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141話 ラトゥール洞窟道 (3)

ラトゥール洞窟での二日目、一行は早朝に旅立った。馬車と馬を長時間乗り継ぎ、洞窟内で最も大きな空洞に築かれた巨大な市場へと、遅い午後に到着した。


ここはグラベルと一行が初めて触れる、本当のラトゥールの心臓部であり、洞窟都市の象徴的(しょうちょうてき)な空間だった。数えきれないほどの獣人と人間が混じり合い、通りを埋め尽くしている。目的を持って重い荷物を運ぶ馬車、陳列棚(ちんれつだな)を整える商人たち、さまざまな品物を売り買いする人々の波が、グラベルの目に飛び込んできた。


グラベルは周囲の景色に目を丸くしたが、彼を案内するダレンは慣れた様子でゆったりと市場のさまざまな情報を説明しながら会話を続けた。


「ここはラトゥール洞窟で最大の市場です。まるで一つの都市と言っても過言じゃありません。市場は迷路のように複雑に絡み合っていて、どこへ向かってもまた別の路地が出てきます。この市場ならではの特徴と言えば、出入り口だけでも21もの城門のような入り口があって、それぞれ別の地域へと続いているんですよ。」


ダレンが話している間、グラベルは周りを見回しながら、迷路のように絡み合った路地に並ぶ無数の店を眺めていた。店の数は数えきれないほど多く、それぞれの陳列の仕方や売っている品物が異なり、どれも個性を放っていた。


特にダレンの言う通り、最も多いのは地下迷宮で発見された古代の遺物(いぶつ)や宝石を扱う店だった。その中でも最大の店は、巨大なガラスショーケースの向こうに、眩い光を放つ宝石や、迷宮の奥深くでしか手に入らないという珍しいアーティファクトがずらりと並んでいた。


「ここにある宝石店だけでも、私の知る限り1,100軒はありますよ。ダンジョンから得た遺物や古代の金貨、珍しい薬草などもよく売られています。」


ダレンは少しもためらわずにグラベルに説明した。


「ダンジョン探索者たちが求める貴重な品も多く、どこでも簡単に手に入らない品物がここには集まっているんです。アクィルンに匹敵するくらい、迷宮関連の品が多いと思いますよ。」


グラベルは店街を眺めながら、深い感嘆を禁じ得なかった。彼はダンジョンで自らの手で手に入れた珍しい品々が、こうして市場で商人の手に渡って売られている光景を初めて目にした。


人々は宝石や遺物だけでなく、さまざまな陶器(とうき)や装飾品も売り買いしていた。ある店には華やかなモザイク模様の皿が並び、繊細な陶芸作品は柔らかな光沢を帯び、照明の下で美しく輝いていた。


「ここで取引される陶器もかなりの価値があります。あちらにいるのは、コバルト群島(ぐんとう)から来た商人たちでしょう。迷宮の陶器を買いに来て、熱心に値切りをしていますよ。」


ダレンが指差した先では、コバルト群島から来たらしい三人の商人が、華やかな陶器を前にして値切り交渉をしている姿が見えた。


昼食の時間を過ぎて間もない時間帯だったため、各店の商人は忙しそうに掃除をしたり陳列棚を整えたりして、午後の客を迎える準備をしていた。準備を終えた商人たちは、洞窟の奥深くで栽培された特別なハーブで淹れたお茶を飲みながら、店の前で隣の商人と談笑し、ゆったりとした時間を過ごしていた。


「ここはレストランより、お茶やコフアを出す小さな茶屋が多いんです。市場の隅々に小さく構えていますよ。中には迷宮でしか採れない珍しい薬草を入れたお茶を出す店もあります。」


グラベルは路地ごとに並ぶ茶屋を眺めながら、ダレンの説明を聞いていた。市場の中央を横切る一番大きな通りでは、大きな荷車や荷物を積んだ馬車が絶え間なく行き交い、巨大な洞窟市場の忙しない日常を物語っていた。商人たちの声、客たちの値切り声、そして馬車の車輪が床を転がる音が混じり合い、忙しい日常から生まれる活気を感じさせた。


グラベルとダレンは市場をゆっくりと歩きながら、無数の店と路地を通り過ぎた。店々の間には小さな競売場(きょうばいじょう)が設けられており、ダンジョンから掘り出された遺物が一つずつテーブルに並べられていた。


