第87話 商人ギルド長の娘、ココ
それから、俺たちは男たちから奪ったトロッコに乗ってガランに向かった。
その道中、商人ギルド長の娘のココと名乗る少女はこれまでの境遇を語ってくれた。
どうやら、ココは別のルートで途中まで運ばれてきて、奴隷として誘拐された子供とたちとガランに向かうはずだったらしい。
そもそも、ココは奴隷ではなくただ誘拐されただけとのことだ。
いや、だけっていうのもどうかとは思うが。
「でも、なんでガランに向かうことになったんだ? 商人ギルド長のところに戻そうとしたのか?」
ココはガランで誘拐されたと言っていた。普通なら、誘拐したのなら地元から離した方がいい気がするものだが。
俺がそう考えて言うと、ココは首を横に振った。
「多分違います。今日は少しだけお父さんに会わせてくれるってききました」
「少しだけ? 安否確認だけさせようってことか?」
「どうなんでしょう。そこまでは分かりません」
「まぁ、そうだよな。誘拐された方が事の詳細は知らないよな」
俺はそう言って腕を組んで考える。
誘拐するってことは、何かしらの要求を商人ギルド長にしているということになる。誘拐するってことは、やはり身代金の要求か? いや、それなら貴族の娘を狙うはずだよな。
何か商人ギルド長を狙う理由があるはずだとは思うのだが、まるでその理由の見当がつかない。
……ただどうしても今回の偽金の一件と無関係のような気がしない。
考え過ぎな気もするが、どこか引っかかることがる気がした。
「とりあえず、商人ギルド長に会ってみるしかないよな」
ここで色々と考えても仕方がない。偽金のことに関しても、なぜ商人ギルド長が動かないのか気になっていたし、この機会に聞きに行くのも悪くはないだろう。
……まぁ、指名手配中の俺が普通に聞きにいくことは難しそうではあるけどな。
俺はそんなことを考えながら、トロッコを運転しながらガランの街を目指すのだった。
「出口が見えてきたな」
休憩を挟みつつしばらくの間トロッコを運転していると、徐々に洞窟の出口が見えてきた。
トロッコを運転したからは比較的順調に進み、気づけば洞窟の出口に近づいてきた。
いや、というかこれまでが少し異常あったのだろう。
追っ手がいない状況喝、魔物との戦闘がなければこのくらい早く着いても不思議ではないか。
俺はギリギリ向こうに気づかれないくらいまで近づいてから、トロッコを止めてリリナたちと子供たちを下ろす。
「よっし。ここら辺で降りるぞ。リリナ『潜伏』とか身を潜める系のスキルをできるだけ使ってくれ。俺たちとアリシャも『潜伏』を使っておくから、子供たちは俺たちと手を繋ぐこと」
俺はそう言って、子供たちを下ろしてからトロッコを逆向きに走らせるように動かした。
これで、しばらくはあのトロッコの発見も遅れるだろう。
「えっと、リリナたちの姿が見えないんだが」
俺が馬車を逆側に動かして振り向くと、さっきまでいたはずのリリナたちが消えていた。
どうやら、もうすでに身を潜める系のスキルを使用しているらしい。
これだけ完璧ならどうどうと洞窟の出口に向かって問題はなさそうだな。
しかし、これだと俺だけ脱出することが不可能になる。
俺はそんなことを考えながら、じぃっとリリナたちがいた空間を見つめていた。すると、不意に誰かに手を握られる感覚があった。
「おっと。そうだ、俺も『潜伏』を使っておくか」
俺はその手を握り返したから、念のために『潜伏』を使ってから続ける。
「それじゃあ、このまま出口に向かうぞ。みんな、出口を出てしばらく洞窟から離れるまでは口を開かないように」
俺はそう言ってから、手を繋いだ状態のままみんなを連れて洞窟の出口の方に向かった。
その結果、洞窟の出口で見張っていたガラの悪い男たちをスルーして、俺たちは洞窟を脱出することができたのだった。




