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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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120.目覚め

 オレが目を覚ました時間は深夜だった。手術室には誰もおらず、ただヒーリングポッドの中でうつらうつらと意識を覚醒させていく。


 5分程経つと、オレが目覚めたのに気が付いたコマンダーが姿を見せる。そしてヒーリングポッドから出してもらうが、体に全く力が入らずに転んでしまった。


「衰弱って、こんな感じなんだな?」


『全く、君というヤツは・・・。目覚めた一言目がそれか?』


 確かに。オレ生き残ったのか、とでもいえばよかったかな。


 コマンダーに手伝ってもらい、手術台に横になる。その際に、自身の右腕がない事に気が付く。記憶を辿ると新しく生えてきたドラゴンの腕を、オケアノスの能力で自爆させたのを思い出す。


 右肩を確認すると、黒く変色し、浮き出た赤い血管が脈を打っていた。


「うわ、キモ」


 左手で触ってみると、神経は死んでいないらしく感覚が残っているのを知る。どうやら色だけが変わってしまった様だ。


『オメガ因子を取り込み過ぎた結果だ。突然変異してオメガになる可能性があると、冗談で言ったのを覚えているか?』


「ああ。オレをビビらせようとして言っただけだと思っていたんだけどな」


 実際にそれがオレの体で起きている訳だ。段々とオレを蝕んで、やがてオメガになってしまうのかもしれない。


『今後は因子を結合させるのを控えた方がいいだろう』


 コマンダーがそう提案するが、オレは首を横に振る。


「それは出来ない相談だな。今回のオメガの強さを見ただろ? これからもっと強い新型が出ると考えたら、もっと多くの因子を取り込んでいかないと」


『だが――』


「コマンダー。もう退けないんだよ。それに今更降りてどうする? 戦うのをやめて、普通の生活を送れってのか?」


『それは・・・。だが、これ以上因子を結合してしまえば、君は確実にオメガに取り込まれるぞ』


 自分が自分で無くなっていく感覚。何かが欠落する様なあの感覚は、最期を覚悟したあの瞬間に十分味わった。正直、久しぶりに恐怖を感じた。だが、それよりももっと怖い事がある。みんなを失う事だ。


 それに比べてしまえば、オレが人間でなくなる事なんて、大した事ではない。もしかしたら姿かたちが変わるだけで、意識を保てるのかもしれないし。


 けど、もしそうじゃなければ・・・。オレがみんなに手を掛けようとしたその時は――


「その時は、お前がオレを殺してくれ」


『私は・・・君に・・・戦いを強いてきた。何度も・・・何度も何度も! その上、君を手に掛けろと言うのか? 私はまだ、君に何も返せていないというのに』


 コマンダーが言いよどむ姿も、怒り以外の感情を露わにしたのは初めてかもしれない。それに何だか感動してしまった。親心に近いのかもしれない。


 今思えば、コイツは昔に比べて話し方や考え方、そして仕草等も人間に近付いた様な気がする。音楽を好きになったり、心を語ったり。


 ――皮肉なものだ。機械のコマンダーが段々と人に近付いていくのに対して、オレはどんどん人ではなくなっていく。


「ま、あくまで例え話だ。今は、そうならない様に全力を尽くすしかないさ。そうだろ?」


『・・・ああ。そうだな』


 オレ達の戦いはまだまだ続くだろう。だからといって、今から悲観する必要はない。最近は楽勝だったけど、敵はバカじゃなければ弱くもない。改めて脅威だと認識するが、まだ負けた訳ではない。今もこうして生きている限り、オレは戦い続ける。それだけの話だ。


「よし。ならあの後どうなったのか教えてくれるか?」


 あの後オレの自爆によってヤツを、鎧オメガを倒したと思っていたが、どうやら違う様だ。経緯を聞くと、コマンダーが時間稼ぎをしてくれと言っていたのは、オートマタの最終兵器、『守護者(ガーディアン)』を出撃させる為だったらしい。そしてその守護者が、オレの自爆によって瀕死に陥った鎧オメガに止めを刺したとの事。


 最初からその守護者っていうのを出していればオレがこんな痛い目に遭わずに済んだのに、とも思ったが、オリハルコンで出来た守護者は、惑星マザーの奥底で眠っている膨大な量のオリハルコンを守る為の存在。それを動かすという事は、護るべきオリハルコンが無防備になると同時に、出撃位置を特定されればオリハルコンの位置がバレてしまう。


 いや、もうバレていると考えた方がいいだろう。遥か彼方で戦況を監視していたクラーケンが、おおよその位置を捉えているとコマンダーは予想している。逆を言ってしまえば、そんなリスクを冒してまでオレを助けてくれたのだ。オレが不甲斐ないばかりに申し訳ない。


「それにしてもよくあの爆発で生きてたな、オレ」


 自爆する直前、正直粉々になって死ぬと思っていたが、結果的には腕しか消失しなかった。オレが思っていたよりも爆発の威力がなかったのか?


『あの威力では私も君の生存を諦めかけていた。おそらくだが、ユグドラシルの加護のおかげかもしれない』


 そういう事か。確かにあの時、ユグドラシルが何かを伝えようとしていたが、それを無視した。ルカとクララを助ける為に、あそこで立ち尽くしている暇はないと判断したからだ。無視してしまったとはいえ、ユグドラシルがオレを死なせない様に何かした可能性は十分にある。彼女(?)だってオレに何かをさせる為に利用しているのだから。


「そっか。自分で言うのもなんだけど、中々死なないもんだな」


 実際に一度死んだ事はあるものの、それ以来しぶとく生き残っている。初めてユグドラシルの加護を授かった時にクーナさんが言っていた言葉をふと思い出す。


 未来が視えるユグドラシルが加護を、種を託したのはオレが死なずに何かを成し遂げるから。そしてそれまでは死なない、と。あの話は本当なのかもしれない。現に今も、五体満足ではないけど無事に生き残っているのだから。


『自爆した時の君は心肺停止状態だったがな』


「マジで!?」


 また死にかけていたという衝撃の事実。オレが死なないっていうのは間違いかもしれない・・・。


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