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霹靂‐へきれき‐のシルト  作者:


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討伐?


「おい! タクヤはどうした!」

第1階層との扉を抜けたルツとアールに、クァズが叫ぶ。



「…囮で残るってよ」

「……」

ルツの言葉に目を泳がすアール。


ー嘘だな。

ー嘘ね。

二人の態度にクァズとサンディは、だいたいの事を察した。


第1階層へ駆け出した時、全員トロールと十分な距離をとっていた。トロールはタクヤが使った魔法で足を深くとられ、逃げるには十分な時間と距離があったはずだ。


囮になる必要はない。


冒険者はパーティ仲間の命を大事にする。だがそれは自分の命があってこその建前だ。他人の命と自分の命だったら自分の命を優先する為に切り捨てる。

命あっての物種だからだ。


だからこそ、仲間が死んだ時の周りへの言い訳が、死んだ奴が「自分から囮をかって出た」と周りに言う。

それは冒険者の暗黙の了解だった。


ダンジョンの中では何があるかわからない。本当の事は生き残った奴しかわからない。だが生き残った奴が本当の事を言うとは限らない。



熟れた冒険者ほど「俺は止めたのに、でもあいつが…」と、大げさに芝居がかるものだが、ルツとアールのそれは陳腐なものだった。


そんな二人をサンディは憎々しげに黙って見ていた。大事なものは自分のマジックボックスとポーチに入れてあるとはいえ、気に入っていた服も化粧品も全ておじゃんになったのだ。



ーちっ! 何があったか知らないけど、タクヤに持たせていた荷物全滅じゃない! 一張羅は無事だけど普段着は全滅よ! それにタクヤが死んだから今度からお風呂も無し。忌々しい!



「早く扉を閉めて!」

アールの叫びに、クァズは黙って扉を閉め鍵を下ろした。


「ルツ、飲んで」

「ああ」

アールが自分のポーチからMP回復薬を取り出してルツの口に注ぎ込む。

それを見届けたクァズは「急ぐぞ」と急かし、4人はその場を後にした。


4人の姿が消えたあと、しばらくしてその大扉は跡形もなく消え去りトロールがのっそりと姿を現した。



「なんで?! なんで、トロールが来てるのよ! 扉閉めたんでしょう?!」

階層の境いの扉で足止めをしていたと思っていたトロールが、地上まであと少しというところで4人に追いつき、こん棒を激しく振り下ろす。



ー知らねぇよ!

イライラしながら、クァズは剣を振り下ろしていた。


しばらく生死をかけた激しい戦いが続いた。

トロールはタクヤのディープディグ(深い穴)で折れた骨が見える足をものともしない攻撃だったが、その足に集中させていた攻撃が利いてきたのか動きが鈍くなる。


だが、それは4人も同じだった。

直撃こそ受けてなかったが体のあちこちに、こん棒についたトゲや弾け飛ぶ岩の破片で傷を作っている。そしていつもより長い戦闘に疲労の色が濃くなり始めていた。


手持ちの回復薬が切れ、ルツは仕方なくタガーをとってトロールに向かう。


それを見て、サンディとクァズは勝負時が来たと判断した。ここでトロールを仕留めなければ、回復が足りずジリ貧になる事を経験で知っている。



「暴走魔法陣を引くから時間を稼いで!」

「おう!」

暴走魔法陣とは攻撃魔法を暴走させ、元の威力の数倍増幅させる魔法使い特有の陣をである。その分陣を引くには時間と集中力を使う。


クァズの返事を聞くと、サンディはポーチからとっておきの高価なMP回復薬を取り出し一気に飲み干した。すぐにMPが限界まで満たされるのがわかる。


「………Prodi, o circulus magicus qui hostem dele, ad pedes meos!」


サンディが意識を集中させ、長い詠唱を唱えるとサンディの足元に薄青色の魔法陣が浮かび上がってきた。



「どきな!!」

その声に、クァズはトロールの折れてない足の甲に剣を突き立て横に飛び退いた。


グギャー!!


「炎裂弾!!」

痛みに咆哮をあげるトロールに、ありったけの魔力を込めてサンディは炎裂弾を放つ。


炎裂弾は無数の火球が獲物めがけて飛んでいき、当たると裂くように傷をつけ、その傷から炎が入り体の内側から焼いていく。サンディが使える最大級の攻撃魔法だ。


グォ……


足を地に留め付けられ、まともに動けなかったトロールは全身に炎裂弾を浴び、手からこん棒を取り落とすと、プスプスと無数にある傷から肉の焦げる臭いと黒煙を立ち昇らせながらゆっくりと崩れるよう倒れた。



どーん。






敵を討ち滅ぼせし魔法陣よ、我が足元へ出でよ

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