121話 グランドトーナメント (20)
<グラベル>
ヴェス・ディナスの貴族地区の通り。街のどこよりも高い壁の下で、明るく輝く魔石灯が並ぶ通りだ。いつからか、自分の屋敷の周囲の通りを明るく照らし、通りすがりの人が不自由なく歩け、座って休める長いベンチを置くのは、貴族たる者の務めだという話が広がり始め、高い地位と莫大な富を持つ貴族地区の人々の間で、通りをより明るくする競争が繰り広げられた時期もあった。
あまりにも過剰な権力と富の競争のせいで、貴族地区の通りは太陽の昇る昼間よりも、隙間なく並んだ魔石灯が光を放つ夜の方が明るくなってしまったため、領主の権限でその過度な競争を止めるよう布告が出され、ようやく通りは本来のほどよい魔石灯の光が照らす頃に戻ることができた。
「もう日が暮れていくのに、家から出てくる気配がないな……。」
周囲で一つまた一つと灯り始める魔石灯が、空に浮かぶ小さな星のように遠く見える、街の外れの山の上にある木の枝に腰を下ろし、グラベルはそう呟いた。
ヴェス・ディナスの図書館でスカラー・リンディの地図制作を手伝い、錬金術師の頼みでジャジャト山からドゥープの木の樹皮を採取してくる仕事を終えたその日、ラタクから依頼を受けて、暗殺者の脅威から守るべきサリン・オリドという人物の護衛を始めたのだ。
ラタクから、守る対象に気づかれないよう頼まれていたため、グラベルは遠く離れた位置からサリンが滞在する屋敷を見張りながら時間を過ごしていた。
久しぶりの暇だった。この異世界に来て以来、空中荘園の行方を突き止めるため、時間が空くたびにヴェス・ディナスを中心に空を飛ぶ呪文を使い、広く展開したマナで探索を続けていたので、こうして休息を兼ねて足りなかったマナを回復できる今の時間が、ありがたく感じられた。
『それでもマナ脈の運用にも慣れてきて、以前に比べて何倍も速く、長く飛べるようになったな……。』
目を閉じ、深く息を吸い込んだグラベルは、精神を集中させて周囲のマナを引き寄せることに没頭し始めた。
それでもなお、遠くサリンがいる屋敷に向かって、自身の体を包むマナを広く展開し、屋敷全体を覆うようにして脅威となる存在が近づいていないかを監視することを怠らなかった。
最大限に体外へ放出したマナを保持するマナ・コンボルブの応用技――放出するマナは保持しつつ圧縮せず、広く展開する――をグラベルはマナ・エクスパンションと名付けた。この技術は、範囲内にあるすべてのものを把握できる。
落ちる木の葉の形、地面を這う小さな虫の動きさえも、展開したマナの範囲内であれば感知できる。視覚に頼らず球状に広く展開したマナは、死角なく範囲内のすべてを捉える。
空中荘園を探すために研ぎ澄ましたグラベルのマナ・エクスパンション。そのレベルは、ヴェス・ディナス全体を展開したマナで包み込める境地にまで達していた。
『それでも空中荘園に関する手がかりは一つも掴めていない……。』
これまでの探索の成果が思わしくなかったせいか、マナを集めるために閉じていた目がわずかに曇った。
そしてグラベルの周囲に集まるマナに導かれるように、細く弱く吹いていた風が、一瞬だけ鋭く吹き、グラベルの頰を撫でて通り過ぎた。
『焦るな……。今できることに集中するんだ。』
焦りから来る心の揺らぎを振り払うと、グラベルの周囲に再び穏やかな西風が吹き始めた。
最近、剣術の修行が終わった後、ニアに連れられてヴェス・ディナス内の食堂を回り、たくさんの料理を食べたせいで太ったみたいだと、しょんぼりした顔で言うイリスの姿を思い浮かべると、グラベルの口元にさらに明るい微笑みが浮かんだ。そして再び長い息を吐き、二日前、初めてサリン・オリドを見た時の記憶を遡り始めた。
一日目。遅く起きたサリンは屋敷を出て、旧市街地へと足を向けた。
半分閉じた目で何度もあくびをしながら歩き着いた先は、看板の代わりに山羊の絵が描かれた酒場だった。
初めて見る顔には、遅い秋の午後にふさわしい挨拶を、すでに知っている馴染みの顔には、嬉しそうな笑顔と悪戯っぽい挨拶を交わしていた。
二日酔いで苦しそうな表情を時折見せたが、サリンと共に酒場に集まった客たちは、店主が出したハーブティーと肉と骨を煮出したスープ、そして卵料理を食べた。そしてサリンは居酒屋を出て、再び歩き出し、街の外れへと向かった。
そうしてしばらく歩いた先でサリンが着いたのは、小さな円形劇場の前だった。劇場の周囲には馬車が停められ、石でできた馬の繋ぎ柱には空いている輪が一つもないほど多くの馬が立っていた。天幕の下の即席厨房では、料理の材料を下ごしらえする包丁の音が響き、長く太い串に肉を刺して回しながら焼くイノシシの丸焼きが見えた。
人々の笑い声と音楽、心地よい料理の香りを抜け、円形劇場の中へサリンが入り、グラベルもその後を追った。劇場内は決闘競技の熱気で沸いていた。
グラベルが劇場の隅に腰を下ろし、サリンが座る席を見守っていると、競技場の中央から聞き覚えのある声が聞こえて、グラベルは顔を巡らせ、劇場中央の砂に覆われたアリーナに目を向けた。そこには、試合の相手と対峙するニアの姿があった。
試合はあっという間にニアの勝利で終わった。滑るようにアリーナの砂を舞い上げて近づいたニアの一撃に、相手は持っていた武器を砂の上に落とし、そのまま倒れ込んだ。
