第84話 怪しげなトロッコ
追っ手に追われて川に落ちて滝から落ちて、その裏にある洞窟を進んでいたら、怪しげなモノを運んでいるトロッコを見つけてしまった。
正直、そんな面倒ごとは避けて通りたいが、その怪しげなトロッコでは人が運ばれている可能性があるとのこと。
無視してはならないような気がして、俺は恐る恐る口を開く。
「リリナ。人が乗ってるって……死体ってことか?」
「いいえ、動いているので生きていると思います。私たちよりも小さな子たちじゃないかなと」
「リリナよりも小さい子。そんな子が運ばれてるって、普通じゃないよな」
考えられるのは誘拐か、奴隷かの可能性が高いだろう。
わざわざこんな人に見つからない所を通っている訳だし、何かしらの犯罪に巻き込まれている可能性がある。
「とりあえず、話を聞く必要がありそうだな。リリナ、トロッコにいる奴らを拘束することはできそうか?」
リリナは俺の言葉を聞いて、自信ありげに頷いた。
「できます。こういうことは私にお任せください。得意分野です!」
リリナは小さくガッツポーズをしてやる気満々と言った様子だった。
俺は拘束が得意なヒロインってどうなのだろうか一瞬考えて少し笑う。それから、俺はリリナに右の手のひらを向けた。
「『支援』。あとはリリナが飛び乗れるくらい、トロッコの速度を少し落とさないとな」
「いいえ、ロイドさま。『支援』がかかっている状態なら、あのくらいの速度のトロッコになら飛び乗れますよ」
「え? 本当か?」
少なくとも、原付くらいのスピードは出ていそうだが。
「お任せください。ロイドさまとアリシャは隠れていてください!」
リリナはそう言うと、俺たちを残して岩陰から飛び出していった。
「リリナ大丈夫でしょうか?」
「本人はああ言っているが、念のために何が起きても平気なようにしておこう。『支援』」
俺は心配そうなアリシャと自分自身に『支援』をかけていつでも動ける準備をしておく。それから、俺たちは岩陰からリリナの姿を覗き見る。
しかし、トロッコは近づいてきているのに、リリナの姿が見当たらなかった。
「あれ? リリナ、今どこにいるんでしょうか?」
「……分からん。まったくどこにいるのか見えないな」
俺は目を凝らしてリリアを見つけようとするが、リリナの姿を見つけられずにいた。
リリナは『潜伏』の他に『隠密』と『陰隠れ』などの盗賊や暗殺者が持っているようなスキルを使いこなしている。
そんなリリナが『支援』のスキルで強化されたら、普通に見つけることさえも難しい。
すると、俺たちの近くを通ろうとしていたトロッコの中にいた二人の男のたちが、突然トロッコの中に倒れた。
「あっ、トロッコのスピード落ちましたね」
「ああ。上手くいったんだろうな」
すると、突然姿を現したリリナが俺たちに分かるようにブンブンと手を振ってきた。俺たちはリリナが止めたであろうトロッコに駆け寄っていく。
「ロイドさま、無事拘束しました!」
「ああ。さすが鮮やかな手際だな」
俺はそう言ってから、トロッコの中で蹲っている男をちらっと見た。
「ぐあああぁぁっ」
男たちの手首は縄で縛られており、脂汗をかきながら小さく悲鳴のようなものを漏らしていた。
そして、もう一人の方はピクリとも動かないで目を閉じている。
……なんで同じトロッコにいたはずの男たちで、ここまで違いがあるんだ?
「リリナ。ちなみに、こっちの痛がってる人には何をしたんだ?」
「一人はお話を聞く必要があったので、脛、足の甲、人中とかに一撃ずつ攻撃を入れてお話を聞ける状態にしました。多分、拘束しなくてもしばらくは動けないですよ」
「な、なるほど」
もしかして、『弱点看破』で人の急所でも見つけながら攻撃を入れたのだろうか? あの短時間のうちにどうやったのか分からないが、完全に不意をつけるリリナだからできる技なのだろう。
「それじゃあ、色々と聞かせてもらうとするか」
俺は蹲っている男たちにそう言ってから、男たちが乗っているトロッコの後ろに引いている荷物にかかっている布を取った。
「んー、んー!!」
すると、そこにはリリナよりも幼い人間の女の子と、他種族の子供たちの姿があった。
涙を流しながら手足と口を拘束されている姿を見るに、どうやら何かしらの犯罪に巻き込まれているようだった。




