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勇者スレイヤー 勇者絶対殺すマン  作者: ランタン丸
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目覚め




神の居城ウルカ、そこはただひたすら白が広がる空間。そこで一柱(ひとり)、神アポクリフは黒い革張りの豪華な椅子に座り、紅茶を楽しんでいた。テーブルの向かい側には乾いたティーカップが一つ置かれている。


「行ってしまいましたわね。彼」


神アポクリフの前に突如、妙齢の女性が現れる。赤髪でふくよかな体型をした碧眼の女性だ。


「やあ、おはよう。あなたも私と一緒に彼に会えばよかったのに、遠くで見てるだけとか遠慮しすぎだよ!」


「あら、何を言ってますの?勇者を指名する神聖な場ですもの部外者であるわたしが立ちいるべきでございませんわ」


「いやいや、あなたはこの世界の女神なんだから全然部外者じゃないよ。どうせ面倒くさくて、サボりたかっただけでしょ?」


神アポクリフは、呆れたように女性、女神に言うと、女神は不服そうな顔になる。


「サボっていたと思われるなんて心外ですわ!!わたしは遠慮しただけです。女神であるわたしには勇者を指名する権限なんてこの世界の設定(ルール)上ございませんからね。わたしがいても邪魔なだけと判断しただけですわ!」


女神の抗議を受けた神アポクリフは苦笑いを浮かべながら、ティーカップに紅茶を注ぐ。


「ふう、まっ、そうことにしといてあげるよ。あなたも紅茶はいかがです?」


神アポクリフは注いだ紅茶をハイリの飲んだティーカップの隣に置く。


「あら、気が利きますわね。しかし、彼はかなり怒っていましたわね。アポ君も意地悪ですわ。わざわざ、3つ目の理由を彼に告げなくてもよかったでしょうに。そうしなくても、彼は勇者の指名を受けたと思いますわよ?」


女神は、ハイリに座っていた椅子に座ると紅茶に口をつけ、アポクリフにそう告げる。


「なんだ、会話も全部聞いてたのかい?3つ目の理由は大事だよ。彼のモチベーションを保つためにね。これで、彼は死にもの狂いで異端者たちを殺してくれるはずさ!それに人造人間(ホムンクルス)たちを倒していったらいずれ気づくんだ。なら最初の方で教えてあげるのが優しさってもんさ」


「それはそうですが・・・、彼に殺せるとは思えませんわ」


女神は神アポクリフの理由に納得しつつも釈然としない表情だ。


「ふふふ、あなたは優しいですね。さすがは、慈愛の女神ミラナンダ様だ。でもね、彼ならきっとやってくれるさ。私は信じてるよ!」


「茶化さないでください!それに神が信じると口にするなど笑えませんわ」


女神ミラナンダは少し怒った口調になる。


「まあ落ちついて!私は彼ならできると思ったし、やるなら彼しかいないと思ったから彼を勇者に指名をしただけさ」


女神ミラナンダを宥めるように神アポクリフは言葉を続ける。


「それに、彼は勇者を名乗ること自体は拒否したよ。自分に勇者を名乗る資格はないってね。それから魔族を殺し、都を破壊した者たちと一緒にされることも嫌なんだってさ!」


「ええ、その事もしっかり聞いてましたわ。まあ、あなたの指名を受ければ勇者になりますけど、別に勇者を名乗る必要はございませんからね。前任の者は魔王と名乗っていたくらいですし、そこは問題になりませんわ」


「うん、そうだね!彼は勇者スレイヤーと名乗るそうだ!!」


勇者を滅する者(勇者スレイヤー)ですか・・・それにハイリという名前、彼はいろいろ背負って生きていくことになりそうですわね」


「ふふふ、彼が今名乗ってる名前、『ハイリ』には覚悟が感じられるよ。理に背く者、背理(ハイリ)。彼は自分が行うことがどういうことなのか、ちゃんと理解している。だから勇者に指名したのさ」


「それは2つ目の理由ですわね」


女神のミラナンダは、ティーカップをテーブルに置く。それと同時に神アポクリフは笑みを浮かべながら、口を開く。


「もう彼を勇者に指名をしてしまった。後は私たちは彼を見守るだけさ。彼の覚悟をこの目で見させてもらおうじゃないか」


「そうですわね。そうしましょう。願わくは彼の人生に幸多からんことを」


女神ミラナンダは頷き、そしてハイリに向けて祈りの言葉を口にするのだった。


















○○○


朝日が昇り、その光がハイリの顔にあたる。ハイリは眩しさに目が覚める。


「う〜ん??ここはどこだ?」


ハイリはゴツゴツとした石や岩がたくさんある海岸に横たわっていた。ハイリのお腹の上にはマジックバックがのっている。

不思議に思いながら、あたりを見渡す。すると、狼に似た魔獣の死骸が積み重なっているものが目にはいる。

数は十数匹といったところだ。おそらく小さな群れだったものだろう。


ハイリが魔獣の死骸に首を傾げていると空から「キュアー」と鳴き声が聞こえてきた。

ハイリはバッと空を見上げると、空から自分のもとへ小型のワイバーンが飛んできた。


「キュロスか!!」


「キュ、キュウー!!キュ」


ワイバーンは、ハイリの横に降りたつとハイリの胸元に戯れるように頭を擦りつけた。


「そうか、お前が海まて吹き飛ばされた俺をここまで運んでくれたのか。それに俺が眠っている間も守ってくれていたみたいだな。ありがとう!!」


キュロスという名のワイバーンの頭を撫でると、キュロスは嬉しそうに喉を鳴らす。


キュロスは、ハイリがずっと勇者探索中に乗っていた従獣のワイバーンだ。ハイリを戦艦まで運んだ後、ずっと上空で待機していた。

しかし、勇者の魔法によりハイリが海まで吹き飛ばされると、慌てて海に浮かぶ重症のハイリをこの海岸まで運んだのだった。


じゃれつきながらもキュロスは心配そうな目でハイリをみる。その目に気づいたハイリは、安心させるようにキュロスに告げる。


「もう大丈夫だ!心配かけたね。傷や火傷もアポクリフ様曰く、紅茶を飲んだことで全て治ったらしい。体も十分動くし問題ない」


ハイリは、キュロスの頭を優しく撫でた。


「キュアー、キュ、キュ?」


「ああ、本当に俺は大丈夫だ。それよりもお前の方が疲れてるだろ?今日は一日、ここで野宿をしよう。明日はハール大陸の北に向かう。またよろしくな!」


明日からまた長距離を移動しなければならない。それに備え、キュロスを休ませるためにマジックバックから簡易テントを取り出し、野宿の準備をハイリははじめるのだった。







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