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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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011.新型種

 転がってきた橘の頭部と目が合った瞬間、頭の中でマックスが死んだ時の事がフラッシュバックする。あの時と全く同じ状況だったからだ。どうして、オレのそばにいる人間はみんな死んでしまうのだろう――。


叫びながらライフルの引き金を指を掛ける。


「うぉおおおおおおっ!」


 銃弾をばら撒き、露わになっている脳みそを吹き飛ばそうとするも、見えない壁に阻まれ、弾丸が空中で静止する。オレの雄たけびと銃声によって、敵がまだいる事に気づいた隊員達が戻ってくる。


「な、なんだあの化け物!?」


 そして脳みその化け物を視認すると、すぐに銃を構えて射撃を始める。数十人以上で乱射し、マガジンの中身を全て空にするも、一発も化け物に弾丸が届く事はなかった。


 全ての弾丸が空中で止められる。優に1000発を超える弾丸が、空中に留まりながらゆっくりと弾頭がこちらを向く。


 まさか――嫌な予感がしたオレは、咄嗟にその場に伏せる。刹那、化け物に防がれた弾丸が全て放射状に放たれる。銃口から放たれた時と同じような速度で。


「「ぐぁあああああっ!」」


 後方から悲鳴が響く。オレは伏せていたおかげでなんとか怪我をせずに済んだ。 だが後方を確認すると、数十人の隊員が弾丸に貫かれていた。


『全隊員に告げるっ! 戦闘はまだ終わっていない! すぐに戦場に戻り交戦を始めよ!』


 どの中隊長の言葉か分からないが、通信機から交戦の指示が伝わる。交戦しろと言われても、銃は全く効かないのにどうしろというのだ。ならパルスグレネードで――と思ったものの前回の戦闘で役に立たなかった経験から、今回は持って来なかった事を思い出す。


「クソッ」


 悪態をつき、オレは化け物からの攻撃を警戒しながら近くで倒れている隊員のポーチからパルスグレネードを拝借する。ただパルスグレネードを使ってもあの化け物を倒せる可能性は低いだろう。そこで、奴の力がどのようなものなのか考える。


 あいつの力は、おそらくだが目に見えないバリアではなく、超能力の念動力、つまり『サイコキネシス』である可能性が高いのではないだろうか。


 そう判断した理由は、いくつかある。まずは弾丸が空中で静止していた事。もしただのバリアならば、弾丸は弾かれるかその場に落ちるはずだ。


 次に弾丸を飛ばされた事。弾丸が弾かれて跳ね返されるなら分かるが、一定時間静止した後にこちらに向かって飛ばしてきたのだ。そういった類の力である可能性が高い。


 最後に、橘を殺したあの力。空間を捻じ曲げ、まるで小さなブラックホールの様なものを生み出したと錯覚してしまう力。おそらくあれがサイコキネシスによる攻撃なのだろう。


 遠距離攻撃を防ぎ、そのまま相手に返す鉄壁の防御。そして空間を歪じ曲げる圧倒的な攻撃力。


 そんな化け物にはたして隙があるのだろうか――確信は持てなかったが、オレはある事を試してみる事にした。


 パルスグレネードの中心にあるスイッチを押して起動し、化け物に向かって弧を描く様に山なりに投げる。そしてすぐさまライフルによる射撃も行う。


 先程と同じ様に弾丸が空中で静止するが、射撃は止めない。その直後に化け物の元へパルスグレネードが届く。それも弾丸と同様、空中で静止する。


 ただパルスグレネードを投げただけならば、すぐにこちらに向かって飛ばしてきたかもしれないが、今回は射撃を止める事なく続ける。先ほど射撃が終わった直後に、お返しと言わんばかり止めた弾丸を飛ばしてきた。


 つまりグレネードが起爆するその時まで、射撃の手を止めなければ――


 バシュッと音が鳴り、奴が空中で止めていたパルスグレネードが起爆し、周囲に超高電流が瞬間的に流れる。すると、奴の周囲で静止していた弾丸が重力に従って地面に落ち、カランカランと音を立てる。


 今だっ!


 再度雄たけびを上げながらありったけの弾丸を奴にぶち込む。今回の射撃は奴に防がれる事なく、その不気味な体を貫いていく。


「死ねぇえっ!」


 先ほどまで、ただ歳相応に振舞っていた彼女の仇を討つ為、奴の脳みそを、目玉を、ミミズの様な体に無数の風穴を開ける。弾がなくなり、マガジンを交換して打ち続ける。全てのマガジンが無くなるまで何度も。


 何度も何度も何度も何度も――


 全ての弾を撃ち尽くした後も、引き金を引く。ただ、カチッカチッという音が静寂の戦場に響く。すると後ろから腕が伸びてきて、誰かが静かにオレを抱き締める。


「ケイジ・・・もういい。もう終わったんだ」


 花の蜜の様な甘い香りが鼻腔をくすぐる。すぐにそれがクーナさんだと気が付く。


 オレは銃を手放し、空を見上げる。先程まで美しいと思えた自然豊かなアールヴヘイムの青い空は、モノクロに見えた。叫びすぎたのか、喉が渇く。


 何故か震えが止まらない手で、オレを抱き締めるクーナさんの腕に触れ、その温もりを確かめる。


 これが・・・今までクーナさんが戦ってきた戦場なのか――


 彼女もオレと同じように、誰かの死を経験してきたのだろうか。そう思うと、尚更胸が苦しくなった。

今日はもう、このまま泥のように眠りにつきたいと思った矢先、上空に浮遊している脳みそが目に映った。


 ああ、まだ戦いは終わらないのか――


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