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102話 グランドトーナメント (1)

<放浪騎士>


グランドトーナメント。強力な武を崇め、名誉を重んじる騎士たちが集い、互いの実力を、彼らが心から尊び大切にする武を競う祭りの名である。


武と名誉の他にも、騎士たちが守るべき規範は多い。弱者を尊重し守り、慈悲を持ち、すべての人に惜しみなく施しを行い、不公正と卑劣、欺瞞(ぎまん)を蔑むべきである。


その他にも、騎士として生きる者たちが守るべきことは多いが、グランドトーナメントという祭りの場に集まったすべての騎士が必ず胸に抱く一文は『対等な立場での挑戦を拒否するな。』である。


ヴェス・ディナスの北西の隅の広い場所。遠く北には白い泡を立てる波の音が微かに聞こえる場所に、3つの馬上槍競技場がある。


幅が狭く長さの長い形の馬上槍試合のみのために作られた3つの競技場は、西の競技場は農業と再生の神フィアラルダに捧げて建てられ、中央は繁栄の女神アウェンに、そして東の競技場は交易と黄金の神グロールのために建てられた。


「わあああああ!」


西の競技場。濃い緑色で競技場内を塗った競技場内に、胸を高鳴らせる観客たちの歓声が響く。


競技場の一角で、目に飛びつく明るく華やかな色の服を着た競技の進行者(しんこうしゃ)が大きく声を上げ、互いに相手となる二人の騎士の登場を告げ、競技の進行を助ける同僚たちが競技場中央のティルトの端に、互いにランスを向ける騎士の紋章が描かれた旗を立てるのを確認し、観客たちの声に負けじとさらに大きく、手に持った小さな魔道具(まどうぐ)の箱を口元に近づけながら叫ぶ。


「今! ここ! 見て~! この場所! ヴェス・ディナスの競技場! フィアラルダ様に捧げるこの神聖なる騎士たちの殿堂で対決する二人の騎士を~ 皆様にご紹介します!」


進行者の声が競技場各地に大きく響いた。


「おお~! あそこに騎士様が見える!」


競技場の隅の席の一角に座っていたリブが席から立ち上がり、隣の席にいるケインの肩を叩きながら言った。


「相手は誰?」


「え? それが多分……。コッダー・タウンから来た騎士だって聞いたよ。」


「コッダー・タウンなら……あ~ そこ? 森に囲まれた村じゃない? 父さんが昔その村に移住しようか悩んでたのを聞いた気がする。」


競技場全体に響く声で進行者がレーベンの名前を言っていた。


「少し前に一緒に行った食堂でもコッダー・タウンで作った燻製(くんせい)ソーセージを使ってるって言ってたじゃん。」


「うーん? そうだったっけ?」


リブが顎を掻きながらケインに聞き返した。そして競技場内にはレーベンと対戦する相手騎士の名前が響き、すぐに真っ直ぐ伸ばした腕で牡鹿(おじか)の紋章が描かれた盾を持っている騎士を指し示す進行者の姿が見えた。


「あ、そっか。コッダー・タウンのデュラードだって。」


進行者が喉を一度整えて大きく叫んだデュラードという名前を聞いたケインがリブに言った。


「わ……。でもあのデュラードって騎士の馬……。大きさが相当だね? レスカより2倍は大きく見える。」


首を長く伸ばして競技場内を見る二人の目に映ったのは巨大な馬の姿だった。濃い色の布で体を覆い、厚い馬面甲(ばめんこう)を着けた戦闘馬の姿が見えた。馬面甲を着けていたが、黒い(たて가み)をなびかせて主人のデュラードを乗せ、競技場の隅で小さな円を描きながら回っていた。


