世界の設定
説明回が続く
前任の勇者が魔族の王、魔王だった。その事実にハイリは驚愕する。
「魔王様が勇者だったのですか?本当に??初耳ですよ!」
驚いた表情のハイリを見て、神はアポクリフは面白そうに笑っている。
「ははは、さっきから君は驚きっぱなしだね!いいリアクションだ。まあ、君が驚くのも無理ないけどね。ルシル君が前任の勇者だったてことは本当さ。彼を200年以上前に私は指名したよ」
「勇者は人間族じゃなくてもよいのですか?」
「何を言ってるんだい君は?魔族も人間族と変わらないは知ってるだろ?瞳の色が違うだけで根本は同じだよ。そんなことは魔王の側近だった君が一番よく知ってるだろ?」
神アポクリフは呆れた表情でハイリに説明した。
「だいたい勇者は人間族しかなれないなんていう設定はこの世界に存在しないんだ。勇者なんて私が指名さえすれば虫や鳥、果ては魔獣だってなることができるのさ。ただ、人間族や魔族の方が他の生き物よりも寿命が長いうえに、器用に立ち回って私の思い通りに事を運んでくれやすいから勇者として便利なのさ」
「そうですか。ところで先ほどからアポクリフ様がおっしゃっている『設定』とは何なんですか?」
ハイリは神アポクリフの説明に納得しつつも、会話中耳にする聞きなれない言葉について質問をしてみることにした。
「そこからかい?あーそうか、普通はそうなるよね!まあいいか、ここでの時間はまだあるし、説明するとしよう。これからの話は長くなるから座って楽にしてくれ」
神アポクリフは指をパチンと鳴らす、するとハイリの目の前にテーブルと椅子が現れた。テーブルの上には紅茶が注がれたティーカップが2つのっている。
「どうぞ」と神アポクリフは手のひらで椅子を指し、座るようにハイリに促した。
「失礼します」とハイリは恐縮しながら椅子に腰を下ろす。
「この紅茶美味しいから熱いうちにどうぞ!さて、まずね。前提として世界というのは、君たちの住む世界だけではないんだよ」
「?、それはガイア大陸やハール大陸、キリギス大陸とは別の大陸があるということですか?」
「違う、違う。もっとスケールの大きな話さ」
神アポクリフはハイリの言葉を否定するとティーカップを手にとり、紅茶を飲みながら話を続けた。
「君の住むこの世界とは別の次元に数多の世界があるのさ。その数は今も増え続けていると思うよ。私には上司がいてね。その上司が世界を創って、その創った世界に私のような神が主神として赴任してくるんだよ。そしてね、私の上司の神、創造神はそれぞれの世界ごとに異なる設定を与える。この設定のことを私たち神は『ルール』と呼んでいるのさ」
「どうして設定が与えられるのですか?」
「世界に多様性を持たせるためさ。次元ごとに星の数ほど世界があるのに、全て同じ世界じゃつまらないだろう?だから世界ごとに設定を設けて世界ごとに個性を出してるのさ」
そこまで言い終わると神アポクリフはズズッとすする。
「つまり、世界の法則や事象は、世界ごとに異なっているということですか。この世界の当たり前は別の世界では当たり前ではないと、そういうことですね」
ハイリはティーカップの把手をもちながら自身の見解を口にする。
「うん、そうそう大体そんな認識であってるよ。例えば、君は自分がなぜ肺で呼吸してるのか、人間には鳥や魔獣のような翼がないのかみたいなことを疑問に思ったことはないかい?」
「考えたこともなかったです。そんなこと。当たり前のことというか、そうだからそうとしか言えないです」
「それが『設定』なのさ。この世界では人間が魔法なしでは、鰓や皮膚で呼吸きないのも、翼をもっていないのも全て設定で決まってるからさ。こことは違う他の世界では、鰓呼吸や皮膚呼吸をする人間もいるし、翼をもって飛ぶ人間もいる。逆にこの世界では当たり前の魔法が全く使えない世界もあるよ。それから、人間ではなく虫や魚が世界を支配していたり、常に争いが起こり絶対に平和にならない世界なんてのもあるんだ。挙げたらきりがないよ」
「なるほど!その世界をどのようなものにするか決める要素、それが設定なのですね」
「そうだよ。大体設定につは理解してくれたね。それじゃあ、ここから本題にいくよ。私のお願いと自称勇者たちに関係することさ。おっと、その前にお茶のおかわりはいるかい?」
神アポクリフにお茶のおかわりを聞かれ、ハイリは「はい、お願いします」と答えるのだった。
注がれた紅茶から湯気が舞う。
この後、ハイリはさらに驚くべき世界の真理について知ることになる。




