133.嫉妬
戦乙女部隊と過ごした夜。姉でもあり、妹でもあり、友人の様な関係。そんなアンジェを抱くのは、正直気が引ける部分もあったが、抱き締めたら、すぐに彼女が女の子である事を感じた。話を聞いてみたら、ベルリンで会った時からずっとオレの事が好きだったらしい。
それを聞いた時、申し訳ない気持ちになってしまった。彼女の心の内を知らず、オレはずっと異性として一度も扱わなかったからだ。
「ごめんな」
日が昇り、明るくなってもまだ眠っている彼女の額にキスすると、楽しい夢でも見ているのか、笑顔でムニャムニャと支離滅裂な寝言を言っていた。改めて見ると、こんなにも可愛らしいのに。まあ、言葉遣いは堅苦しいというか変だけど。
それと戦乙女部隊に所属している他の3人。アニーとケイシー、そしてメアリーの相手もする事になったのは想定外過ぎた。理由は知らないけど、メアリーがオレの事を神の様に崇めているのは気付いていた。だが、他の2人に関しては、部下兼友達の友達みたいだと思っていたのに。
オレの事を好きだという衝撃の事実。更にミカエラが気が付いていたのにも驚きだ。
――うーん・・・。オレってそんなに鈍いか・・・?
ミカエラはどストレートだったから気が付けたが、クーナさんやイザベラはオレを男としてではなく、弟の様な扱いを受けていたからてっきり人や家族として好きなのかなと思っていた。でも蓋を開けてみたら全然違くて・・・。
メイシャは妹を助けた時から好感度マックスなのは分かったけど、恩を返すのに体を要求する真似なんて最低な行為だ。だから彼女には手を出さなかったし、熱が冷めるその時まで待とうと思っていた。が、イザベラの手によってオレの覚悟は無下にされた。まあ、今となっては感謝しているけど。
そして戦乙女部隊。それも4人全員。基本的にアンジェを通して指示を出したり、連絡していたりしていたので、3人とは接点自体少なかった。だというのに、今ではオレのベッドの上で眠っている。
――人生、どうなるか分からないものだな。
4人を起こさない様にベッドから降りて浴室でシャワーを浴びていると、ふと誰かが入ってきた。
「ケイジ殿・・・」
アンジェだ。昨夜からオレの呼び方を騎士団長から名前に変えたのは、まあ、一線を越えたからだ。
「アンジェ」
恥ずかしながらオレの元に来た彼女を抱き締めながらキスする。
「んっ・・・。ケイジ殿・・・大好きであります・・・」
昨日抱いてから随分可愛らしくなったものだ。
そのまま2人でシャワーを浴びながら、朝っぱらからいたしてしまった。たまにはこんな生活も悪くない。いや、毎日だけどさ。それも代わる代わる別の人と。世の女性を敵に回しかねない生活だ。
――まあ、やめる気はないんだけどさ。
実は意外とスタイルの良いアンジェをたっぷりと堪能し、オレ達は浴室を後にした。部屋に戻ると、ミカエラがいた。クーナさんとイザベラ、そしてメイシャも。
戦乙女部隊のアニー達と何か話をしている様だ。ただ、何故かミカエラの顔色は良いが、何故かイザベラが疲れ切った顔をしていた。そしてオレの顔を見るとすぐに駆け寄ってくる。
「おい。イザベラの嬢ちゃんが女もイケるクチだなんて聞いてないぞ」
どうやら昨夜の標的はイザベラになってしまったらしい。血走った眼で訴えかけてくるが、クーナさんもかつて犠牲になっている。誰もが通る道だ、諦めてくれ。
昨夜に一体何をされたのか、無意識に想像してしまう。が、顔に出ていたらしくイザベラに頭をはたかれる。
「アタシがどんだけ大変な目に遭ったと思ってるんだ? サイコキネシスで拘束されて無理矢理されたんだぞ?」
「まあ、オレも時々されてるし」
「そんな訳・・・いや、されてるな。大変だったね坊や」
今までオレがナニをされてきたのか思い出したイザベラに同情、いや共感されてしまう。その中にはオレ自身思い出したくもない内容のものも多い。きっとイザベラもだろう。抱き締められて頭を撫でてくるが、ツヤツヤした顔でこちらを微笑んでいるミカエラと目が合う。
「ケイジも昨日は上手くいったみたいね」
何故かベッドの上で正座しているアニー達。正妻としての威厳をミカエラから感じているのかもしれない。いや、まだ正妻じゃないけどさ。
「おかげさまで、ね」
「えへへ」
その言葉でアンジェとアニー達が昨夜の事を思い出したのかニヤニヤしている。幸せそうで何より。
「でもミカエラ」
「ん?」
イザベラの腕から逃れ、ミカエラの耳元で囁く。
「なんでアンジェだけじゃなくてアニー達も?」
「仲間はずれなんて可哀そうじゃない」
「・・・え? それだけ?」
思いもよらない回答に拍子抜けしてしまう。いや、優しいのはいい事だとは思うけどさ。そんな理由で女の子を増やしていけば、とんでもない人数になってしまう。今ですらもう8人だ。
自分がこんなハーレムを築くなんて想像もしていなかったし、幸せ過ぎてこれが夢なのではと疑ってしまう。
ミカエラの珍回答に唖然としていると、オレの部屋のドアが開く。誰が訪れてきたのかと思えば、クララだった。頬を膨らませ、眉間に皺を寄せて、怒っていますという表情をしている。いや、怒っているんだけどさ。それはもうプンプンだ。
「アンジェに先を越されるなんて・・・」
「えっと・・・ごめんであります。クララちゃん」
「くっ」
アンジェの謝罪が逆にクララの心を抉ったらしく、苦虫を噛み潰したような顔をする。クララのそんな顔を見るのは初めてだ。その顔のままオレに視線を向けてきた。クチャッとしたお顔も可愛い。
「兄は私の事嫌い?」
「そんな事ないよ。クララの事だって大切に思ってる」
「じゃあ来て」
クララがオレの手を引いたと思ったら、そのまま部屋の外に引っ張られる。どうしたらいいか分からず、ミカエラに視線を向けると笑顔で手を振っていた。
デジャヴュ!