「そういえばあのデュラードって騎士……。以前にも見たことがある気がする。去年か一昨年だった馬上槍試合で……。」


ぼんやりした記憶を鮮明に思い出そうと目と目の間をしかめながらリブが言った。


「金でも賭けてた?」


「賭けてないけど……。あ! 思い出した! あのデュラードって騎士、相当な実力者だよ! 強者だって。」


「え? 本当? あの牡鹿の紋章の騎士で合ってるよね? 近辺の貴族や騎士が好んで使う紋章じゃん。間違えてない?」


ケインが疑わしげな目でリブを見ながら言った。


「確かだよ。商人ギルドでヴェス・ディナス近くの騎士を集めて開いた小さな大会だったのも思い出した。あの時いろんな騎士を倒して優勝したのがまさにそのデュラードだよ。」


「何回勝って優勝したの?」


「五回。五回も相手のランスが枯れた木の枝で岩を突くみたいに力なく折れたんだ。あのデュラードって騎士は微動だにしなかったって。」


「馬上槍試合で普通槍はよく折れるんじゃない?」


「いや、そんなのとは違う折れ方だって。」


リブがまっすぐに伸ばした人差し指で拳を握ったもう片方の手を何度も突く動作をしながら、まだ疑いが残る目で自分を見ているケインに言った。


「ふーん……。レーベン様がまさか初戦から負けて脱落するなんてないよね?」


「危ないかも……。」


「だからって俺たちができることなんて叫んで応援する以外ないじゃん。」


「そうだね!」


「じゃあ叫ぼう。レーベン様~! 勝ってください! リブが来ました! ケインもいますよ!」


席から立ち上がった二人が手を大きく振りながら競技場内のレーベンに向かって叫んだ。


「お~お! リブ、ケイン! 来てくれたのか!」


観客席の一角に向かってレスカとともに体を向け、ガチャガチャ音を立てる左腕を振りながらレーベンがリブとケインに挨拶した。


右手には馬上槍試合用の内側が空洞の長いトネリコの木のランスを持ったままだった。遠く観客席に自分を応援しに来てくれたリブとケインを見て固まっていた表情を緩め微笑みさえ浮かべていたが、遠く競技場の反対側の肉厚な巨躯(きょく)の騎士を見る時は再び鋭くなった眼差しで、試合が始まる前に自分の槍先(やりさき)が向かう対象の動きをじっくり観察していた。


「4キュビト(2m)はありそうだな……。」


遠くに見える板金鎧(ばんきんよろい)に包まれた巨大な体躯のデュラードを見てレーベンが言った。ほぼ黒に近い濃い茶色のカパラソン(Caparison:馬の全身を覆う装飾用の馬着)に刺繍された明るい黄色の牡鹿の紋様を見せ、馬の手綱を引いてあちこち駆け、土埃を上げながら周囲の観客たちが送る歓呼にデュラードが両腕を振り応えていた。


戦争の喊声のような荒い息の混じった怪声を上げているデュラードと、今すぐに主を乗せてレーベンに向かって駆け出したいと焦れている馬が神経質に地面を踏み鳴らす音がレーベンに聞こえてきた。


「初戦から手強い相手になりそうだな、レスカ。でも手強いとしてもあの大きなランスたちを手に入れるのは俺たちだ!」


馬上槍試合のルールの一つである勝者に敗者のランスを手に入れる権利が生まれることについて言ったのだった。


通常は三回の激突で勝負がつくそれゆえ三本のランスを持って試合に参加するが、マナを乱すライヒ装飾と中を空洞にして作る馬上槍試合用のランスは高い確率で相手との激突時に折れる。そんな理由で試合で敗れた騎士は勝者に向けた賛辞とともに自分のランスを渡し、敗者としても寛大さを示すことを観客に見せるのが馬上槍試合での慣習だった。


-さあ、それでは今から始めますよ~~!-


競技場内に響く轟くような競技進行者の声が聞こえる。二人の騎士に準備を告げるラッパと太鼓の短い合奏が競技場に広がった。


「それじゃ今回もよろしく頼むよ。」


レーベンが兜のバイザーを下ろしながら体を前に傾け、レスカの耳元に小さく囁いた。


競技場の真ん中に大きな旗を手にして入ってきた二人が旗を下ろし、競技場端の二人の騎士の視線を遮った。そして手に持った魔道具に向かって叫んでいる進行者と目を合わせ、手に握った旗の柄をさらに強く握り直していた。


