第94話 『迷いの森』の魔物たち
そして、採掘場を守っているようなトレントたちを倒した俺たちは、採掘場の中へと進んでいった。
採掘場内の洞窟のような通路を進んでいく中、リリナは興奮した様子で俺を見上げてきた。
「さすがロイドさまです! トレントたちを倒してしまうなんて!」
「あれだけのトレントを倒すなんて普通はできませんよ、ロイドさま」
すると、リリナの言葉を聞いたアリシャも数度頷いてから俺を見つめてきた。
俺は二人にまっすぐに褒められて、照れ臭くなって頬を掻く。
「まぁ、俺がスキルを使うまでの間、二人が時間を稼いで置いてくれたからだけどな」
俺一人で相手をしていたら、『スティール』を当てているときに他のトレントたちにタコ殴りにされていたかもしれない。
そう考えると、俺だけでどうにかできた相手ではないのだろう。
「私ももっと頑張らないとですね!」
「ロイドさまの力になれるように頑張りますね」
しかし、二人はそうは思っていないらしく、張り切るように両手で拳を強く握っていた。
さっきまでの戦いで十分に力になっているのにな……。
「それにしても、なんであんな所に『迷いの森』にいる魔物がいたんでしょうか?」
「そこが問題だよな」
結局、倒せたからよかったがなぜトレントたちが採掘場付近にいたのかは分からずじまいだった。
採掘場と『迷いの森』に関連性は見れないし、これだけの距離を間違えて移動してくるなんてことはないだろう。
人為的? いや、でも距離が結構あるしなぁ……
俺がそんなことを考えていると、突然リリナの銀色の耳がぴくぴくっと動いた。
「ロイドさま! こっちの方から魔物がきます!」
すると、リリナがバッと勢いよく前方方向を指さした。俺とアリシャはリリナの声を聞いて各々剣と弓矢を構える。
緊張感のある空気が流れる中、しばらく待ってみたが魔物の姿は見えなかった。
「魔物……こないな」
俺がそう言った瞬間、魔物が地中から勢いよく飛び出してきた。
その魔物はでかいミミズのような体をしていて顔がなかった。代わりに、顔全体が口になっており、鋭い牙のような歯がびっしりと並んでいる。その鋭い歯は口の中まで広がっており、一度呑み込まれたら全身をぐちゃぐちゃにされるであろうことが分かる。
「な、なんだあれは⁉」
俺は初めて見る中々グロイ感じの魔物を前に目を見開く。
すると、アリシャが弓矢を構えながら眉根を寄せて口を開く。
「ジャイアントワームです! あれも、『迷いの森』にいる魔物です!」
「なんで『迷いの森』にいた魔物ばかりここにいるんだ! くそっ、言ってる場合じゃないな」
俺たちが動揺していると、ジャイアントワームはミミズのように体を這わせて俺たちに突っ込んできた。
一気に縮められていく距離を見ながら、俺はリリナとアリシャに両手を向ける。
「『支援』! アリシャ、あいつに矢を打ち込んでくれ!」
「はい! 『瞬風』、『瞬風』……『狙撃』!!」
すると、支援で底上げされたアリシャの力強い矢がジャイアントワームに向かって勢いよく飛んでいった。
シューン!! ズシャァ!!
そして、アリシャの矢はジャイアントワームに直撃して、ジャイアントワームの体を弾き飛ばした。
ジャイアントワームが動かなくなったのを見て、俺は胸を撫でおろす。
「何だったんだ、一体」
俺がそんな独り言を漏らしていると、リリナが何かに気づいたように今度は俺たちが歩いてきた道の方を指さした。
「今度はこっちから来ます! さっきのと同じような奴です!」
「マジか!」
すると、また地面から勢いよくジャイアントワームが飛び出てきた。そして、俺達の方に突っ込みながら口から何かの液体を吐き出してきた。
「な、なんだあれは⁉」
「消化液です! 危険なので絶対に触れないでください!」
俺はアリシャが引きつらせた様子から、消化液の危険性を察してアリシャと同じように顔をひきつらせる。
「そ、そんなに危険なものなのか……でも、それなら、自分で触れても危険なはずだよな『竜風(魔)』!」
俺が剣を振り下ろすと、渦の中心を相手に向けるようにした竜巻が地面をえぐりながら飛んでいった。
そして、それは消化液を呑み込みながらジャイアントワームに襲い掛かった。
ジャイアントワームは自身の消化液と、『竜風(魔)』を食らって苦しそうにじたばたと暴れていた。
俺は二人に消化液がかかっていないか心配になり、二人を見る。
「二人とも大丈夫か? あれ、リリナは?」
リリナの姿が見当たらなかったので辺りを見渡すと、いつの間にか苦しんでいるジャイアントワームの頭の上にリリナが乗っていた。
俺が消化液を吹っ飛ばしてそこまで時間は立っていないはずなのに、一体いつ移動したんだ?
「『弱点看破』『鋭刃』」
そして、俺がそんなことを考えていると、リリナはジャイアントワームの頭に短剣を突き刺して掻っ切った。
すると、さっきまで暴れていたジャイアントワームが糸が切れたように完全に動かなくなった。
一撃で相手の急所を見抜くとは……さすがだな。
俺はそんなことを考えながら、左手を倒れているジャイアントワームに向ける。
「『スティール』。それだけ危険なスキルなら、貰っておかないとな」
俺が『スティール』を使うと、俺の左手がぱあっと光り、次のようなステータスを表示する画面が現れた。
『スティールによる強奪成功 スキル:消化液(魔)』
「冒険者のスキルで『消化液』って、どうなんだろうな」
いろいろと便利そうではあるのだが、どんどん自分がバケモノ染みてきているような気がする。
俺がそんなことを考えていると、リリナが顔を上げて慌てたように口を開く。
「どんどん魔物がこっちに向かってきてます!」
「どんどんって、まじかよ。二人とも俺に捕まれ! スキルで一気にあのひらけた場所に向かう!」
俺はそう言って、この先にある少し開けた場所を指さした。
さすがに、いつまでもこの通路みたいなところで戦い続けるのは分が悪い。何よりも、挟まれたらいよいよ終わりだしな。
それから、俺はリリナが戻ってきたタイミングで二人を抱えてググっと足に力を入れる。
「『縮地』!」
そして、俺は二人を抱えたままスキルを使って一気に開けたスペースまで移動をすることにしたのだった。




