尾の先までの長さはおよそ300メートルはある。その内、首の長さは100メートル程。全身が真っ黒なその見た目は、不気味な雰囲気を放っている。


 それほど巨大なヘビ型オメガに対して、戦術級超位魔法が通用するのを祈るばかり。


「戦術級超位魔法、発動ッ!」


 クーナ殿を含むアールヴ後方部隊の精霊魔法。宙にある魔法陣から数え切れない程の光の槍が放たれ、ヘビ型オメガを串刺しにする。元がハリネズミ型のオメガだと疑いたくなるほど好き勝手に貫かれる事となったヘビ型オメガ。


「これで生き残るのは不可能のはず・・・」


 ――もし、これでも死なないのなら、このオメガを倒す術はないだろう。


 貫かれた場所がない程の攻撃。普通の生物であれば、絶対に命を失うであろう怪我。例え再生の能力を持つアンラ・マンユですらただでは済まないだろう。


 そのはず。そのはずなのに――


「あれだけ貫かれても生きてるなんて、あれって無敵なの~?」


「ま、まだまだ元気そうッスね・・・」


 未だに尻尾をバタつかせて絶命する気配を感じさせない生命力。例え肉が引き裂かれ、千切れようとも、ものともせずに光の槍の拘束から逃れようと暴れ続ける。


 そしてその黒い体からどれだけ肉が千切れようと気にも留めず、大地を青い血で汚染しながら自由を得る大蛇。ぼろ布の様にズタズタになったはずの体は、時間経過で元の姿に戻っていく。ただ痛みは感じていた様で、怒りに満ちた目でアールヴを睨みつける。


 どうやらある程度の知性を持ち合わせており、攻撃をしてきたアールヴを危険だと認識したのだろう。私達は逃げ惑うだけの雑魚と思われた様で、無視してアールヴに向かって一直線に駆けた。


 アンラ・マンユをも超える圧倒的な再生力。それに絶対的な自信を持ち合わせているのか、アールヴが調和魔法で食い止めようと攻撃するが、一切避けようとも防ごうともしない。止まるどころか減速すらしないその突進


 ――このままではアールヴが、クーナ殿がミンチになってしまうであります・・・!


「ヴァルキリー部隊! 総攻撃! アールヴを守るであります!」


 どう攻撃したらいいかも、何が有効化も分からない。でも、退く訳にはいかない。目の前にはユグドラシルだってあるのだ。守らなければならない、それにあれをどうにかできるのは世界樹だけかもしれない。絶対に守り抜かなければ。


 私達を無視して進行する大蛇の背に飛び乗ると、みんなも続いてその巨大な背中に乗る。トラックよりも太い胴体。巨大なその体を走り、一先ず頭部を目指す。


「一刀両断」


 メアリーがその背中に剣を突き立てながら走り、斬り裂いていく。青い血が流れ落ちるも、すぐに再生してしまう。ダメージは与えられないが、痛みは与えた様で、1つの首が身を翻して背中の上にいる私達を噛みつこうと首を伸ばしてくる。


「ひっ!?」


 苦手なヘビの頭が急に近付いてきた事に情けない声を上げてしまうが、何とかその牙から逃れる。3人も避けていたが、アニーとメアリーだけ反撃していた。


 アニーは回避と同時にその鋭い眼光を放つ目に射撃し、メアリーは下顎を斬り裂き、流れる様に首を切り落とそうとするも、刀身の短さから切断には至らない。首の半分、いや3分の1程を斬り裂いたが、今回もあっという間に再生する。目も同様だ。


 ただその一撃が引き金となったのか、全ての首がこちらを向く。それも明らかに起こった表情で。痛かったから怒っているのかと思うが、おそらくそうじゃない。では何故かと考える――


「目を潰されたから? 肉を斬られたから? いや、他の理由が・・・もしかして首、でありますか?」


 ――首を切断されるのを嫌がった?


 同じ再生の能力を持つアンラ・マンユは頭部を破壊したら再生の力を失う。おそらく『核』の様な何かがあるのだろう。そして、この大蛇も同じように首を落としたら再生の能力を失うのではないだろうかと推測する。


 頭部を破壊するのも、首を損傷させるのではなく、完全に斬り落とす必要があるだろう。であれば先程の精霊魔法によるダメージを再生出来たのも納得できる。


 ただ、噛み付いたり毒ガスを吐いたりする以上、首を攻撃するのは容易ではない。おそらく、非常に厳しい戦いになるだろう。


 ――例えそうだとしても、絶対に倒さなければならない。


「首ッ! 首を斬り落とすであります!」


 アールヴにも聞こえる様に、私は叫ぶ。一人だけではどうにも出来ない。ヴァルキリー部隊全員でも。でも、アールヴを含めた全員で、みんなで協力すれば、きっと――


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