-フィアラルダ様に二人の名誉ある騎士の闘志が届きますように!-


進行者の声が競技場各地の魔道具を通じて聞こえてきた。観客たちの歓声、二人の鎧を着た騎士の激突を期待する声の応援が込められた叫びが競技場内に響いた。


競技場中央に下ろされていた旗が空に向かって上がり、競技場内のすべての音を飲み込む大きな声が皆に聞こえた。


「行くぞ! レスカ!」


瞬間、ごく短い時間だったが観客席ではどんな音も聞こえなかった。普段とは違うレーベンの声だった。心の中の闘争心を引き上げたレーベンの叫びに、遠く競技場の反対側で前へ駆け出す準備をしていたデュラードの馬がびくっと驚いて少し遅れて駆け出すほど、レーベンの声には強い力が込められていた。


観客席に座ったリブとケインさえも、普段とは全く違う声を出すレーベンの姿に驚いて大きく見開いた目で無言で互いを見つめるほど、勝利を渇望(かつぼう)するレーベンの闘志は観客たちにそのまま伝わった。


「うおおおお!」


遅れてデュラードが叫びながら両足で自分の馬を急かすように蹴った。


二頭の馬がドドドドッと音を素早く繰り返しながら前へ駆け出した。歓呼する観客たちの声が次第にレーベンの耳には小さく聞こえる。


小さくなる歓呼と応援の叫び声と同じくらい、どきどきする心臓の鼓動音が次第に大きくなり、まるで小さな太鼓を耳元で叩いているようだった。


『二度の機会はない。今一度でデュラードを馬から落とす!』


心の中で叫ぶ覚悟の決意とともに、右手で握るランスに再び力が込められた。目の前には兜の小さな隙間から見えるデュラードの姿が次第に近づいてきている。


『馬が大きすぎないか、デュラード卿。』


デュラードが乗っている巨大な戦闘馬の上に激しく上下に揺れながら近づいてくる様子を眉をひそめてさらに目を細めて見た。


兜の中の狭い視界でもバランスが少しずつずれ揺れるデュラードの動きが見えた。肉厚なデュラードの体と彼が着た厚い板金鎧、そして飛んでくるランスをより効果的に防いだり流したりするために凹状(おうじょう)に曲げられた金属の盾まで。


全身を金属で包んだ巨躯の騎士を乗せるにはそれだけ大きな馬が必要だっただろう。そう必要によって生まれた結果として巨大な戦闘馬の上に上がったデュラードが、自分の乗せ走らせる馬の頭の上にランスを横切らせレーベンに向けながら近づいてきていた。


少しずつ揺れはしたが、4キュビト(2m)に近い身長で1500ストーン(kg)を超えるこの巨大な馬の上から得る利点は非常に大きかった。相手より高い位置からランスを狙える点。そして相手は自分を狙うために高くランスを構えねばならない。


「ふうううっ。」


長く吐いたレーベンの息で兜の中の空気が熱く温まる。二つの頬に感じる湿り気。競技場を横切るティルトの向こうのデュラードに向けランスの先を狙った。


足に力を込め、左手に持った盾で体を隠しながら次第に相手に向かっていく。地面を蹴って走るレスカの四本の脚が自分の脚になったように感じる。着ている鎧が自分の皮膚のように感じ、デュラードに向け構えたランスは長く伸びた腕、その先の鈍いライヒ金属装飾はまっすぐに伸ばした指のように感じる。

いよいよ始まりました、グランドトーナメント!

騎士のロマンと言えば、やはり**馬上槍試合ジョスト**ですよね。

巨大な馬に乗る強敵デュラードを前に、レーベンの闘志も最高조에 달했습니다.

果たして宣言通り、一撃で相手を突き落とすことができるのか……?

次回の激突、ぜひ手に汗握りながら見守ってください!

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