126.妖刀一閃
今回のオメガは斥候型のトウテツが5千、バステトが3千、メジェドが2千、戦車型のヴォーティガンが1、特攻型のオケアノスが30、そしてベリアルが1だ。
数は多くないが、ヴォーティガンとベリアルが厄介だ。どうしてヴォーティガンは水辺を好むのかという疑問はあるが、今となっては楽に勝てる相手だ。イザベラ一人でなんとか出来る。
ベリアルに関しても、オリハルコンで出来た刀さえあれば問題ない。ヤツのアダマンタイトを吸収させ、増殖させた上で討伐すればコマンダーも喜ぶ事だろう。
地上に姿を見せているトウテツとバステトは弾丸の雨に貫かれ、仲間の死体を盾にして何とか正面の部隊に接近しようと試みる。だが、今回は正面だけではなく、側面にも部隊を展開しているのだ。その一連の行為は意味を成さない。
「正面の主力部隊は引き続き撃ち続けろ! 側面に展開した遊撃部隊も射撃開始ッ! 一匹たりともヤツらを逃がすな」
通信で遊撃部隊にも命令を伝え、射撃が始まる。トウテツとバステトは何もできずにハチの巣にされているが、メジェドの姿が未だに見えない。おそらく海中に身を潜めているのだろうが、このまま姿を見せない様だったらミカエラに海中でパルスグレネードを起爆してもらおう。
そして地上に姿を見せていたオメガを蹴散らしている最中に、オケアノスが海面から姿を見せるが、すぐにその柔らかい頭部を正面に構えている主力部隊に撃ち抜かれて絶命する。
「イザベラッ!」
『任せな!』
青い体が赤く染まり、自爆しようとするも、イザベラがバトルライフルの弾丸を切り替え、凍結弾を発射して自爆を阻止。カチカチに凍ったオケアノスの体はゆっくりと海水で解凍されながら小規模の爆発を幾度かさせて無事に終わる。
そしてヴォーティガンも海中を遊泳しながら姿を現す。アサルトライフルではその体表の鱗を貫けない為、コイツもイザベラが対応させようと思っていたが、ミカエラから通信が入る。
『私達がやるわ』
オレの予想とは反してミカエラがサイコキネシスでヴォーティガンのその巨体をあっさりと持ち上げ、海中から引きずり出す。そして露わになった腹部に、クーナさんが精霊魔法を叩き込む。予め詠唱していたのか、それはすぐさまドラゴンの腹を貫き、血と内臓を海にばらまいて絶命させる。
その心臓は精力剤になる為、各国の代表からなるべく手に入れて欲しいと言われたのを忘れていた。が、既にその死骸は海の底。まあ、また今度でいいか。竜の心臓なんかに頼らずに自分の力でなんとかしてくれ。そんなものが無くても戦えるオレには無縁のものだ。
最後に、ベリアルの姿が未だに見えない。あの質量なら泳がないで海底を歩いている可能性がある為、気長に待つか。
ビルの屋上からベリアルを探していると、ようやく海中からメジェドが姿を現した。飛び魚の様に海面を飛んだかと思えば、そのまま飛行を開始する。主力部隊が空飛ぶ魚目掛けて発砲するが、射撃の精度が低く、あまり仕留められない。そのまま接近を許せば、パニックになって誤射しかねない。
「発砲中止。デウスエクス部隊、出番だ。くれぐれも、味方を撃つなよ」
主力部隊の攻撃を止めさせ、数百メートル離れた大橋、ハーバーブリッジから機械兵による狙撃を命令する。2千もいたメジェドに対して放たれた弾丸。それは一発も外れる事なく、全てを撃ち落とした。
こうしてベリアル以外の殲滅に成功したその時、有事の際に対応できる様、側面で待機していたルカから通信が入った。
『ベリアルを発見しました。オペラハウス前です』
運が悪い事に、オレから一番遠い地点に姿を現した。その場までおよそ1キロメートルないぐらい。辿り着くまで、およそ20秒掛からないぐらいといったところか。
「ルカ。周りの兵士を退避させつつ20秒だけ足止めを頼む。すぐに向かう」
『分かりました!』
回避に徹したルカであれば、20秒はおろか、10分でも耐えられるだろう。
全速力で向かうと、ミカエラから通信が入る。
『ケイジ、本当に一人で大丈夫?』
「大丈夫だよミカエラ。コマンダーからヤツに対抗できる武器をもらったから」
『無茶しないでね』
前科がある為、心配されてしまうのも無理はない。ヤツを一人で対処すると言ったが、みんなを信頼していない訳ではない。ただ、刀の試し斬りをしたいだけなのだ。実はまだ一度も使っていないから。
使う程のオメガが、現状ベリアルぐらいしかいないから仕方がない。
「分かった。危なくなったら連絡する」
そのやり取りが終わると同時に、現地に着く。数手渡り合ったのか、ルカが汗の一滴もかかずにベリアルを翻弄していた。
「ルカ、待たせた」
「お兄さん! 早かったですね」
あの距離をホントに20秒以内で移動してくるとは思っていなかったのか、ルカが驚いた表情を見せる。マキナと違って可愛いヤツだ。
ルカとバトンタッチし、オレはアダマントソードを取り出して構える。オペラハウス前、海がすぐそこにある広場で、ベリアルと対峙するが、その沈黙を破ったのはオレだ。剣をベリアルの胸に向かって投げると、あっさりとキャッチされて全身に吸収される。
ヤツの全身が黒く染まり、カブトムシみたいな角と羽が生えて完全体となる。が、その変身によって生まれた一瞬の隙を見逃さず、オレは左手首に付けている転送装置の裏側を撫でると、腕輪から棒状の光が現れる。柄だ。それを掴んで一気に抜き取ると、宇宙を感じさせる刀がその身を露わにする。
刀身が2メートルあるその刀を振るう。シャリン、と美しい音色を立てたそれから手を離すと、光の粒子となって消える。直後、ベリアルの頭から股まで黒い線が入ると、そのまま左右に分かれて地面に転がった。
「妖刀一閃。我が太刀は一振りにて全てのオメガを滅す」
――ふっ。なんてな。
『今のも録画しているぞ』
「ちょ! 絶対に放送するなよ!」
『手遅れだ』
やめろ! オレの黒歴史だ増えるだろ!




