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霹靂‐へきれき‐のシルト  作者:


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九死に一生? 

ピロンピロンピロン


………どっか遠いところで目覚ましの音が聞こえる気がした。




ー痛ってぇ。

どのくらいの時間が経ったのか分からないが、タクヤは目を覚ました。


「…ぐぅ…」

起き上がろうとすると、体のあちこちが軋んで悲鳴を上げそうになるが、歯を食いしばった。魔物に聞かれ襲われたらそこで終わりだからだ。


すぐにポーチを探るが、やっぱり全て使い切っていた。リストを出すのももどかしく、マジックボックスを開けて中をまさぐる。



ー確かサンディに渡された小瓶のMP回復薬を放り込んでいたはず。


まさぐり当てた飲みかけの小瓶を取り出すと、蓋をとるのももどかしく口に注ぎ込んだ。


痛みに感覚がおかしくなっているのか、いつもの生臭さは無く、炭酸の抜けたコーラのような味のそれを飲み込むと体が軽くなり、ようやく体を起こすことができた。すぐに崖を背にして一息つく。



ーここは…?

ああ、そうだった。俺は1階層手前の回廊でトロールに叩き落とされたんだったっけ。じゃ、ここは回廊横の崖ってとこかな。よく生きてたな、トロールの薙ぎ払いを食らって崖から落ちて…。


動くようになった手で体をあちこち触る。服はところどころ裂け血はべっとりとついているが、なぜか体に怪我はない。


骨の一本や二本、折れているかと思っていた。無抵抗だったのが幸いしたのか? 


だが落ちる前にできていた傷も消えている。



気が付かなかったが、ルツが置き去りにする良心の呵責で最後に俺に回復魔法をかけた?

いや、ヤツ自身が自分はMPぎりぎりだと言っていた。本当かどうか分からないが。


仮に俺に回復魔法をかける余力があったとしても、そんな事はしないだろう。ルツはそんなお人好しじゃない。


タクヤは最後見たルツの目を思い出していた。




ーいや、お人好しは俺だよな。ここはゲームの世界じゃない。死んだら終わりの現実なんだ。


何度バトルで死んでも生き返れる。最悪アカウントを削除しても追加料金さえ払えば1回だけ復帰できるゲームの世界とここは違う。


だったら自分の命が一番。それか自分が命を引き換えにしてもいい相手だけだ。その考えで言えばルツは正しく自分の命とアールを大事にしていた。



元々俺とルツの間に信頼関係はなかった。それなのに俺はゲームの世界と混同して、勝手に信頼して自分が動けなくなるほどの魔力を使い、切り捨てられた。


お人好しというよりバカだ。大バカ野郎だ。



あの時、身を挺して庇ったルツにアールは自分の回復薬を飲ませていた。俺のウォールが無くて大怪我をしても、あの二人は助け合ってトロールを凌いでいただろうしな。



ーちっ。

そんな二人がちょっと羨ましいと思う気持ちを、俺はかき消すように舌打ちをした。

舌打ちは、静かにダンジョンに消えていく。




「腹減ったな…」

考えても仕方ない事から現実に戻る為に、声に出して言ってみた。口に出すことで待っていましたとばかりに腹の虫が騒ぎ出す。


マジックボックスを開き、中から非常食の干し肉を取り出して口に放り込む。噛む度に肉の旨味と塩味が口の中に広がって、生きている事を実感した。



干し肉を噛みながら周りを見ると、ここは崖の途中に張り出した岩だと確認する。見上げれば回廊の上まで手がかりになるような物はない。


ーマジックボックスの中にロープはあるが、引っ掛けのような物は無かったな。そう言えば俺って土魔法使えたんだよな。


ーここの崖沿いに階段のような物を作れれば…。

以前ネットで見た秘境の断崖に石が生えたような階段を思い浮かべる。



ーいや俺ができたのは柔らかい土を変化させる事だけ…岩は操作できなかっ…た…


ぼこん。


崖肌から岩が飛び出してきた。

今、俺がイメージした階段そのままに…


ー!!


おいおいおい、マジかよ。

手を伸ばして触れると、確かにしっかりと崖から生えている。俺一人くらいが乗っても大丈夫そうにしっかりと。


土魔法のステイタスが上がった? 

なぜ?!


いや、今はそれを確認する間も惜しい。

俺は岩階段をイメージして次々に足場を作ると、回廊目指して駆け上がった。


作者は無理…絶対足が震える…

https://karapaia.com/archives/52249852.html

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