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第96話 採掘場にいる謎の男


「それにしても、迷いの森の魔物ばかりだな」


 ジャイアントワームの討伐を終えた俺たちは、そのまま採掘場の奥へと進んでいた。ジャイアントワームと戦った開けたスペースの奥にはまた通路があった。


 俺はそこを歩きながら、さっきまで戦ってきた魔物のことを考えていた。


 トレントたちは採掘場への入り口にいて、ジャイアントワームたちはここに来る道中にいた。


まるで、この先にある何かを守るかのように配置されているようだ。


「この先に何かあるってことなんだろうけど、一体何があるって言うんだよ」


「ロイドさま。このさきに魔物の気配と……え? 人の気配があります」


 リリナは銀色の耳をピクピクッと動かしてから、目をぱちくりとさせた。


 俺はリリナの言葉を聞いて眉根を寄せる。


「人? 採掘場で働いているっていう人か? いや、あれだけの魔物がいるのに入ってこれるはずがないだろ」


「でも、間違いなく人のような気配ですよ」


 リリナは銀色の耳をさらに大きく動かしてから、眉根を下げる。


 多分、リリナが気配を間違えるということはないのだろう。しかし、さっきの魔物たちを潜り抜けてここまでくるなんてこと、普通の冒険者ができるはずがない。


 仮に、そんなことができるとすれば、魔物に何かしらの命令をできる奴だろうな。


「ロイドさま。もしかして、その人が採掘場に魔物を呼び寄せたのではないですか?」


「ああ。可能性としては十分にあり得るな」


 俺はアリシャの言葉に頷いてから、通路の奥にあるであろう採掘場の最深部を見つめる。


「あれだけの魔物を呼ぶほどの実力者だ。気を引き締めていくぞ」


 金の採掘場に人為的に魔物を呼んだとすると、『大蛇の牙』と協力関係にある組織のはずだ。


 そして、そいつは俺に冤罪をかけるだけでなく、俺たちが追ってから逃げている間も金を稼いでいたクソ野郎って訳だ。


 ……ようやく、その組織の組員とご対面ってことか。


「どんな野郎か楽しみだな」


 俺はそう言って、通路を早足で歩いて採掘場の最深部へと向かった。


 それから、少し歩いていくと通路の終わりが見えてきた。


 俺を冤罪に仕立て上げた組織がいると思うと、自然と足取りも早くなっていき、駆け足で採掘場の最深部へと向かう。


そして、ようやく通路の終わりに差し掛かり、採掘場の最深部へと足を踏み入れた。


 すると、そこには一体の暴れる大型の魔物と、それをぼうっと見ている一人の男が俺たちに背を向けて立っていた。


 ライオンのような顔と体に大きな翼、サソリのような尾を持った魔物。ゲームなどで見たことのあるマンティコアが採掘場の施設をじぃっと見ていた。


 そして、俺たちに背を向けていた男は、俺たちに気づいたのかゆっくりとこちらに振り向た。


 俺はその男の顔を見て、目を見開いた。


「おまえ……ケインのパーティの荷物持ち、だよな?」


「あっ! そうです! あの邪気まみれの人のパーティにいた人です!」


 リリナも荷物持ちの男のことを覚えているようで、ピシッと男に指をさした。


 ケインは俺がパーティを抜けた後、荷物持ちのために昔の自分とよく似た男をパーティのメンバーとして加入させていた。


 昔自分がされてきたことをその男にすることで、これまでの鬱憤を晴らしていたらしい。しかし、そんな扱いをしていたせいか、その男はすぐにパーティを抜けたと聞いていた。


 そんな男が、なんでこんなところにいるんだ?


「ロイド。うそ、なんで」


 男は俺たちを見て目を見開いて、一瞬瞳を揺らした。


 そして、俺は自分に向けて発せられた言葉を聞いて、このアニメの記憶を思い出した。


 そうだ。忘れていたが、この声には聞き覚えがある。この声、有名声優の声だ。


普段はヒロイン役なんかを担当している有名声優が、ざまぁアニメのモブ役をやってることが少し話題になったことがあった。


 本来のアニメでは、ロイドがケインを追放してから、一時的に新たなパーティメンバーを『竜王の炎』に加える。


その男の声と今目の前にいる男の声が一致している。それなのに……顔が全く違う。


俺はその気味の悪さにゾクッとしてから、目の前にいる男を強く睨む。


「おまえ……何者だ? なんでそんな顔をしている?」


 すると、男は目をぱちくりとさせてから、妖艶な笑みを浮かべる。


「すごいね。想像以上にキレるみたいだね、君は」


 俺が剣の柄に手をかけると、リリナとアリシャがちらっと俺を見る。


「そんな顔?」


「どういうことですか、ロイドさま」


 二人はいまいちピンと来ていない様子で、眉根を下げていた。


 俺は正面にいる男の顔をじっと見ながら口を開く。


「俺はこいつのことを知っている。だが、前見たときと今で顔が全く違う。骨格からすべてな」


「あれ? 会ったことあったっけ?」


 男は眉根を寄せてむむっと考えてから、脱力するようにため息を吐いた。


「まぁ、そこまで知ってるなら隠しててもしょうがないか」


 男がそう言うと、突然ぽんっというと共に男の体が白い煙に包まれた。そして、その煙の中から現れたのは、リリナやアリシャと同い年くらいの女の子だった。


 水色のショートカットの上には、茶色の狐のような耳が生えており、ふわっとした尻尾を小さく振っている。


「正体を見破られるのは久しぶりだよ。初めまして、悪名高いロイドさん。ボクのことは……ルナって呼んでね」


 その女の子はクスッと笑ってから、俺にそんなことを言ってきた。


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