半分壊れた金属の装飾品や、淡い光を宿した宝石、正体不明の黒檀(こくたん)の箱のような品々が競売人の手に取られるたび、群衆の視線が一斉にそこへ集中した。探索者たちはその品物の秘密を手に入れようと競うように値を叫び、集まった人々はその熱気に引かれて競売場をびっしりと囲んでいた。


金属のハンマーが競売台を叩くたび、洞窟の壁面が響き、その余韻(よいん)は天井を伝って遠くまで広がり、洞窟全体に響き渡った。


時間が経ち、一行は再び市場の端の方へと向かった。


ラトゥール洞窟の中心街が見下ろせる高い階に位置する宿は、レイヴンタワー——すなわち『カラスの塔』だった。レルたちが経営するこの宿は、市場全体を見渡せる絶好の場所にあり、高い位置のおかげで洞窟の全景が一望できた。


入り口にはカラスの紋様(もんよう)の装飾が施され、黒い羽を模した金属の造形物が天井から吊るされていた。


グラベルが窓辺に立って下を見下ろすと、さっき通り過ぎた複雑な市場の様子が、巨大な洞窟の天井の下でまるで小さな蜂の巣のように動き回っているのが見えた。宿の中は落ち着いていて静かだったが、下の市場の生気はまだ彼らの耳をくすぐっていた。


レイヴンタワーのレル主人夫妻は温かい歓待とともに彼らを部屋へ案内した。ダレンは主人と簡単な会話を交わしながら、グラベルに宿の説明を付け加えた。


「ここに泊まる探索者が多いんです。レルたちが経営するこの宿は場所が良く、安全なので、探索を終えた後にここで休息を取る人もたくさんいます。特に、市場を見下ろせるこの眺めは、洞窟の中にいるとは思えない魅力的な場所でもありますよ。」


グラベルは旅の疲れを忘れ、宿が提供する快適な空間と素晴らしい景色を楽しみながら、お茶を飲みつつ休息を取った。


少しの休憩時間の後、グラベルと一行はレイヴンタワーの食堂へと向かった。石造りの壁と天井は洞窟特有の巨大な空間を包み込みながらも、穏やかな照明と精巧(せいこう)な灯りが温かい雰囲気を醸し出していた。食堂の中はさまざまな冒険者や探索者たちで賑わっており、彼らは皆、遅い午後の昼食を楽しんでいた。


グラベルが一行とともに席に着くと、主人が近づいてきてメニューを渡した。メニューはラトゥール洞窟の特色が色濃く出た料理で埋め尽くされていた。特に目を引いたのはナマズ料理とウォールアイの焼き魚だった。


「ナマズ料理か……面白いな。」


グラベルがメニューを見て呟いた。


「ナマズ……ううむ……前に食べたナマズ料理は生臭さが強かっただる。」


ニアがグラベルの言葉を聞いて興味を示した。そして少し緊張した表情で、メニューに描かれたナマズ料理に顔を近づけてじっと見つめた。


「はは、ここではそんな下手な料理は出さないから心配するな、ニア。ナマズの生臭さをちゃんと消せなかったら、ナマズ料理とは言えないだろう。」


マウがグラベルの隣に座りながら笑って言った。


注文した料理が出てくる間、食堂の大きな窓の向こうに洞窟市場の光景が広がっていた。下の階にある市場はまだ活発に動いており、灯りと魔石灯が暗闇の中でも明るく輝き、忙しい商人と客たちの動きを照らしていた。


ここで一日余分に過ごさないと予定が狂ってしまうとダレンが言っていたことを、グラベルは改めて思い出した。洞窟の奥まで行く前にここで休んでいくのが賢明な選択だと、ダレンが説明してくれたのだった。


「市場、すごく大きいですね。」


イリスが窓の外を眺めながら言った。


「食事の後、少し市場を見に行ってみるか、イリス?」


グラベルが微笑みながら言った。


しばらくして、注文した料理が一行のテーブルに運ばれてきた。最初に出てきたのはレル風に調理されたナマズだった。大きなナマズのフィレは、香辛料(こうしんりょう)をたっぷりすり込んであり、赤みがかった外観が目を引いた。フィレにはチリパウダー、クミン、コリアンダー、辛味の強いレルペッパー、そしてパプリカを混ぜた辛めの調味料が塗られていた。その上にのせられた新鮮なトマトソースが辛さを中和し、ソースには細かく刻んだトマト、玉ねぎ、コリアンダー、爽やかなライムが添えられ、さっぱりとした風味をプラスしていた。


