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大人と子供

※Nika※


にいの部屋から出た後、私はベッドの中に引きこもっていた。

家の中の、部屋の中の、ベッドの中。

そこまで殻に閉じこもっているのに、私の心中は決して穏やかではなかった。

言葉にならない感情が台風のように吹き荒れる。

無性に悔しくて、イライラして仕方がなかった。


「…私は、どうしたいんだろう」


少しでも感情を整理するために呟いてみた言葉は、どんどん心の奥深くまで入り込んでいった。

始めは、あのまま見ていたらにいが壊れてしまうと思って必死だった。

無理、無茶をしないように堕落させればにいも私みたいに少しは元気になってくれると思った。

実際、にいは最初と比べて元気になったと思う。

でも、だからこそ、私はこのままでいいのか不安になった。

頑張って立ち直ろうとしているにいを邪魔することが本当に正解なの?

そう思う反面、にいはまだまだ無理をしているんじゃないかとも思えて、私は…。


「…もう、わかんない」


そう呟いて寝返りを打ったその時。

ドコンッ!と隣のにいの部屋から大きな音がなった。


「……っ!」


暴力的な音に私は一瞬、身がすくむ。

暗い気持ちになっていたせいか、嫌な妄想ばかりしてしまう。

…なに?台パン…?にいが、私に怒ってる?

ううん、もっと嫌な可能性がある…。


にいが部屋で倒れていたりしていないだろうか?


最悪の想像を一度してしまったら、そうとしか思えなくなってくる。

ここの所、にいは全然寝ていなかった。

私が収録するために部屋を覗いても、いつもにいはVtuberの配信を見ていて、趣味に没頭しているんだと勝手に嬉しく思って…。

…私、何してたんだ。

その時に、ちゃんと言うべきだったんだ。身体が持たないからちゃんと寝なさいって。

ベッドの中で後悔ばかりが募っていく。

けれど、ここにいるだけじゃ何も変わらない。もし本当ににいが倒れてしまったのなら助けないと。

私はひとまずベッドからはい出て部屋を出た。

しかし、にいの部屋の前に来て足がすくむ。

もし倒れているわけじゃなかったら、私はなんて言って部屋に入ればいいんだろう。

そんなこと考えている場合じゃないかもしれないのに、臆病な私は余計なことに気を取られてしまう。

だから、そんな自分を追い立てるためにもっと嫌な想像をした。


私の助けが遅れたせいで、にいが死んじゃったらどうする?


「…っ!」


そんな最悪の未来から逃げるために、私は勇気を出して部屋を開け放つ。

そして、床に倒れたにいを見つけた。


「にい!!」


すぐに駆け寄って声をかけるが返事がない。

何度も何度も声をかけるけれど、にいはぴくりとも動かなかった。

どうしよう、どうすればいい…?

焦る気持ちが洪水のように胸の奥からあふれるばかりで具体的に何をすればいいのかまったく浮かんでこない。

もしも、にいまでいなくなっちゃったら私は…。


その時、ピコン、とにいのスマホから通知音が聞こえてきた。

反射的に画面を見ると、『相底 零』からのメッセージだとわかった。

…あれだけにいを大事に思ってくれていたあの人なら助けてくれるかもしれない。

私は藁にも縋る思いでにいのスマホを手にとった。

零さんからどんなメッセージが来たのかなんて気にもせず、急いで助けを求める文章を打ち込む。


『妹の二佳です兄が家で倒れました助けてください』

『救急車を呼んで。私もすぐに行く』


返事は10秒もせずに帰ってきた。

具体的にするべきことを指示されると、不思議と身体がすぐに動いた。

私は零さんに返信する時間さえ惜しんで、にいのスマホを借りたまま119に電話をかける。

知らない人との電話なんて、普段は怖くて絶対にできないのに、今の私にブレーキはない。ただがむしゃらで必死だった。

電話の相手が出ると間髪入れずに叫ぶ。


「家で家族が倒れました!助けてください…!」


それから、10分も経たないうちに救急隊の人がやってきた。

私が投げかけられる質問におどおどしてしまっていると、零さんが来てくれた。


「お疲れさま。あとは任せて」


そう言って私の頭を優しく撫でると、零さんが細かい対応を全て引き受けてくれた。

そこで気が抜けてしまったのか、それからのことは、あまりよく覚えていない。

ただ言われるままに救急車に乗って、にいが病室に運ばれた。

ずっと病院にいても、なかなかにいがなかなか目覚めず、零さんに連れられて一度家へ帰ることになった。

そして、にいが倒れてから丸一日経った今日。

にいの目が覚めたと連絡を受けた。

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