114.特攻型オメガ ベリアル
擬態オメガのヤルダバオトが現れてから既に4か月が経っている。確かにそろそろ新型が出てきてもおかしくはない時期だが、まさか惑星マザーで遭遇する事になるとは思ってもみなかった。
惑星マザーに来るオメガはいつも斥候型ばかりだからだ。それも主にトウテツが多い。理由はオリハルコンを探す為なのであまり戦力を割かない、というのがオレやコマンダーの考えだったのだが、それを裏切られる事になるとは。
『新型か・・・。レーダーに反応がなかったのは、おそらくポッドには乗らずにクラーケンから直接飛んできたからだろう。初めてのタイプだな。それにまた二足歩行か』
二足歩行のオメガには良い思い出がない。アンラ・マンユには殺されるし、ヤルダバオトは基地に侵入するし・・・。
ただ目の前にいる新型のオメガは、重厚感のある丸みを帯びた白い鎧を着た二足歩行のサイみたいな見た目だ。今までとはかなりタイプが違う様に思える。
先程の爆発音は鎧オメガが着地した際に鳴った音といのはすぐに分かった。その重厚感のある体は、ゴライアス程大きい訳ではないが、それでも軽く十数トンはあるだろう。
背はおよそ4メートル。鎧が体の一部なのか、身に纏っているのは分からないが、見た目からして防御力は高そうだ。
「一人の時にまた面倒そうなのが出てきたな・・・」
『騎士団には連絡して待機してもらう。必要であればすぐに送る』
「はいよ」
判断が早くて助かる。とは言っても一人で倒したいところだ。皆にはなるべく危険な目に遭ってほしくないし。
とりあえず、戦士みたいな見た目だから接近戦を仕掛けて戦闘力を計ろう。案外、見掛け倒しで弱い可能性だってある。油断するつもりはないが、とっとと倒して帰ろう。
オレは剣を手に、鎧オメガが動くよりも前に仕掛けた。先手必勝という訳ではないが、様子見していたオメガをわざわざ待ってやる必要はない。
一刀。ヤツの首目掛けて剣を薙ぎ払うが、左腕で防がれる。もしかしたら腕ごと両断できるかと思ったが、中々に堅い。傷一つ付けられない。
二刀。防がれた剣を返し、次は腹を斬ろうと振るうも、後ろに下がって躱される。見た目に反して俊敏だ。
三刀。空振った剣の勢いを殺さない様に踏み込みながら回転しながら跳び、剣を振り下ろす。最期にヤツの肩を狙ってみたが、それは右腕で防がれる。
いちいち腕で防ぐというは、多分ヤツの鎧の中でも上位に入る堅さを誇っているのだろう。
それにしても攻撃は当たらないし、簡単に防がれるし・・・。アンラ・マンユとの戦闘を思い出すな。あれの二の舞になって死んでしまう事は避けたい。
再度攻撃を仕掛けようとしたその時、ある事に気が付いた。ヤツの両腕が白から黒へと染まっていたのだ。
「でも何で腕だけ・・・?」
それもオレの攻撃を防いだ部位が、だ。色が変わっている、というよりも何かでコーティングされているような・・・?
「まさか!?」
すぐさま剣の刃を確認すると、アダマンタイトで出来たその剣が刃こぼれ、ではなく刃そのものが無くなっていた。前にネットで見た事のある魔女裁判用のナイフみたいに。あれはもともと刃を丸く削っておき、そこに魔女容疑が掛かっている相手の手首を当てる事で、出血していないからお前は魔女だという濡れ衣を着せる為にあるものだが、それと似たような形になっている。
つまりヤツに攻撃を防がれるとアダマンタイトを奪われるという事だ。
「アダマンタイトを奪うオメガ、か・・・」
『き、貴重なアダマンタイトが・・・!』
それを見ていたコマンダーが珍しく声を荒げる。というより発狂寸前だ。
『殺せ! 奪い返すんだ!』
「分かってるって」
折角宇宙を彷徨って取ってきたアダマンタイトを易々と奪われるのは、本人からしたらさぞ気に食わない事だろう。
オレも取り返してあげたいのは山々だけど、剣で攻撃できない以上、出来る事なんて限られている。とりあえずこれ以上大事な剣が虫食いにされるのはごめんだ。とりあえず剣をしまって、サイコキネシスで応戦する事にした。
アダマンタイトが欲しいのか、オレが攻撃を仕掛けるのを待っている鎧オメガに対してサイコキネシスの衝撃波をお見舞いする。惑星マザーの表面を覆いつくしている黒い砂を巻き上げつながら放たれたそれを、ヤツは体で受け止めた。
砂煙が舞い、詳しい状況は分からない。が、確かなのは全くダメージを与えられていないという事だ。手応えがなければ、砂煙の中にヤツの影が見える。
ヤバい・・・。このオメガ、過去一強いかもしれない。アンラ・マンユ以上にオレ対策している気がするな。
近接戦闘はアダマンタイトの吸収で封じ、サイコキネシスではダメージを与えられない。
あれ? もしかしてこれ、詰んだ?
打開策が見つからない事に嘆きたくなるが、そうも言ってられない。煙の中の影が大きくなったと思えば、高速でヤツが迫ってきていた。そして眼前にはオレの胴体程の大きさをした拳が。
「ぐっ!」
咄嗟に両腕を交差してそれを防ぐも、あまりの体重差に体が浮き、そのまま凄まじい勢いで後方に吹き飛ぶ。視界がグルグルと回って上下左右が分からなくなる。回っているのはオレの体か。
超集中で感覚を研ぎ澄まし、体勢を立て直そうとするもあまりの勢いに空中で姿勢を制御できない。そのままなす術なく地面に体を打ち付けるが、バウンドして再び宙を舞う。
地面の取っ掛かりを掴もうとするも、両腕は骨折しているのか全く動かない。そのまま空中と地面を交互に転がり、およそ300メートル程吹き飛んだところで静止した。
「うっ。クソ・・・」
地面と衝突した勢いで腕以外の骨も折れたのか、立ち上がるのすらままならない。たったの一撃で満身創痍の状況に陥ったが、およそ10秒程で全回復する。
――今まで戦ったオメガと比較にならないぐらい強いぞ、コイツ・・・。




