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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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116.完全体

 もう吹っ飛ばされるのはゴメンだと思いつつ、ヤツに再接近。その身長差のせいで、リーチにも差があるのが非常に辛いところ。武器が使えないとなると尚更だ。ヤツの間合いに入っているものの、オレの攻撃は届かない。そんな距離を保たれながら、一方的に繰り出される攻撃を捌いていく。


 顔面目掛けて振り下ろす様に放たれた左ジャブを横に避け、続いて繰り出された右ローキックをジャンプして回避。すぐさまその顎を蹴り上げるのと同時にサイコキネシスもお見舞いする。


 だが、顔を仰け反らせる程度で今回もあまりダメージを与えられている訳ではない様だ。逆にオレは空中にいた為、サイコキネシスの反動で後ろに吹っ飛ぶ。


 ――ホントに堅いな・・・。このままじゃ時間稼ぎすらできないかもしれない。


 まだアダマンタイトを纏っていない頭部でもこんな調子では、もし全身を黒く染め上げた時、一切の攻撃が通用しない可能性がある。それだけはなんとしてでも避けなければ。と思っていたものの、そう簡単な話ではないだろう。


 ヤツはすぐに体勢を立て直し、オレの着地際を狙って再び右ローキックが放ってきた。咄嗟に俊敏性強化(バステト)を発動し、空中で身を翻して着地のタイミングをずらす。そうして回避したものの、流れる様に放たれた左バックブローに反応が一瞬遅れる。


 慌てて体を後ろに倒すが、マスクに拳が掠る。それだけでアダマンタイトのコーティングが施されているマスクが砕け散る。


 このマスクには様々な効果がある。ある程度の衝撃を防いだり緩和したりするバリアを張る防御性能だったり、コマンダーから届く情報を視覚化したり等。そして宇宙空間でも呼吸できる様にする機能もある。つまり――


「かふっ」


 呼吸が出来ずに喉が詰まった様な感覚に襲われる。酸素のない惑星マザーでは当然のことだ。このままでは窒息してしまう。オレはすぐにメジェド()の因子を活性化させる。その能力は『環境適応』。水中だろうと宇宙空間だろうと、その環境に適応して生存する事ができる能力。


 やっと呼吸が出来るようになったが、その隙を見逃してくれるはずもない。視線をヤツに戻すと同時に、右足がオレの腹にめり込んでいた。貫かれたのではないかと思う程の激痛が走り、はるか後方に吹き飛んでいく。


 今まで味わった事のない痛みと苦しみに襲われ、喉の奥らとめどなく血があふれ出す。胃か他の内臓が破裂したのか、吐血が止まらない。再生速度が遅くなり、全く回復が追い付いていないのも相まって、長時間その苦痛から抜け出す事が出来なかった。


 ――ヤバい、ホントに死にそうだ・・・。


 火が付いている炭を腹の中に大量に入れられている様な熱と重量を感じる。痛みで叫びたくても喉の奥から血液が噴き出すせいで声すら出せない。立ち上がりたくても体に全く力が入らない。


 ヤツが近付いているのだけは感じ取れた為、なんとか視線をそちらに向けると、先程の攻撃でもしっかりとアダマンタイトを奪っており、左腕と右足も黒く染まっていた。つまり、頭部以外がアダマンタイトを纏っている状態になったのだ。


 動けないオレの目の前で立ち止まる。そして、ゆっくりした動作で剣を収納されている腕輪を付けたオレの右腕を左手で掴むと、右手でオレの右肩を押さえる。


 一体何をするるもりなのかと疑問を抱いた瞬間、ブチブチと何かが千切れる嫌な音が響く。右腕が根本、肩から引きちぎられたのだ。


「ぐぁあああああっ!」


 腹を剣で刺されるのとは比にならなら激痛に、吐血しながら叫んでしまう。千切られた右肩だけではなく、失ったはずの右腕全体が数え切れない程の針に刺され、潰され、熱されている様な痛みを感じる。


 苦痛にのたうち回るオレを無視し、ヤツは千切ったオレの手首から腕輪を奪い取って剣の状態に変形させた。そしてそれを自身の頭部に押し付けて吸収する。こうしてヤツの全身が真っ黒に染まり、絶対的な防御力を得たのだ。


 それに対してオレは、肩からの出血も相まって段々と意識が朦朧としていた。あまりにも血を流し過ぎた。


 ――ユグドラシル・・・そろそろ力を貸してくれてもいいんじゃないか・・・? いつもは頼まなくても来る癖に、こっちから頼んだ時に来ないのか・・・。


 痛みと失血のせいで霞む視界の中、先程までサイが立ち上がった様な見た目だった鎧オメガが、カブトムシみたいな見た目に変わっている事に気が付く。頭部には小さな角があったが、それが巨大になり、そして背中には羽が生えていたのだ。


 完全体へと変貌を遂げたヤツが、オレに止めをさそうとゆっくりと迫ってくる。


「これは・・・ホントに死ぬかもな・・・」


 もはやこの状況を打破できる術はない。


「ケイジッ!」


 自分で思っているよりもオレは瀕死に陥っている様だ。幻聴すら聞こえる。それも最愛の天使の。


「アンジェリカとルカはケイジを! ミカエラ! イザベラ! アレをケイジから引き剥がすぞ!」


 それに続いてクーナさんの声も聞こえる。あまりにも具体的な指示に、これがホントに幻聴なのか疑いたくなる。が、それがすぐに幻覚でない事を悟る。


 ヤツを止めようと、クーナさんとイザベラがオレの目の前に立つ。そしてアンジェとルカがオレの体を起こして後ろに下がろうとしていた。


「なんで・・・みんなが・・・」


 困惑しているオレの前にクーナさんとイザベラが立ち、鎧オメガと対峙する。


「助けに来たに決まっているだろ」


「坊や。勝手に一人で戦った事、後でお仕置きだからな」


 クーナさんは手にユグドラシルの枝を、イザベラは改良型のバトルライフルを持っているが、おそらく通用しないだろう。


「ダメだ・・・。逃げてくれ・・・」


 ヤツの攻撃が一度でも当たれば、確実に命を失うだろう。再生の力がなければ、あまりにも危険過ぎる。いや、再生があったところで、オレがこんな有り様になっているのだ。


 ――だからお願いだ・・・。ヤツと戦っちゃダメだ・・・。


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