観客たちの歓声が上がり、サリンも応援していたのがニアだったのか、大きな声で笑いながらニアの名を呼んだ。
そうして短い試合が終わり、しばらくするとサリンとニアは、遅れて合流したリブとケイン、そしてさらに遅れて来たレーベンと共に、旧市街地の隅にある小さな食堂に集まり、ニアの勝利を祝うささやかな宴を楽しんだ。
こうしてサリンの一日を尾行したグラベルの一日も終わった。
二日目。
翌日は前日とは違い、サリンの一日は早く始まった。
早朝から馬に乗って街の城壁の外へ向かったサリンは、すでに飛んできて肩に止まった小さな鷹を飛ばして狩りをした。
狩りで捕らえたウズラをさばいて鷹を腹いっぱいに食べさせ、自分も鷹が捕らえたウズラを食べた後、馬上槍試合場へと向かった。
競技場に着いたサリンは、貴族のための広く豪華な席ではなく、普通の観客席に座って試合を観戦した。
折れて破片を散らすランスの欠片と、競技場内を横切る二人の騎士の姿を見ながら、一緒にいる観客たちと共に歓声を上げるサリンを、グラベルはしばらく見守った。
そうして時間が過ぎ、すでにその日の最後の試合を観戦する頃には日が暮れて暗くなっていたため、競技場内には明るく輝く魔石灯が灯されていた。
試合が終わった後、いつも通り宴の席が設けられた。
前日のニアの勝利を祝うささやかな宴とは違い、その日の試合に出場したすべての騎士たちが集まる宴だった。快活な笑い声を上げながら馬に跨ったサリンを追い、異なる紋章の騎士たちが城壁の外の新市街地へと向かった。
広いホールと長いテーブルがある酒場に集まり、互いの勇猛さと、馬を駆って突進し激突した刹那の瞬間について語り合い、敗者の挫折感や怒り、失望はなく、勝者の優越感や傲慢といった過度な自己愛もない、そんな席だった。
勝利した騎士たちには称賛とさらなる勇気を、しばらく足を止めて次の挑戦を誓わなければならない騎士たちには、再び立ち上がって動き出す力を与えるその日の宴は、夜遅くまで続いた。
そして三日目、今日。
朝になってようやく滞在する屋敷に戻ったサリンは、屋敷のベッドにしばらく横になっていた。
そして再び起き出して屋敷を出た時は、うつろな目と、下の歯が見えるほど力の抜けた口、力なく落ちた肩で、かろうじて馬に跨り、港の方へと向かった。
港の小さな食堂で、二日酔いに苦しむ同僚の船員や冒険者たちに混ざって座り、澄んだスズキのスープを飲み、体力を回復したサリンは、再び屋敷に戻って眠りについた。
そうして日が暮れるまで、特に何事もなく時間が過ぎていた。そして見知らぬ影が、グラベルが展開したマナに感知されたのは、日が暮れてからかなり経った後だった。
『誰かが屋敷の庭に入ってきた。』
サリンの屋敷に向かって展開したグラベルのマナ・エクスパンションに捉えられた見知らぬ存在、そしてその存在から感じる陰険な気配が、屋敷の主人であるサリンに好意を持って訪れたものではないことをはっきりと示していた。
『直接確かめないと。』
グラベルが目を開け、マナの蓄積を止めると、グラベルに向かって集まっていたマナの流れが散らばった。
「……!」
瞬時に庭の真ん中に現れたグラベルに、背を丸めて身をかがめていた黒い影が顔を巡らせて見つめた。
「この屋敷の主人にご用でしょうか?」
壁を越えて庭の影の中に潜んでいた相手だったが、殺気までは感じられなかったため、グラベルは落ち着いた、抑揚を抑えた声で相手に声をかけた。
――ススススス――
黒い影が、庭に植えられた木の葉や枝を擦りながら、グラベルに向かって素早く近づいてきた。そして空に浮かぶ二つの月が、近づいてきた影の姿を浮かび上がらせた。
膝まで届く長い腕。普通の人間より三、四倍は大きな背丈で、無地の表面に目穴だけが開いた青銅製の仮面。その奥には、月光に映えて輝く濃い緑色の瞳が見えた。
――ヒュシュッ――
グラベルに向かって振り下ろされた長い腕の先には、普通の剣よりずっと幅広の刃を持つ剣が握られていた。
長い腕と連動して高速で虚空を切る剣の音は、広い刃のせいか独特の響きを立てた。
『返事もせずに即座に攻撃……。驚くほど動揺のない、冷静なマナの流れ……。殺気を隠すのに長けた暗殺者……か?』
剣を振り下ろす瞬間も、青銅仮面のマナは微塵の揺らぎもなかった。それは、数え切れないほどの暗殺を繰り返して鍛え上げられた者だけが持つ、奇妙な冷静さだった。
青銅仮面の怪人の攻撃は続いた。
床を這うように姿勢を低くし、グラベルの腰を断ち切る勢いで連続して振り下ろされる剣が、絶え間なくグラベルを追ってきた。
肩を横切るように斜めに振り下ろされた剣が、グラベルの掌に密度を高めて集中させたマナに阻まれると、数歩後退した青銅仮面がグラベルに尋ねた。
「私は。トールマン。だ。 君の名前は?」
青銅仮面の中の金属に閉ざされた奇妙な声で自己紹介を終えたトールマンは、顎を下から右へ持ち上げるように首を傾け、異様な姿勢でグラベルを見た。
「グラベルです。オリド子爵をお守りするため、ここにいます。」
「そうか。私は。オリド子爵を。殺すために。ここに来た。」
「では、会話はここまでということですね。」
「そうだ。グラベル、君は強い。私は。すべての力を。惜しまず。君を殺す。」 ]]
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