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月光に咲く花の如く  作者: 夜妬
第2章 「むかしばなし」
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第21話 日常の訌争

 バベルでは月に一度、大きな会議が開かれる。


 三柱合同定例会議━━三定会とも呼ばれるその会議は、バベルという組織内で情報を共有するための大事な場でもあった。


 開始時刻よりも少し早く会議室に着いたハルは、いつもの戦闘服では無く、煌びやかな羽織に身を包んでいた。


 戦闘服でも問題は無いのだが、いつからか、一応は正装をしておこう、という空気が流れ始め、各々正装で参加するようになった。


 そういえば、椿さんが支部長に着任したあたりからだったような、とハルはちらりと議長席を見る。


 いつ来たのだろうか、もう既に席に着き、資料をめくっている。


 やはり、いつものようにきっちりとスーツを着ている彼の影響かもしれない。


 傍に控える長く美しい黒髪の彼は副支部長だ。

 歳は支部長とさほど変わらないはずだが、執事のような風格である。


 目が合うとふっと微笑みを返された。

 こういう仕草に女の人はキュンとするんだろうな、なんて考えていると、こちらもロングヘアーのドラゴンスレイヤーがやって来る。


 濃紺に反射する髪をひとつに束ね、同じく紺を基調とした羽織袴に身を包んでいる。


 眠たげに欠伸を噛み殺す一等星━━リュウは、その潤んだ目も憂いを帯びていて美しいと女性陣がひそひそと話している。


 リュウは普段こういった場に姿を現さないため、物珍しさもあるのだろう。視線を引き付けてやまない。


 まあ、当の本人は気にも止めていないようだが。


 そしてもう一人、リュウとはまた違う意味で目立つ人物が入って来る。


 ━━煌葵(こうき)だ。


 例に漏れず、彼も作業着ではなく正装だ。


 スタイリッシュなスーツに身を包み、赤いネクタイをシルバーのピンで止めている。


 普段は(くし)が通らなさそうなボサボサの髪も、今日は前髪を全て上げ、ワックスで撫で付けてあった。


 猫背は相変わらずだが、隣の凛に小突かれる度にあからさまなため息を吐きつつ背筋を伸ばす。


 体躯のいい技師たちを引き連れる彼は、頭領という呼び名の方が似合いそうだった。




 会議室の席も埋まったところで、椿が立ち上がった。


 ━━会議が始まる。


 規模が大きくてもやることは変わらない。

 各部署の一ヶ月の活動報告。


 司令部からは、復興計画の進行についてとシェルターの管理、三柱の予算審議等、諸々の面倒で難しそうな話がわんさか出てきた。


 一方で、戦闘防衛部はと言うと━━


「先日確認された新種の個体についてですが、戦闘データは情報局に回しておきましたので確認をお願いします。固定剤が有効だという仮定も立ってはいるものの目撃情報も三、五等星が遭遇した個体のみで……」


 新種が発見されればその報告と、他部署への協力要請、情報局との連携確認。

 ドラゴンスレイヤーとて、ただ戦っていればいいというわけではないのだ。


 戦闘防衛部長のアルスが、一通りの報告を終え、一呼吸置いて続ける。


「━━先月の殉職者数ですが、東日本では十人、西日本では四人、バベルで六人……計二十人。負傷者は三十九人でした━━以上です」


 会議室に耳が痛くなるほどの静寂が駆け抜ける。


 多いとも少ないとも言えない、そんな数字。


 ━━来月の定例会議ではその数字の中に自分が含まれているかもしれないのだ。


 ギッというアルスが椅子を引いた音が止まった時間を動かす。


 その後も滞りなく会議は進み、問題無く終わるかと思われた。


「━━おい、それは無いんじゃないか?」


 突然、不機嫌さが滲む声が突然室内に響く。


 挙手もせずに声を上げたのは煌葵だった。


「A級の同時出現で被害が大きかったのは分かるが、こっちも予算ぎりぎりでやってんだ。これ以上、部下の負担は増やせねぇ」


 それに対し、目を細め静かに口を開く椿。


「……あなたの、手を挙げずに発言する癖はいつになったら直るんですか?」


 バチバチと散る火花が実際に見えそうな━━そんな一触即発。


 先の戦いで被害が大きかった東日本の復旧作業を急ぎたい椿。


 それに対し、過重労働とバベルの作業人員が手薄になる事を指摘する煌葵。


 どちらの言い分も分かるのだ。


 現に、復旧計画の総指揮を務める椿の目の下には大きな隈が浮かんでいる。


 常に日本の事を第一に考える椿と、その身を案じてか、部下の身を案じてか、計画の穴を突く煌葵。


 会議だということを忘れているのだろうか、言い争いに火がついている。


 そんな上司達にギャラリーも呆れ返っていた。


「うわ……始まったよ。リーダーと支部長のバトル……」


「あの二人、良く飽きずに喧嘩出来ますよね……」


 ヒソヒソと囁かれる会話も耳に入っていないのだろう。


 司令部と技術開発部の職員達は慣れたもので、その様子さえ楽しんでいる。そのうち酒でも呑み出す輩が出てきそうだ。


「……なんであんなに折が合わないんですかね?」


 その時耳に入ってきた、ある少年の声。ハルの背後の席、つまりドラゴンスレイヤーの一人だ。


 おそらく会議には初めて参加したのだろう。先程から隣に座る先輩らしき人物が、会議の流れについて色々と耳打ちしているようだった。


「━━まぁ、どこにだってあるだろうよ、()()()()ってもんは」


「……兄弟?」


「お前知らないのか? ()()()()()()()()()()()()━━()()()()()()

三定会は三柱の部長はもちろんペンタグラム、上位部隊の隊長と下位部隊の隊長、隊員はランダムで選ばれて出席。技術開発部からは、多岐に分かれた専門の班の班長、部門毎の部長、司令部からは、いくつかある局の局長がそれぞれ出席し、情報共有を行うって設定なんですけど、ややこしいしそれ自体は重要じゃないので偉い人がいっぱい来て会議してるんだなーくらいでいいです。部署に関しては作者も細すぎて分かんなくなってきてます……

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