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霹靂‐へきれき‐のシルト  作者:


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28/31

悲劇のヒーローの作り方


ここは領都の高級宿屋の一室。

良い部屋だ。居間と寝室の続き部屋で風呂場まで付いていた。今まで泊まっていた安宿とは違うな。


凝った内装に上等なカーテン。

天蓋付きのダブルベッドには絹のシーツが敷かれ軽くて温かい羽毛の掛け布団がかけられていた。


飾り棚には高級酒と高そうなグラスがずらりと並び、あちこちに季節の花が飾られ、テーブルには見たこともない果物が置かれている。


部屋に吊り下げられているベルを鳴らせば、夜中だろうが給仕が飛んできて、頼めばできたての飯を並べ娼婦おんなも呼んでくれるんだ。


それまで食った事もないような旨い飯に、腰のくびれた高級娼婦いいおんなを頼み放題。それもここに滞在中はギルドが全て支払ってくれ無料ただときたもんだ。笑いが止まらねぇ。


俺は、寝室に入ってきた高級娼婦いいおんなをベッドに手招いた。





ダンジョンを出て、俺はすぐにレベルを確認した。


『レベル43』


ーやった!やったぜ!!

ボス討伐の経験値が全て俺1人に入り、俺はレベル43になった!


成長途中のボスの経験値はうまいんだな。一気にレベルが4つも上がるなんてよ。せいぜい2つか3つだと思っていたが、レベル43の指定冒険者なんて滅多にいねぇ。これで指定冒険者になっても周りにでかい顔できるぜ。


歩き出そうとすると、今まで気づかなかった痛みが体中に走る。



ついマジックボックスの中の回復ポーションに手を伸ばそうとした手を止めた。

「いけねぇな。ここは我慢のしどころだ」


仲間を亡くしてただ1人生き残った奴が、ぴんしゃんしてて怪我無しじゃなぁ。ボロボロじゃなけりゃいけねぇ。


そして、とっておきの魔物よけのポーションを浴び、用心して街を目指す。ここで不用意に魔物にでも合えば今までの苦労は水の泡だからな。



夜を徹して歩き、街を目指す。街が見え始めた頃、俺は一組のパーティを見つけ、辺りを確認してからマジックボックスの回復ポーションを取り出し、足元の草むらに捨てた。良いやつでもったいないが仕方ねぇ。半壊したらギルドに検査されるからな。


そしてすぐに見かけたパーティに助けを求めた。足を引きずり、剣を杖代わりにして哀れっぽくな。



そのパーティは俺に駆け寄り、倒れ込んだ俺を取り囲み口に回復薬を流し込んだ。


「おい! 大丈夫か? ん?…お前…クァズか?」

ーついてるぜ、お人好しのアレン達だ。



「…はぁはぁ。アレン、すまん…ギルドに…連絡を…北のダンジョンが成長期に…」

「はぁ?成長期?! それよりお前、一人なのか? サンディは? パーティはどうした!」



「パーティは…全滅したよ…、ルツもアールもボスにやられて…サンディは…サンディ…サンディ!…俺はお前を連れて帰れなかった…!!」


そう言ってサンディの杖を握りしめて号泣したら、察したアレンのパーティは何も言わずに沈痛な目で俺を見ていた。


街までの間、肩を貸してくれたアレンにぽつりぽつりと、どうパーティが崩壊したかを話す。


大事なんだよな、こういう事は。

ギルドは冒険者が死んだ事は公表するが、戦いの詳しい事まで教えない。だが、冒険者ってのはそういう話を聞きたがるのさ。


だから、ここに来るまで何度も頭ん中で練り上げていた話を披露した。


俺はいち早くダンジョンの異変を察して退避しようとしたが、剣士になりたての新人ルーキーがやらかして戦闘になった。


ここで新人を責めちゃいけねぇ。止めきれなかったベテランの俺がいけねぇと匂わす。


アレンのパーティの中堅が「そんな事はない。新人にはよくある事だ」とパーティの若い奴らを見ながら呟いた。若いのは黙って聞いている。


そして、俺はルツとアールがいかによく戦ったかを話して花を持たす。若い奴らは自分の事のように聞いていた。


最後にサンディがボスに致命傷を負わせ、俺達はとどめを刺そうとしたが、ルツとアールがボスの最後の反撃にあって死んだ。


そして、死ぬ間際にルツが投げたタガーがボスに薙ぎ払われ、不幸にもサンディに刺さった事を話すとみんな黙り込んだ。



「サンディは、自分のスティックを渡して俺の腕の中で死んだんだ。生きて帰れ、ギルドに知らせてって言って…回復薬もポーションも切らしていて、俺はどうしようもできなかった…俺が…俺がもっと…」

と言った時、アレンのパーティの若い女冒険者がたまらずすすり泣き始め、隣にいた若い奴が女の肩を抱いていた。



ー良いねぇ。やっぱ、こういう話はウケるんだよな。

アレンも「自分を責めるな。傷に障る」と言って俺の話を信じ込んでいるのはありありとわかる。


それからすぐに街についた。

夕方のギルドはすぐに蜂の巣を突ついたように大騒ぎになり、俺とアレンのパーティは別々に奥に通された。


アレン達は別部屋で俺を拾ってからの話を聴取され、俺はまずギルドの診察室のベッドに寝かされ治癒師ヒーラーの治療を受けた。


飲まず食わずで一昼夜移動し、直前で安物の回復薬を口にしたが、戦闘で傷だらけの俺を治癒師は痛ましげな目をして丁寧に治療すると、すぐにギルド長の聴取が始まった。


後はさっきアレン達に話した事を繰り返すだけだ。ギルド長にボスのジェムを渡し、多少話を盛って詳しく話すと、ギルド長の隣にいた書記が顔を曇らせてペンを走らせる。田舎の人間は純朴でいいね。


さすがにギルド長は顔色を変えなかったが、『成長期』のダンジョンの変化について何度も詳しく聞いてきた。そこだけはありのままに話すしかない。むしろありのままの方が信憑性は増す。


長いギルド長の聴取が終わると、レベルを確認され俺は国所属の冒険者になる資格があると告げられ、このギルドの治癒師では治しきれなかった治療の場所を選ぶように聞かれた。


認定場所の領都のギルドか、このギルドで受けるかをだ。


俺は躊躇ためらうように、しばらく天井を見上げ、領都での治療を望んだ。ここはサンディとの思い出が多すぎて辛いってな。


翌日、立派な馬車が用意され俺は領都に出発した。


もちろん、俺を讃える目と哀れむ目で見る冒険者達の間を、俯きながらサンディのスティックを大事そうに胸に抱えてな。



ー良いベッドのマットは藁束と違うなぁ。

俺は俺の上で腰を上下する女の腰を掴み、認定式は何時になるかと楽しみに、それまでの時間をギルドが用意した部屋で気に入った女達と過ごした。

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