134.双子の想い
クララに手を引かれるまま、彼女の部屋へと辿り着く。そこにはもちろん、ルカもいる。
「お兄さん? どうしたんですか?」
突然のオレの来訪に首を傾げる。首を傾げたいのはオレもだ。一体クララは何をするつもりなのだろうか?
疑問を抱いていると、クララにベッドに乗る様促される。それに従ってベッドに腰掛けると、クララに押し倒される。
「ちょっとクララ! 何してるの!?」
それを見たルカがクララを止めようとするも、ベッドの周りの空間が黒く歪む。そのせいでルカが歩みを止めてしまった。
「クララ!?」
今までのクララであればこんな芸当出来なかっただろう。
「いつの間にこんな器用な事出来るようになったんだ?」
「兄に守られてばかりいられない。クララも強くなる。兄を守れるぐらい」
気付かない内に、クララも大きくなっていたのだろう。いつまでも守られてばかりの少女の姿はそこにはいない。
オレの上にまたがり、ブカブカの軍服を脱いで、キャミソールとパンツの下着姿を晒す。露わになったその体は、16歳になっても、まだまだ未熟な体だ。元々栄養失調で成長が遅れていた彼女。見た目が子供なだけで、心は成長している。
――オレが気が付いていなかったんじゃない。見ようとしていなかったんじゃないか?
大胆な行動をとっているが、ホントは震えているクララの頬に触れる。緊張、そして不安。オレに拒絶されるんじゃないかと、怖がっているんだ。
「大丈夫だよクララ」
勇気を出した彼女に、敬意を払おう。そのまま顔を寄せて唇を重ねる。
「んっ!? ・・・兄?」
が、驚いたのか一瞬で離れてしまった。
「嫌だったか?」
「ううん。嬉しい」
嬉しいという感情を超え、歓喜しているのか、涙を流しながら笑みを浮かべる。そして再びその小さな唇を覆いつくすと、ベッドを囲っていたクララのサイコキネシスが消滅する。
そしてこちらを静かに見ているルカの姿が目に入るも、クララが両手でオレの顔を挟んで無理矢理自分の方へ向かせる。
「今はクララだけ見て」
その言葉の真意は、ルカだけを意味している訳ではないのをすぐに理解した。オレがミカエラやクーナさん、イザベラとメイシャを愛しているのを知っている。けど、今この瞬間だけは、その全ての愛を自分に向けて欲しいと言っているのだ。
一番年下の幼いと思っていたクララ。それも初めての恋愛であろう彼女に、こんな事を言わせてしまうなんて。
――この大バカ野郎が。
沙希みたいに妹扱いしていたのが間違いだった。行為を向けられていたのはずっと前から気付いていた。だからこそ、ちゃんと一人の女性として扱うべきだった。
人形みたいに整った綺麗な顔立ち。サファイアの如く青く透き通った瞳。華奢な体。その全てを、オレの手で穢していく。隅々まで。そして深い奥の奥まで・・・。
それにどれだけ時間をかけたのかは分からない。あまり時間を掛けたら体に負担をかけてしまう。クララはあまり体力がある方ではないから。
息を切らして、ベッドに横たわるクララの頭を撫でる。
「お疲れ様」
「はぁはぁ・・・。兄・・・容赦なさすぎ・・・」
「ご、ごめん」
「ん。チューしてくれたら許す」
条件付きで謝罪を受け入れるというので、許しを乞う為にその小さな唇を塞ぐ。
「んっ」
今日何回目になるかも分からないそれを繰り返していると、ふとルカの事を思い出す。彼の部屋でもあるこの場所を占領してしまったのは申し訳ない。謝ろうとその姿を探すと、部屋の隅で膝を抱えて座っていた。それも涙と鼻水で顔がグチャグチャになっていた。
「ル、ルカ?」
実は潔癖症で、ベッドを汚されたのに怒り狂っているのだろうか?
オレに呼ばれた彼が、立ち上がってゆっくりとこちらに寄ってくる。
「グスッ。お、お兄さん・・・」
「どうしたんだ・・・?」
女性に刺されてもおかしくない生活を送っているが、もしかしたらこのままルカに刺さてしまうかもしれない。そう思ったが、彼はオレに抱き着いてくる。
オレは裸で汗だくだというのに、嫌じゃないのだろうか・・・。
そのままオレの胸に顔を埋めると、ずっと謝り続けた。
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・」
何に対する謝罪かは分からない。だけど、こんなルカを見るのは初めてだ。拒絶してはいけないと、直感で悟る。ここで彼を拒めば、絶対に取り返しのつかない事になるだろう。
ずっと彼の背中を擦って落ち着くのを待っていると、クララはいつの間にか寝息をたてていた。多分、ルカがこうなっている原因を知っているが故に、興味はなかったのだろう。という事は、ルカにとっては繊細な話だけど、クララにとってはどうでもいい話なのだろう。
それが何なのかは検討もつかないけど。
「取り乱してごめんなさい」
落ち着いたルカは、最期に一度謝ってから離れた。
「一体どうしたんだ?」
「お兄さん、僕・・・本当は・・・」
何かを伝えようとするも、言い淀む。恐れているからだろう。一体何を? いや、それは今から分かる事だ。その為にも彼の言葉をひたすら待ち続ける。
「本当はお兄さんの事・・・好き、なんです」
・・・ん? 何かを告白しようとしているのは分かっていたけど、まさか愛の告白だとは。ちょっと予想外。いや、かなり予想外だ。
「男同士なのに・・・気持ち悪いですよね・・・」
「・・・いや、よく言ってくれた。今まで辛かっただろ」
繊細な問題だ。誰にも相談できずにずっと心の内に抱えていたはず。何年も・・・。目の前でオレがクララを抱いた事がショックで、打ち明けずにはいられなかったのだろう。
正直、オレにそっちの気は全くない。一方で、ルカの事は受け入れてあげたい気持ちもある。どちらを優先するべきか・・・。
ふとルカが髪を伸ばしていた事に気付く。もしかして、オレに受け入られる様、少しでも女の子っぽくなる為にそうしていたのではないだろうか?
――ホント、オレって鈍いんだな・・・。
前にルカとクララと一緒に風呂に入った時、クララがルカが興奮していたと言っていた。あの時は冗談だと思っていたが、事実だったのだ。
最近、思い知らされてばかりだ。大切な人達なのに、何も分かっていない。オレは今まで、一体何を見ていたんだろうか・・・。
ルカの事を知らずにいた。けど、知れば知る程愛おしくなってしまう。彼はオレを選んでくれたんだ。オレなんかを。今さら遅いと言われても文句は言えない。
「ルカ、おいで」
でも、それでも――
「お兄さん・・・」
「オレで良ければ、ずっとそばにいるから」
――その想いに応えてあげたい。