「香りからして強烈だな。」


マウが深い香りを嗅ぎながら言った。


「さあ、食べてみよう。」


グラベルはフォークでナマズの一切れを刺し、慎重に口に運んだ。フィレの身は柔らかくジューシーで、甘みと辛みの香辛料が口の中で広がりながらも、ほどよいバランスを保っていた。添えられたソースの爽やかな酸味が辛さを適度に抑え、刺激的でありながらも重くならなかった。


「強い味なのに、バランスがいいな。」


「これならニアも楽しめると思います。」


イリスがニアに向かって少し微笑みながら言った。ニアは小さな手でナマズの一切れを摘まみ、慎重に口へ運んだ。


「うわ、これいいだる!」


ニアの目が輝いた。もう一口運びながら、嬉しそうな表情を浮かべた。


「辛いけど、いいだる!」


次にウォールアイの焼き魚が出てきた。フライパンでカリッと焼き上げたウォールアイのフィレは、外側が黄金色に輝いていた。ハーブバターが塗られ、テーブルに運ばれてからもバターが溶けてフィレに染み込んでいた。香ばしい匂いが一行の鼻をくすぐった。


グラベルは一切れを切って口に運んだ。


「これはまた別の満足感を与えてくれるな。焼いた表面はカリカリで、中はしっとりしている。」


イリスもウォールアイの一切れを摘まんで噛んでみた。


「軽くてサクサクですね。バターの風味がよく合っています。」


ダレンはその言葉を聞きながら静かに頷いた。


「洞窟の中でこんな上品な料理が食べられる場所は珍しいですよ。」


食事はそこで終わらなかった。グラベル一行はナマズとウォールアイの他にも、さまざまな野菜と地下迷宮でしか育たない特別な薬草を添えた料理も味わった。


薬草の強い香りが鼻先を突き、ほろ苦くも新鮮な味わいが舌に残った。冷たい石壁の湿気と料理の温かさが不思議なコントラストを生み、彼らの感覚を目覚めさせた。


「時間が許すなら、ここにもう一日泊まるのも悪くないな。」


グラベルが小さく呟いた。


食事を終えたグラベルとイリスはゆっくりと席を立った。グラベルはもう少し市場を回りたいと思い、イリスに向かって言った。


「少し市場を見て回らないか?」


「はい、グラベル様。」


イリスが頷いた。


「ニア、一緒に行くぞ?」


グラベルが隣に座っていたニアを見て言った。


ニアはグラベルを見上げると、目を輝かせてテーブルに残っていた焼き魚の皿を指差した。


「ん……まだこれ、もっと食べられそうだる。」


グラベルは目を丸くして言った。


「まだ食べられるのか?」


ニアは当然だというように頷いた。


「うん、これはいくら食べてもお腹いっぱいにならないだる! すごく美味しいだる。」


グラベルは首を振りながらイリスに向かって言った。


「ニアは置いていくのが正解みたいだな。俺たちは行ってこよう……相変わらず、ドロコの食欲は驚異的(きょういてき)だ。」


グラベルが呟いた。


ニアは胸を張りながら、最後の焼き魚の一片を味わった。


「行ってらる。私はここでもっと食べてるだる!」


ニアの横には皿が一つずつ積み上がっていき、その様子にイリスが口元に微笑みを浮かべた。


グラベルは笑いながらテーブルを離れた。彼が出ようとしたとき、ダレンが席を立った。


「私もそろそろ失礼します。市場の知り合いに頼まれていた品物を届けに行かないといけませんので。」


「大事な品物ですか?」


グラベルがダレンに尋ねた。


ダレンは笑って答えた。


「大したことじゃないんですが、引き受けた以上はきちんと終わらせないと。商人としてこういう小さな依頼をこなすのも、なかなか意味がありますからね。それでは行ってきます。」


ダレンが挨拶をして食堂を出ていくと、マウもゆったりと立ち上がった。


「俺は部屋に戻って休むわ。」


「馬車を運転するのは疲れますからね。ゆっくり休んでください。」


グラベルはマウを見て笑った。


マウは大きな手を振りながら言った。


「熊みたいに寝たらすぐ元気になるさ。いってらっしゃい! うははは。」


マウは部屋へ上がりながら、手で欠伸(あくび)を隠しつつ、冗談めかして呟いた。


「ここのベッドは大きいけど、いつも不安なんだよな。古いベッドが壊れたりしないといいけど……。」


マウの冗談にグラベルとイリスは彼を見送りながら笑い声を上げた。


「それでは、夕方にまた会いましょう。」


グラベルがイリスを伴って食堂を出ながら言った。

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