141.大災害
浮遊しているマンタオメガ。ヒレの先から先までの大きさはおよそ300メートル程だろうか。一体それだけ大きな体をどうやって怪獣の中に隠していたのかは不明だ。例えるならゴ〇ラの中からモ〇ラが出てきた様なものだ。
怪獣と言うサナギから羽化したという可能性もあるが、真相はどうでもいい。
あのオメガの対抗手段を模索する為、とりあえずその防御力を測る事にした。
「重装兵、一度射撃してみてくれ」
オレの命令に従い、イザベラ達がマンタオメガに向かって射撃する。直径20ミリメートルを超える弾丸が、高速で回転しながらマンタオメガに向かって飛んでいく。そのまま体表を貫いて多少なりともダメージを与えられる事を祈るが、現実は無常だった。
弾丸は一発もマンタオメガに当たる事はなかった。飛来するそれを、滞空している水の玉が阻止したのだ。それも弾丸を水の塊を高速で射出して弾く様にして。
「弾を、撃ち返した・・・?」
弾丸を水の弾丸で弾き、防ぐ。どうやらあのオメガは飛来物を迎撃する力を有している。つまり、銃もミサイルも効かないという事だ。
遠距離攻撃を無効化し、自身は空に飛んで近距離攻撃が届かない位置で一方的に攻撃し続ける。それがあのオメガの戦い方なのだろう。水が力の根源になっている為、水辺でしかその本領を発揮できないと考えられる。最悪な事に、今は大量の水がある海上では無敵という事だ。
銃が効かないのであれば仕方がない。テレポートして背中に乗り、攻撃しようと考えた次の瞬間、いくつもあった巨大な水の玉が、同時に落下した。海に落ち、未だかつてない程の巨大な津波が発生する。およそ30メートル程の高さの波が押し寄せてくる光景。それは、恐怖心が消えていたはずのオレですら恐ろしいと感じる程だ。
ミカエラがそれを迎撃しようとサイコキネシスを展開するが、人が防げる規模ではない。呆気なく押し潰されて海の藻屑になるのは目に見えている。
「転送ぉっ! 全員逃げるんだっ!」
咄嗟に転送装置を起動し、ミカエラの手を引いて闘争する。続いて騎士団と機械兵全員でその場を離脱した。ソルジャーが取り残されてしまったが、機動力が高くないそれを待っていてはこちらの命が危うい状況になってしまう。
命からがら母艦に退避したものの、再び戦場に向かって戦う気力は誰にもなかった。
「なんなんだあのオメガは・・・」
クーナさんですら絶望した表情を浮かべている。当然だ。あれだけの規模の攻撃を出来るオメガなんて、今まで存在しなかった。
「レベル、いや次元が違ぇ・・・」
そしてマキナも唇を噛み締めている。災害を引き起こすオメガ。昨日まで戦っていたオメガがお遊びだったと感じてしまう程の差。オレ達人間が太刀打ちする事すら叶わない存在。
「災害を引き起こせるオメガ・・・。そんなのまるで、神じゃない」
ミカエラが漏らしたその単語。認めたくはないが、人間がどうこうできるレベルではない。ふと、オメガを崇める頭のイカれた集団がいるが、もしかしたらそれが間違っていなかったのかもしれないと思ってしまった。
「とりあえずコマンダーのところに行こう」
どんなに敵が強くても、弱気になっている場合ではない。あれを倒さなければ、アメリカが水没してしまう。何としてでも、勝たなければならない。人類の存亡、地球の未来が掛かっているのだから。
騎士団とマキナとで司令室に向かうと、戦況を確認しているコマンダーの姿が。
『見ろ』
複数のモニターで戦況や艦内の情報を得る事が出来る司令室。その一つに、水没したマイアミの光景が映っていた。被害に遭ったのはマイアミだけではない。周囲にある街も全て水に飲み込まれていたのだ。
被害、いや被災に遭った地域が広すぎるあまり、離れていた為避難していなかった住民がホテルやビルといった高層の建築物の屋上に逃げていた。
「こんなに被害が・・・」
『避難勧告が出されていなかったマイアミ以外で、多くの死者が出ている』
アレは、あまりにも一瞬の出来事だった。そのせいで逃げる暇なんて一切なかっただろう。一体、どれだけの被害が出たのかは、想像したくもなかった。それもたった一度の攻撃で、だ。
「・・・あのオメガをどうにかしないと」
もっと被害が出てしまう前に、アレを倒す必要がある。その方法も分からないが、クヨクヨしている場合ではない。
だが、誰もアレに立ち向かう気力はなかった。勝てるビジョンが思い浮かばないからだ。誰もが顔を下に向けている中、コマンダーが沈黙を破った。
『倒す方法なら、ある』
希望の光が差し込む。コマンダーには、この絶望的な状況をひっくり返るとっておきがあるのだろう。
「あるならもっと早く言ってくれよ」
『あるが、なるべく使いたくないのが本音だ』
「守護者か?」
オリハルコンを守るオートマタの最強の兵士『守護者』。ただ、それは気軽に動かせるものではないはずだ。
『違う。「ダモクレスの剣」だ』




