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月光に咲く花の如く  作者: 夜妬
第1章 ドラゴンスレイヤー
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第9話 齢14の天才

 ━━凄烈な閃光。


 思わず顔を背ける隊員達に降り注ぐ天泣。


 二部隊の隊長達だけが、目を逸らさずその瞬間を見ていた。


 防御層が破られようとしたその時、突如現れた一頭の青龍。

 その青龍がブレスを相殺したのだ。


 青龍は水でできていた。青く透き通るその体にブレスを取り込み天へと高く登って爆発した。雨が降ってきたのはそのためだ。


 肩で息をするアルス。その左腕はスーツが裂け、茨が巻き付いたように焼け爛れていた。

 ブレスを食らったのか、感電したのか、青龍を操っていた事は明らかであった。


「あんな大量の水、どうやって……」


 隊員の一人が問うた。

 アルスが無言で斜め後方を指さす。その方向を見ても首を傾げるもの達ばかりだったが、スコーピオンの一人が閃いたのだろか驚いて口を開く。


「まさか、猪苗代湖ですか?」

「そんな馬鹿な! 数kmは離れているんだぞ!?」


 そんな彼らに向かって、ご名答と言わんばかりに口の端を持ち上げ笑ってみせるアルス。

 みな、驚愕し言葉を失った。自分達の上司が、あまりにも人間離れした能力を見せつけてきたからだ。


 ドラゴンスレイヤーが操れるマナは大きく分けると二つ。


 一つは体内のマナ。

 もう一つは自分の周りの大気中に含まれるマナだ。

 自分の周り、というのは、訓練兵ならせいぜい半径一、二m、多くは自分の両腕を広げた範囲である。

 上位部隊員なら数十mで隊長クラスでも百m先のマナを操れるものは少ない。


 これでどれだけアルスが化け物じみた芸当をして見せたか分かるだろう。


 だがもちろん無制限にそんな事が出来るわけでは無い。


『マナ切れ』というものがある。

 大気中のマナは、直接操る場合もあるがほとんどが体内のマナと反発させるか、または引き合わせて操る。その時にわずかだが体内のマナがそのまま外に出ていってしまうのだ。

 そうして体内のマナが完全に無くなってしまった状態の事をマナ切れと言う。


 現在、アルスはマナ切れの状態だった。あれだけ大量の水を操ったのだから当たり前だ。

 だが、まだリントヴルムを倒せていない今、アルスが戦えないとなると大きな戦力の喪失だった。


 グルルル、と唸るリントヴルムを前にゴクリと生唾を飲み込み、アルスを庇うように陣形を組み直す隊員達。


 そんな彼らに通信が入った。


『こちらカプリコーン隊。現在戦闘領域内に到着した。五分持ち堪えてくれ』


 カプリコーン隊が来た、という事は五等星も到着したということだ。


 短いようで長い五分という時間。だが、リントヴルムはブレスを吐いたばかりで消耗している。


 ブレスは短時間に何度も連発出来るような技では無いのでしばらくは大丈夫だろう。もちろん五分間逃げ回るわけでは無い。各々がリントヴルムに攻撃を仕掛け、マナ切れでも出来る事があると証明するようにアルスもレイピアを振りかざした。




「兄さん!遅くなりました!」


 そう言ってアルスに駆け寄る少年。白い肌に白い髪、赤い目をした彼はアルスの実の弟ではない。なぜ兄と呼んでいるのかはまたの機会に説明する。


 彼はアルスに一つ、小さな青いアメを手渡す。


「どうせ無茶してるんだろうと思って」


「ああ、助かった」


 このアメの正式名称は『エレメント別マナ回復錠』だ。青いものは水のエレメント用。


 薄いマナの結晶の中に高濃度の水のエレメントのマナが入っている。一時的に体内のマナを補給するものだ。ちなみになんの味もしない。


「兄さんは少し休んでて良いですよ。遅れた分もしっかり働くので」


 そう微笑む少女にも見える少年はバンッと地面に両手をついた。






 齢十四にしてペンタグラムの敬称を与えられた天才。


『地』のエレメントのマナを操る白い少年、オーニソガラムの最大の武器はトラップだ。


 地面から何本もの鎖が飛び出し、リントヴルムに絡まる。突然現れたそれに驚いたのか身を捻って逃れようとするリントヴルム。その足元から火柱が上がる。

 全てがオーニのトラップだ。


 リントヴルムを囲むようにカプリコーンの隊員達が配置につき、武器を地に突き刺す。するとリントヴルムの真下の土がうねり、ゴポゴポと水のように少しずつA級の巨体を飲み込んでいく。

 リントヴルムの体が半分ほど土に埋まり、完全に身動きが取れない状態になった。


「僕達の勝利です」


 冷ややかな目でリントヴルムを見つめるオーニソガラム。彼が手をついている地が一瞬鈍く光った。

 それとほぼ同時にリントヴルムの周りの地面から輝きを放つ糸が現れる。それは何千、何万と増えていき、繭を作るかのようにリントヴルムを囲ったかと思うと一斉にその体に突き刺さった。


「見つけた……兄さん!」


 いつの間にかリントヴルムの背後に回っていたアルスがグッと自身の体にレイピアを引き付け、素早く突きを放つ。


「流石だな。寸分の狂いもない」


 一箇所、オーニソガラムが放つ糸がある場所を示している。そこにレイピアが吸い込まれるように突き刺さり、それと同時に激流が発生する。


 アルスの手に伝わる、固い何かが割れる感覚。それと共に大きくリントヴルムが吼える。コアが破壊されたのだ。


 少しずつボロボロと鱗が剥がれ、リントヴルムの体が焼け落ち、灰になって消えていく。


 A級ドラゴンの討伐に成功した瞬間だった。

やっとペンタグラムを(一応)全員出すことが出来ました。

オーニは14歳でペンタグラムになったので新入りです。そもそもバベルに来てまだあまりたっておらず本来は訓練兵でもおかしくないのに凄まじい飛び級をした、という天才君です。

ナツキも15歳なので、ペンタグラムって簡単になれるんじゃ?と思うかもしれませんが1000人いる中で5人しか選ばれないので本当に凄い奴らなんです。

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