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第88話 怪しげな小屋の中で


「ガランの近くに着いたとはいえ、結構歩くな」


 それから、洞窟を抜けた俺たちはガランに向けて歩き出した。


 ガランの街に向かうトロッコに乗ったのはいいが、あくまでガランの街の近くというだけで、街と直結している訳ではない。


 まぁ、普通に考えれば洞窟と街が近い距離にあるわけないよな。


「疲れてきたらちゃんと言うんだぞ?」


「だ、大丈夫です」


 振り向いてココにそう言うと、ココは額の汗を拭ってそう言った。


 それから、俺は他の二人の子たちを確認する。すると、二人ともきついとは言わないまでも、疲労が蓄積した顔をしていた。


 ココや他の子たちには『支援』をかけて、少しでも体が楽になるようにしている。それでも、あまり無理はさせられないだろう。


「そろそろひと休憩するか。どこか休める場所でもあればいいんだけどな」


 俺はそう言って辺りを見渡す。


 徐々に辺りも暗くなってきたし、安全そうな場所で一晩を超す準備をしてもいいかもしれない。


 そう考えていると、アリシャが俺を見上げて遠くの方を指さした。


「ロイドさま。あちらに山小屋がございます」


「え? 本当か?」


 俺は目を凝らしてアリシャが指さす方を見てみるが、ただ木々が見えるだけで小屋があるようには見えない。


「どこにあるんだ?」


「私も見えないですね」


 リリナは俺と同じように俺の隣で遠くの方をじっと見てから、アリシャ俺と同じようにアリシャを見た。


 すると、アリシャはそんな俺たちを見てから口元を緩める。


「案内いたします。こっちです」


 それから、アリシャに案内しながらしばらく歩いていくと、本当に山小屋が見えてきた。


 ……俺とリリナが全く見えないくらいの距離にあったのに、随分と簡単に見つけたな、アリシャ。


 これだけ離れた距離から狙撃でもされたら、溜まったものじゃないなと思いながら歩いていくと、山小屋の近くに二台の馬車とがあるのが見えた。


 もしかしたら、乗せてもらえるかもしれない。


 そんな事を考えて近づいていくと、アリシャがピタッと足を止めた。


「アリシャ、どうかしたのか?」


「ロイドさま。山小屋の前に人がいるのですが、少し穢れた者みたいです」


 アリシャは眉根を下げてそう言って、俺を見る。


「穢れた人? もしかして、『大蛇の牙』か?」


「正確には分かりませんが、その可能性もあるかと」


「……なんであいつらがあんな所にいるんだ?」


 俺はアリシャの言葉に眉根をひそめて考える。


 山小屋はアジトと呼ぶにしてはあまりにも小さい。活動拠点にするのなら、もっと別の所の方がよさそうな気がする。


 洞窟の出口からまぁまぁ歩いていたが、そこまで遠いわけではないし、こんなところにアジトを作るのなら洞窟の側の方がいいだろう。


 なにか他の理由で使っているのか?


「リリナ。洞窟を出たときと同じように身を潜める系のスキルを使ってくれ。もう少し近づいて、小屋にいるのが『大蛇の牙』だとしたら馬車を奪うのもありだ」


 まだここからガランの街までは距離がある。俺たちだけならまだしも、子供達がいるとなると馬車が必要だろう。


 といっても、ガランの街近くで俺を乗せてくれ馬車なんかあるはずがない。そうなってくると、『大蛇の牙』から馬車を奪うというのが一番いい気がする。


「分かりました!『潜伏』、『隠密』、『陰隠れ』」


 リリナは子供達と手を繋ぎながら、それらのスキルを使用した。俺もリリナに倣うように『潜伏』を使ってから、音を立てないように少しずつ山小屋に近づいていく。


 すると、ある程度距離が近づいてから、リリナが茂みの中で少しだけ潜伏系のスキルを解いて俺に耳打ちをしてきた。


「ロイドさま。あの馬車から洞窟の出口にいた人たちの匂いがします」


「どうやら、『大蛇の牙』で間違いないみたいだな。リリナ。相手の人数は分かりそうか?」


「ちょっと待ってくださいね。『空間認知』……」


 リリナは地面に手をついて、集中するように目を閉じた。それから少しして、顔を上げて俺を見る。


「扉の前にいる人を合わせて、三人ですね。二つある馬車には誰も乗ってません」


「了解だ。もう少し近づいたらリリナは門の前にいる奴を眠らせてくれ。詳しい話は中にいる奴らから聞こう」


「分かりました。扉の前にいる男はお任せください」


 リリナはそう言うと、またスキルを使って身を隠しながら男のもとへ向かった。それから、男たちの距離を詰めてから、リリナは茂みを飛び出して男の後ろに待った。


 そして、リリナはそのまま男の口に布を押し当てた。


「ぐっ!」


 そんな男の声が漏れて数秒後、男は力なくその場にぱたんと倒れて動かなくなった。そして、リリナは手慣れた動きで男の手足を縄で縛り上げていった。


 拘束が手慣れているヒロインって、あんまりいないよな。


 俺がそんなことを考えていると、不意に山小屋の扉が開けられた。


「何か音がした気がしが何かあったのか? ん?」


 すると、男は拘束された男を見てピタッと動きを止めた。


 まじか、このタイミングで出てきやがった!


 俺が慌てて茂みから飛び出して、リリナの助けに入ろうとしたとき、俺のすぐ隣を矢が勢いよく飛んでいった。


「な、なんだおまえーーぐあっ!」


 そして、勢いよく飛んでいった矢は男のすねに直撃して、男はその場に蹲ってしまった。


「あ、アリシャ?」


 今のってアリシャの矢だよな? 直撃したけど、男の足大丈夫なのか?


 俺がアリシャの方を振り向いて固まっていると、アリシャは笑みを浮かべる。


「矢じりは丸めてあるので、大丈夫ですよ」


 アリシャはそう言って、俺に先が丸まっている矢を見せてくれた。


 俺は胸を撫でおろしてから蹲っている男の方に視線を戻す。すると、男は脛を抑えながら悶絶していた。


 ……まぁ、先が丸いのなら骨折くらいで済むだろう。


「なんだ⁉ 何が起きたんだ?」


 すると、小屋の中からそんな声が聞こえてきた。


 俺は今度こそ茂みの中から飛び出して、小屋の中に向かう。さすがに、リリナとアリシャばかりに頼り過ぎるわけにもいかないからな。


 そんなことを考えて小屋の中に入ると、一人の男が椅子に縄で縛れた状態で俺を見上げていた。


 あれ? 何だこの状況は。


 てっきり、中にいるのは『大蛇の牙』かと思ったが、この男性は見るからに『大蛇の牙』に捕まったようにしか見えない。


「ろ、ロイド」


 俺が目の前の事態に眉根をひそめていると、縛れている男が俺を強く睨んでいた。


 そして、縛られている状態でバタバタと暴れながら続ける。



「言われた通り金の採掘場で起きてる問題と、偽金問題の件は無視している! 懸賞金の件は私は何も関与していない! 本当だ!」


「採掘場の問題? 偽金の件?」


 俺は必死に弁明するように言ってくる男の言葉に、眉根をさらにひそめるのだった。


 俺の知らない所で、一体何が起きてるんだ?



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